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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
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第52話

夢や不思議な声について話し終わった後。ゼンは非常に真剣な表情で何かを考え始めた。集中しているらしく、全く何も言わない。そんな状態なので、信じてくれたかどうかも分からない。取りあえずわたしはその間、碧の魔女に関する記述を探してみることにした。もしかしたら、どこかに消された部分の話が載っているかもしれない。それに、消されているのは一部分だけなので、それ以降の内容は普通に読むことができる。わたしは一旦消されている部分を飛ばしてその後から読み進めた。

『……。これ以降、碧の魔女は姿を見せていない。だが、協会が維持されているので、死んだわけではないと考えられている。また、最近の研究で分かったことだが、碧の魔女は蔦を使った魔法が得意であったようだ』

…!蔦の魔法…。協会に現れた植物も蔦だった。けど、協会が維持されていることが碧の魔女が生きていることと同じ意味ってどういうことだろう。確かに、この協会を作り上げるのには尽力したみたいだけど…。他にも何か関係があるのだろうか?もしかして、それに関わる話がこの白い部分に載っているのかな。…やっぱり、どうにかしてこの白い部分を見る必要がありそう。ただ、ここまでの内容でかなり碧の魔女に関する情報は集まったのも事実。

協会。碧の魔女。そして、不思議な蔦。

この三つは大きく関係していると思う。彼女が蔦の魔法が得意だったということは、あの蔦もきっと碧の魔女に関係しているはず。問題は、どうしてその蔦が出てきたのか。彼女は今、どこで何をしているのか、協会との間に何があったのか。そして、「忠誠を誓う」という言葉が何を指しているのか…。その辺りのことがまだ分かっていない。こうして考えると、まだ分からないことの方が多いけど…。ここら辺の資料、少し借りていこうかな?と考えつつ、他にも記述がないかとページをめくっていると、それまで無言でずっと何かを考え続けていたゼンが不意にこうつぶやいた。

「確かどこかの資料で見たんだけど、碧の魔女って誰かと契約をしたんだよね。忠誠を誓う、ってそのことを言ったんじゃない?魔法による契約って簡単に覆せないし。忠誠を誓うことと同じ意味だと思う」

ということは、忠誠を誓った果てに…、という不思議な声の人の言葉に返した人物は、その意味をしっかりと理解した人だということだから…。

「…え、つまり、干渉する直前の声は碧の魔女…、若しくは契約した相手のものだったってこと!?」

話がすごいことになってきたのは気のせいじゃないだろう。これ、大丈夫かな。…けど、わたしはそれを知ってどうしたいのだろう。取りあえず、言葉の意味がよく分からなくて色々と調べてみようと思っただけで…。そこから先は全く考えていない。わたしに、何かできることはあるのかな。碧の魔女がどうしたいのか分かったら、蔦の方はどうにかなるのかもしれないけど…。と考えていると、ゼンは難しい表情で言った。

「そもそも、『忠誠を誓った果てに…』って言ったのは別人だよね?それを突き留めないといけないんだけど…。大体、このことって限られた人しか知らないと思うんだよね…。考えられるとしたら、やっぱり偉大な魔法使いの誰かじゃない?まあ、どうしてそんなすごい人の声が聞こえるのかは不思議だけど」

うわ、更にすごそうな話になった。他人事だったらまだ良かったのかもしれないけど、残念ながら今のわたしは当事者だ。特に支障があるわけではないけど、気になってしまう。どうしてわたしにだけそう言った声が聞こえるのか…。そもそも、偉大な魔法使いって言っても碧の魔女以外に五人もいる。その中の数人は既に死んでいると聞いたけれど…。はっきりとは分かっていないみたいだし。これは色々と大変なことになりそうな予感…。…けど、どうしてゼンはこんな突拍子もない話を信じて、しかもそれについて色々と考えてくれるのだろう?誰にも聞こえなかった声なんて、ただの幻聴だったのかもしれないし、夢だって意味がないものが大多数を占めている。それなのに、どうして…?それを質問しようと思った、その時だった。

突然、建物が大きく揺れて遠くから悲鳴が聞こえてきた。何かが壊れるような音も…。この場所には結界がしっかりと張られているようで、揺れ以外は何ともないけれど…。どこからか「蔦だ!」というような声が聞こえてきたような気がする。わたしとゼンは一瞬顔を見合わせたが、取りあえず資料を放って部屋から出てみることにした。扉を開けた瞬間、目の前で床を突き破って蔦が飛び出してくる。わたしの後から部屋を出たゼンが急いで扉を閉めた。そのおかげで、どうにか蔦が侵入するのを防げた。だけど、結界だってどれくらい持つのか分からない。わたしたちは蔦を避けつつ、人が集まっている場所に向かった。どうやら、そこにだけ蔦から身を守るための魔法がかけられているようだ。というか、この前蔦が出てきたばかりなのに…、再生速度が速すぎる。進路を邪魔するように飛び出てくる蔦を避けつつ、ゼンが質問してきた。

「ジェシカ!花、持ってる?もしそうなら早急にこの辺りの蔦を焼いてほしいんだけど!」

「ごめん、持ってない。いらないかと思って部屋に置いてきちゃった」

どうやら、ゼンはわたしがちゃんと魔法の花を持っていると思っていたらしく、一瞬驚いていた。だが、次の瞬間わたしたちの目の前を蔦が覆った。後ろに行こうとすると、そこからも新たな蔦が現れる。一気に緑色のドームが出来上がり、閉じ込められてしまった。

「…そういうゼンは、魔法の花を持ってる?早くここから出ようよ!」

けれど、こういう時に限ってゼンも持っていないみたいで…。これ、絶対にまずい状況だよね?視界を遮断されているせいで、周りの状況が分からない。辛うじて声は聞こえるけど…。試しに蔦を触ってみたらどうなるのか実験しようと思ったらゼンに止められてしまった。蔦が簡単に千切れたらいいんだけど。と考えていたら、突然目の前に一瞬穴ができた。その先に、協会長さんがいる。どうやら、この状況を見るに見かねて助けてくれたらしい。あっという間に蔦が消えてくれた。

「すみません、協会長さん。ありがとうございました」

お礼を言うと、後ろに控えていたギルさんが数本の花を渡してくれた。使っていいよ、ということらしい。今まで一本も持っていなかったので、かなり心強い。

「いえ、あなたがいなければ蔦を収束させられないので。お願いしますね」

わたしはその言葉にうなずき、一気に周辺の蔦を燃やした。いつもよりもその威力は強い。さっき蔦の中に閉じ込められたので、ちょっとばかり仕返しをしたい気分だったのだ。ゼンは若干引いていたようだけど…、まあ、蔦はどうにかできたし。けれど、蔦の方も諦めてはいない。床に沿って勢力を拡大していく。それと同時に、どこからかカチッとスイッチが入る音が聞こえた気がした。…それなのに、周りの人たちは反応しない。気のせいだったのかな?と首をかしげつつ、近くの蔦からどうにかしようと思った、その時だった。

突然、床に亀裂が走り、勢いよく広がっていった。

いち早くその事態に気付いた協会長さんが「危ない!」と叫んだ。けれど、その時にはもう遅かった。亀裂の一番近くにいたわたしの足元までそれが到達していた。一気に浮遊感に襲われる。やっぱり、先ほどの音は気のせいではなかったみたい。それと同時にギルさんの言葉が甦る。

『…これほど蔦が大暴れしたら、いつか仕掛けの方が誤作動するのでは?』

言葉通りの出来事が起こってしまった。先ほどまでいた場所が、一気に遠くなっていく。それと同時に、二人の声が聞こえたような気がした。

「ジェシカ!!」

ゼンが叫んだ。けど、もう一つは…知らない声。でも、どこかで聞いた記憶がある。

『これは、珍しいお客さんが来たみたいね。…地下迷宮へ、ようこそ』

その声は、干渉される直前、拒絶の言葉を言い放った声にそっくりだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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