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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
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第51話

それから数日が経って、その日、わたしは久しぶりに一人で部屋の外に出ていた。…と言うのも、蔦の襲来があった日以降、ニーナやゼンがすごくわたしを心配して、一人で外に出ようとすると止められるか一緒についてくるという事態が続いていたのだ。薬のおかげで症状自体はすぐに治まったけど…。絶対に一人で外に出ないで、と色々な人に念を押されていたため、外に用事がある時は仕方なくニーナかゼンと一緒にいることになってしまった。別にそのことはいいけど、ゼンといると女の子たちに鋭い視線を向けられるからなー…。それが個人的に一番困る。当の本人は全く気にしていないようだけど…。でも、一つ気になるのが、最近はそこまで多くの女の子たちには睨まれなくなったこと、かな?ゼンがいないところでゼンに関する話をしているのはよく聞くけど、…一体どうしてだろう?よく分からないけど、視線が減ったことは素直に嬉しい。めちゃめちゃ怖かったし…。まあ、それはともかく、しばらく一人で外に出ることがなかったので、少し違和感を覚える。この数日で隣に誰かがいるという状況にかなり慣れてしまったみたい。そう思いつつ、わたしは目的の場所、資料室に向かった。前々から行きたいとは思っていたんだけど、結局行っていなかった場所。この前の夢に出てきた碧の魔女や、わたしが倒れる前に聞いた誰かの言葉について調べてみようと思ったのだ。あれからずっと考えていたけれど、何も考えつかなかった。

「忠誠を誓う」。

それは一体、誰が誰に、どのような忠誠を誓ったものなんだろう?その直後に干渉されたということは、何か重要な言葉だと思う。それが知りたい。書庫にはたくさん資料があるし、それらしい文書もあるかな?と考えたのだ。ただ、一つ懸念されるのは、中の書物が蔦のせいでボロボロになっていないか、ということ。蔦の威力はかなりすごい。一応、修復魔法をかければどうにかなるかもしれないけど…。それだって非常に時間がかかるだろう。もしかしたら、目当ての書物がまだ修復中かもしれないし…。大丈夫かな、と考えている間に資料室にたどり着いたので、扉を開けた。…けど、いつも通り。静寂に満ちている。どうやら、ここは特に影響がなかったみたい。それか、被害が少なかったのかも。良かった、と安心し、早速「碧の魔女」や「協会」に関する本を取り出す。協会関連の本には蔦に関する記述がないかと思ったのだ。…そういえば、夢の中に出てきた、「碧の魔女」と呼ばれていた女の子、蔦を自由自在に操っていたけど…。今回の蔦騒動に何か関係あるのかな。そもそも、あの子は本当に碧の魔女…?そんなことを考えながらわたしは本を開いた。かなり分厚い。ページをめくり、碧の魔女を探す。…あ、あった。そこにはこんなことが書いてあった。

『碧の魔女は、植物を自由に操る魔女。彼女が力を使えば、植物は自在に動き、成長する。その力は強大で、六人の偉大な魔法使いの中では一番魔法の力が強いとされている。また、協会の森を作り上げたのも彼女である』

え、そうなの!?確かに、そんなことを聞いたことがあるようなないような……。驚きつつ続きを読み進める。

『彼女の魔法は特殊で、その絶大な力を使って協会をつくりあげたとされている。しかし……は…忌……。…は…失……。』

その先は、何故か読めなかった。というのも、その先の文字は掠れていたり、白く塗りつぶされたりしていたのだ。これでは、資料の意味がない。何て書いてあるのか、気になったので窓から差し込む日の光に透かしてみた。でも、見えない。何か重要なことだという予感がする。魔法でどうにかできないかな…。そのページの辺りを意味もなくめくっていた、その時だった。

「何読んでるの?…碧の魔女?ジェシカにしては真面目なものを読んでるね」

急に真後ろから声が聞こえた。ぎょっとして振り返ると、そこにはゼンが!びっくり。何だか最近、ゼンに驚かされることが多いような…?前まではわたしが驚かせていたのに。しかも、「ジェシカにしては」って何なんだ。普段わたしが真面目じゃない、みたいな言い方をしないでほしい…。微妙に複雑な気持ちになったが、ゼンは全く気にせず、わたしの横の椅子に座った。そして、わたしの目の前に置いてある本に顔を近付けた。そのために、必然的にわたしとの距離も近くなる。急に緊張してきたわたしは適度な距離を保とうと、反対側に体を傾けた。そもそも、心の準備ができていない時に来られると非常に反応に困る。皇国から戻ってきた後、そんな状態になることが増えたような気がする…。一方のゼンは全く気にしていない様子だ。見ているうちに興味が出てきたのか熱心に読んでいる。どうやら、本の世界に行ってしまっているようだ。しばらくしてからようやくこちら側に戻ってきて、本から少し離れた。そして、避けているわたしを見て首をかしげた。

「ジェシカ、どうかした?そんなに体を傾けてたら椅子から落ちるよ」

今の状態なら元の態勢に戻っても距離は保たれるはずなので、わたしはゆっくりと元に戻った。本当に緊張した…。その後でゼンはこう聞いてきた。

「それで、何でこの本を読んでるの?碧の魔女って、六人の魔法使いの一人だよね。あ、もしかしてまだ具合が悪い?それで、逆に勉強する気になったとか?」

かなり失礼なことを言ってわたしの額に手を近付けてきたので、思わずその反対側に避けてしまった。急に近づかれるとやっぱり心臓に悪い。だが、かなり慌てて避けたせいで思いっきりバランスを崩した。視界に天井が広がり、そのまま落ちそうになる。けれど、すんでのところで手首を掴まれ、引っ張られた。危なかった…。何をやっているんだろう、と自分で自分に呆れてしまう。だが、わたしが無事なことを確かめたゼンは安心したように笑った。

「セーフ…。良かった、間に合って。というか、やっぱり具合が悪いんじゃない?今日は何もしないでこのまま部屋に戻った方がいいと思うよ」

「いや、だ、大丈夫。本当に平気だから!その…、助けてくれてありがとう」

ゼンはまだ心配そうだったけれど、結局大丈夫だと判断したらしく、話を元に戻した。どうして「碧の魔女」の本を読んでいるのかと…。けれど、答えに困る。夢で見たから、というわけにもいかないし。不思議な声についてもわたし以外の人には聞こえていなかったようだし…。どちらを言ったとしても、信じてもらえる可能性は低いだろう。わたしは考えた末、こう誤魔化した。

「ただ少し気になっただけだよ。深い意味は全くないから。ただの興味で…」

って、これ、誤魔化せているのかな。自信がない。ゼンって勘が鋭いし。けれど、その懸念に反してゼンはただうなずいた。あれ、上手くいった…のかな?そう安心しかけたその時、

「でも、それならわざわざここに来ることはないよね?」

鋭い質問をされた。確かに、少し(・・)興味を持ったくらいならここに来なくてもいい。一応、ここにいる魔法使いがそれぞれ持っている魔法の事典には六人の魔法使いについて詳しく載っている。そこに大体の情報が載っている。まあ、わたしの場合はそれだけだと資料が足りなくてここに来たわけだけど…。それを見抜かれてしまった。やっぱり、咄嗟に思いついた言い訳は通用しないみたいだ。

「そもそも、ジェシカって分かりやすいし。口調とかですぐに分かるよ」

うわ…。かなり痛い一言をもらってしまった。そんなに分かりやすいのかなあ…。自分では全然そうは思わないけど。しかし、そんな感じで嘘だということがばれてしまったので、仕方なくわたしは夢や不思議な声について話すことになってしまったのだった…。

読んで下さり、ありがとうございました。

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