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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
50/90

第50話

夢だと分かる夢を見た。

どこか、知らない場所にわたしは立っていた。目の前には一つの扉がある。しかし、周りには何もない。その扉だけはぼんやりと発光しているけれど、他は真っ暗。吸い込まれそうなほどの闇が囲んでいる。試しに扉に近付いてみたけれど、それは蔦で覆われていて…、まるで封印されているよう。そっと蔦に触れると、その部分から炎が輝き、蔦だけを器用に燃やしてくれた。…けど、これ、入っていいの?蔦であんなに覆われていたし、入ったらいけないのかもしれない。少し不安になる。でも、他に行く当てもないので、わたしは思い切って扉を押し開けた。それと同時に強い風が吹きつける。その先に広がっていたのは、一面碧色に覆われた庭園。葉が光を浴びて所々白く輝いている。どうやら、外に出たみたい…。あちこちに鉢が置いてあり、何だかよく分からない草が大量に生えている。そして、その真ん中に少女がいた。わたしよりも幼い。一体、誰だろう…?彼女の周りを植物が覆っていて、まるで彼女を守っているようだ。何となく、少女が只者ではないのが分かった。彼女が手を振ると、その真下の地面から新たな蔦が現れて…。それを見るのと同時に、わたしの心の中で誰かがつぶやくようにその少女の名を言った。

『……碧の魔女……。……』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その声が聞こえた瞬間、夢からはじき出されたような気がした。誰かに自分の名前を呼ばれたような気がして、そっと目を開ける。協会の、自分の部屋。でも、ここに戻ってきた記憶がない。それくらい疲れていたのかな?そもそも、寝る前に何があったんだっけ。それに、朝にしては部屋が明るい。今は何時だろう?寝過ごしたのかな。でも、それならさすがにニーナが起こしてくれているはず…、と考えていたその時だった。不意に、予想外の声がどこからか聞こえてきた。

「…あ。ジェシカ、起きた?大丈夫?どこか痛かったりおかしかったりしない?」

…それはこの部屋にはいないはずの人物で。何でここに!?わたしはその質問に返事することさえも忘れて慌てて起き上がった。でも、その声の主――ゼンの姿が見えたのと同時に、頭に強い痛みが走る。思わず頭を押さえたけれど、痛みのせいかぼんやりとしていた記憶が戻ってきた。そうだ、わたし、蔦を駆除した後で協会長さんたちと話していた時に不思議な声を聞いて…。その直後に今よりもひどい頭痛に襲われて倒れたんだっけ。ようやく思い出した。けれど、何故ここにゼンがいるのか理解できない。てっきり、皆と掃除をしているのかと思ったんだけど。それとも、既に終わっているのかな?そう思って時計を見ると、時刻は夕方を指していた。蔦の事件が起こったのが早朝だったから…、結構長い時間寝てたんだ、わたし…。色々とゼンに聞きたいことがあるのに、頭が痛くて聞けない。

「まだ痛いみたいだね。ちょっと待ってて、協会長のところに行ってくるから」

そう言ってゼンは部屋を出て行ってしまった。わたしはそれをぼんやりと見送りつつ、先ほどの夢の余韻に浸っていた。鮮明に映像が記憶に残っている。それに、最後に聞いた声も…。あの声は、確かに「碧の魔女」と告げた。彼女は、偉大な六人の魔法使いの一人だ。そして、声はかの魔女の名前も言っていた。ただ、それだけが思い出せない。頭痛が少し収まったが、それと同時に名前の記憶もどこかに行ってしまったようだ。大事なものなのに。何だったっけ、と考えていたらいつの間にかゼンが戻ってきていた。後ろにはニーナもいる。どうやら、途中で会ったらしい。起き上がっているわたしを見て、非常に安心したようだった。すると、ゼンが「はい」と何かを渡してきた。何かと思えば、薬だった。要するにこれを飲め、ってことだよね。嫌だな…、絶対に苦いよね、これ。色味で何となく分かる。でも、ゼンとニーナが「早く飲んでね」と無言で圧力をかけてきたので、仕方なく飲みこんだ。想像以上に苦かったけど、すぐに痛みが治まってきた。その異常な早さに驚いていると、ゼンがようやく、わたしの症状について説明してくれた。

「さっき、協会長がジェシカを診たんだけど、倒れた原因が外からの魔法の干渉だったんだって。だから、ジェシカが起きたら報告ついでにそれを治すための薬を取りに来て下さいって頼まれたんだ」

どうやら、協会長さんが調合したらしい。…うん、何となくそんな気がしていた。協会長さんの作る薬はよく効くけど、とても苦い。前に風邪をひいた時にも飲んだことがあったけど…。あれも味が微妙だった。そんな感じでわたしは薬について呑気に考えていたけれど、ニーナとゼンはわたしに魔法で干渉した相手のことを真剣に考えているらしい。いつもはのんびりとしていて穏やかな性格のニーナが珍しく怒っている。

「一体、ジェシカに手を出したのは誰でしょうか!?最低ですね!何なら一発、魔法で攻撃を加えたいぐらいです。ジェシカ、何か干渉してきた相手に心当たりは?その方々に一人一人、尋問しますから!」

と非常に怖い言葉を言い放った。しかも、雰囲気や口調まで恐ろしい。これ、絶対に尋問される相手が質問される前に恐怖で気絶するだろうな…。今のニーナにはそれぐらいの迫力がある。それに、こんなにニーナが怒っているのは初めてかもしれない。何となく、この状態のニーナはわたしでは止められないような気がした。絶対に無理だ。止めておいた方がいい、と本能がはっきりと告げている。逆に止めようとしたら怒られそう…。そうなると、やっぱりゼンにどうにかニーナを鎮めてもらうしかないかな、と思ってわたしはゼンを見たのだが、そちらはそちらで非常に怖い。ニーナ以上に怖い。雰囲気がおどろおどろしい。魔法を使っていないはずなのに、氷のような冷たくて非常に鋭い空気が部屋に広がっているような気がした。ゼンはうっすらと笑っているが、冷たい声でニーナに同意した。

「そうだね。早急に犯人を探しだして、見つけ出したら色々聞いた後で氷漬けにして、頭を冷やしてもらう?取りあえず一か月くらい凍らせる方向でいい?」

すると、ニーナがそれにあっさりと賛成した。更に話が進んでいく。いや、わたしはお勧めできない!恐らく、その人が命の危機に瀕することになるから絶対に止めてほしい。氷漬けとか絶対寒い。そもそもゼンの冷たいオーラだけで凍りそうだし。その状態で一か月って…。それに、一応魔法使いの間での決まりでは、特別なとき以外は魔法で人を攻撃したらいけないことになっている。なのに、二人の間で更に具体的な話が進んでいく。大体、犯人をまだ捕まえていないのに…。けど、この二人が犯人を見つけたら大変なことになりそうなので、誰がわたしに魔法の干渉をしてきたのか気になってはいるけど、見つかってほしくないというのも本音だ。どうしよう、この二人…。ギルさんにでも相談してどうにかしてもらおうかな…。解決策を考えていると、不意に相談し合っていた二人がこちらを向いた。

「それで、ジェシカ、誰か怪しい人はいませんか?遠慮せずに言って下さい!」

ニーナがそう尋ねてきた。…けど、正直に言って分からない。それに、もし怪しい人がいたとしてもこの状況だったら言えないよね!なので、わたしは知らない、と首を振った。ついでに二人を止めようと試みる。

「というか、そこまでしなくても大丈夫だから!わたしはもう元気になったし」

そう言ってどうにか二人を説得した。頭痛よりもそっちの方が大変だったので、そちらの意味でもう二度と干渉されたくないな…。

読んで下さり、ありがとうございました。

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