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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
1章 緋色の炎の魔法使い
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第5話

その後、わたしは魔法協会の長に会うことになった。長、って言うと何か怖そうなイメージがあったけど、意外と怖そうではなかった。一見、優しそうな表情の初老のおじいさんだ。そのことにちょっとほっとする。…そういえば、協会にいる、ってことは、…この人も魔法が使えるのかな?そのことが少し気になりつつ、わたしは協会長さんに挨拶した。

「はじめまして。ジェシカです。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、これからよろしくお願いします」

そう言って、ぺこりとお辞儀をした。すると、何故か隣のギルさんが苦笑いした。どうやら、さっきわたしが罠を発動させまくったことを思い出したらしい。…だ、だってしょうがないじゃん!気付かなかったんだもん。そもそも、その存在すら知らなかったし。…と心の中で言い返していると、協会長さんが立ち上がった。そして、わたしの方に近付き、じーっとわたしの瞳を見つめる。…?何だろう?ちょっと疑問に思ったけど、わたしは協会長さんを見返した。すると、協会長さんは小さくつぶやいた。

「…これはまた珍しい。まるで、光華の魔術師のような強い炎の力の持ち主…。恐らく彼女は…。いや、何でもない。ジェシカさん、はじめまして。魔法協会へようこそ。魔法という力の為に大変なことも起こるでしょうが、頑張ってくださいね」

わたしは、その言葉の前に言っていた「光華」や「強い炎の力」という言葉が気になったけど、協会長さんはそれ以上、それに関する言葉を言わずに魔法協会に関する話を続けた。協会の決まり事や、すること、構造や罠に関する注意などなど…。覚えることが多いけど、取りあえず分かったのは、罠には非常に注意しないといけない、ということと、私や同じ年齢の子どもたちは魔法の基礎について学びながら魔法に関する色々な問題に取り組んでいく、ということ。魔法協会は、世界で起こる魔法がらみのことを密かに解決するために存在しているのだそう。何か、すごいな…。人のために、というのが…。きっと、わたしにはできない。わたしは自分のことだけで終わってしまうようなそんな気がして…。わたしは、本当にここにいてもいいのかな?そんなことを考えていたら、他の説明は全く聞いていなかった。幸いなことに、それらのことが書いてある紙はもらったけど。それを持って、協会長さんの部屋から退室する。この後は、ギルさんがわたしの部屋へと案内してくれるらしい。わたしはもやもやとした気持ちを切り替えるため、ギルさんにさっきからずっと気になっていたことを質問することにした。

「ギルさん、さっきわたしのことを罠から助けてくれた人って、誰?今度会ったら、ちゃんとお礼を言いたいんだけど。名前だけでも教えてくれない?」

「あー、さっきの奴か…。名前はゼン。ずっと前からここにいる。確か、ジェシカとは同じ年齢のはずだ。魔法の腕は同年代の奴らの中では一番なんじゃないか?」

ふーん。ゼン、っていう名前なんだ。そういえばさっき、確かにギルさんがゼン、って呼んでたような気がする。ヴェリエ国ではあまり聞かない名前だから、もしかしたら他の国の人かもしれない。それなら、その国の話を聞けそうで楽しそうだな…。そんなことを考えつつ、今度は慎重に慎重に廊下を歩いた。さっきみたいに針で串刺しにされかけるなんて絶対に嫌だし!そんな感じでわたしが超ゆっくりと歩いていたので、ギルさんは少し呆れていた。しかし、ようやく部屋にたどり着いた。

「ここ?…あれ、もしかしてドアの横のプレートってこの部屋を使っている人の名前??二つあるけど」

「基本、ここは二人一部屋だからな。確か、もう一人の人物は…ニーナって名前だったはずだが」

そう言うと、ギルさんは仕事があるらしく、行ってしまった。ぽつん、とその場に一人取り残される。わたしは再び目の前の扉に目を向けた。…いつまでもここにいるわけにはいかないし、入ろうかな。わたしは、えいっと勢いよく扉を押した。…が、その瞬間、何かに当たったような音がした。…!?

「い……っ。ご、ごめんなさいごめんなさいっ!!人の気配がしたから誰なのか気になったんですけど、でも開ける勇気がなくて!!だからどうするべきか迷ってたら急に開いちゃって。驚かせてごめんなさい…!!」

扉から出て来たショートカットの女の子が額を押え、涙目でそう言った。ペコペコと頭まで下げられる。い、いや、そんなに頭を下げられても…っ!?それに、今のはノックしなかったわたしも悪かったし!わたしは慌ててその人―――恐らくニーナさんだと思われる―――に言った。

「気にしないで下さい!わたしこそ、ノックしなくてすみません。あの、大丈夫ですか?!けっこうすごい音がしましたよね…!?」

すると、ニーナさんは軽くうなずき、何故か近くの花瓶に挿してあったお花を抜いた。…?その行動にわたしが首をかしげると、ニーナさんはその花をぶつけた箇所に近付けた。その瞬間、お花が一瞬淡く発光する。わたしがその現象に驚いていると、ニーナさんはすっと押さえていた手を離した。

「え…、傷がなくなってる…!?何で!?もしかして、今のって…」

「魔法の一種です!今のは回復の魔法の一種ですね。ここにある魔法の花を使いました」

見ると、さっきまではピンとしていた花は少し萎れてしまっている。どうやら、使うごとに枯れていってしまうみたい。何だかそれが悲しいな…、と思っているとニーナさんが「中へどうぞ」と言ってくれたので、わたしは恐る恐るその部屋に入った。中は、きちんと整理されている。そして、本棚は大量の本で埋まっている。…もしかして、これ、全部ニーナさんの物なのかな?わたしがきょろきょろしていると、ニーナさんは、部屋の中心のテーブルにしまってある椅子をひいてくれた。わたしはお礼を言ってそこに座った。すると、ニーナさんはにこりと笑って言った。

「改めまして、はじめまして、ジェシカ。私はニーナです。さっきのような感じで基本的にへまばかりやっているので、ご迷惑をかけることもあると思いますけど、よろしくお願いしますね」

「わたしはジェシカです。えっと…、感情によって火が起こってしまうかもしれないので、あの、危険そうだと思ったら遠慮なく離れて下さい!」

誰かがわたしのせいで傷つくのは、怖い。だからわたしは、自分の力が大嫌いだ。わたしがうつむいてぎゅっと膝の上の手を強く握るとニーナさんは言った。

「その時は、魔法の花で水を使って消火するので大丈夫!それに、授業ではコントロール方法も学べるはずです。そんなに心配しなくて平気ですよ」

ニーナさんの言葉にわたしは少しほっとした。だって、もしこの前みたいなことになったら怖いから…。わたしは、人を無自覚に傷つけてしまうことが怖い。そうならないためにも、しっかりとコントロール方法を学んでおかないと。そんなことを考えていると、ニーナさんは少し笑みを浮かべた。

「困ったことがあったら何でも聞いて下さい。あ、それと、私は一応あなたと同い年ですけど、この口調が癖なので。ジェシカさんは普通にため口でいいですよ。名前も呼び捨てで」

そうなんだ!?少なくともわたしよりは落ち着いている雰囲気だから、年上かと思っていた。でも、ため口でいいなら遠慮なくそっちにする。基本、敬語を使わないから、下手なんだよね…。わたしは取り合えず、ニーナに質問してみることにした。

「ニーナはいつからここにいるの?すごく魔法に慣れているみたいだけど…」

「一年ほど前から。その前は西の方の国で過ごしていましたが、そこを離れてここに来ました」

どうやら、ここにいる子どもたちはそう言う人が多いみたい。ということは、わたしは近い方なのかな?ふと、さっきわたしを助けてくれた、ゼンという名前の男の子はどこから来たのかな、と気になった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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