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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
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第48話

向こう側にいた協会長さんやギルさんは相当疲れているようだった。だが、他の人の姿は見当たらない。一体どこにいるのかと辺りを見渡すと、協会長さんがわたしの疑問を察したかのように言った。

「私たち以外の方々は別の、比較的蔦の勢いが弱い場所にいます。一番ひどいのが…、この場所です。いくら蔦を切ってもキリがなくてですね…。非常に困っていたので、助けを呼ばせて頂きました」

なるほど…。だからこの辺りには人がいないんだ。納得しつつ、再び動き始めた蔦を見た。まるでヘビのように動いていて少し怖い…。できることなら早く倒してしまいたいが、そもそもこの蔦の原因は何なんだろう?もしも原因がどこかにあるならば、そっちの対処をした方が早いと思うけど…。でも、それなら既にそれをやっているはず。つまり、原因が分からないか、分かっているのにそれをどうにかすることができない。そのどちらかだ。と考えていると、何かを探すように動いていた蔦が急にこちらに向かってきた。しかも、四人いる中の、わたし目がけて…。突然のことに棒立ちの状態になっていると、咄嗟にゼンが氷の魔法を使って蔦を撃退してくれた。凍った蔦は元の場所に戻って行く。だが、ゼンは不思議そうに首をかしげた。

「ジェシカ、何か蔦に恨まれるようなことでもしたの?ここに来る時も蔦にちょっかいかけられてたよね」

蔦に恨まれるって…、どういう状況?想像が全くできない言葉だ。どういうことをしたらそうなるのか、非常に気になるんだけど。そもそも、わたしはこんな風に動く蔦には一度も会ったことがないし。初対面の人…、いや、植物にこんなに攻撃されるなんて理不尽だと思う。むしろこっちが恨みたくなるくらいだけど…。ともかく、そんな感じなので理由は分からない。けど、これ以上わたしに攻撃されても面倒なので、わたしは魔法の花をかざした。急に花を持っている手が熱くなるのと同時に、緋色の炎が一気に燃え上がる。蔦の緑色で覆われていた廊下が、一瞬で鮮やかに輝く赤色に変化した。その炎は蔦を完全になくなるまで燃やし、やがて消えていった。天井や壁、そして床にも炎の形跡は残っていない。ちゃんとコントロールできたことにほっとしていると、何故かわたし以外の三人は呆然としたようにわたしを見ていた。あれ、何かおかしいことしたかな?特に思いつかないけど…。逆に戸惑っていると、ギルさんがわたしに、恐る恐る質問してきた。

「…ジェシカちゃん、今の炎って、どうやって出した?例えば、大量の魔法の花を使ったとか…」

はい??質問の意味が分からない。どうして急にそんなことを聞いてくるのかよく分からない。普通に、いつも通り魔法を使っただけなのに…。それとも、わたしが気付いていなかっただけで、いつもと炎の様子が違っていたとか?でも、魔法を使った張本人のわたしは、特に違和感を覚えていなかったし…。ひたすら戸惑っていると、協会長さんが何とも言えない表情でこう言った。

「実は、蔦が生え始めてから、ここで上手く魔法が使えないんですよ。まあ、少し威力が弱い程度ですが…。しかし、あなたはいつもと同じように使っていたので」

…まさか、そんなわけ。そう思ってゼンを見ると、本当だよ、とでも言うようにうなずかれた。そういえばさっき、氷の矢を作った時に何かぶつぶつ言っていたけど…。そのことについて言っていたのかな。でも、わたしは特に異常を感じていない。何だろうな、と思いつつ魔法の花を見ると、既にそれは萎れかかっていた。いつもだったら、これくらい使ってもまだ大丈夫だと思うんだけど。何だか萎れるスピードがいつもより速いような…?でも、いつもと違う点と言ったらそれくらいで、自分が使う魔法には特に問題はない。むしろ、絶好調なくらいで。それを伝えると、三人は揃って不思議そうな表情をした。一体何なのだろう…。よく分からないが、取りあえず先に進む。すると、今度は協会長さんの部屋の扉に大量の蔦が生えていた。協会長さんが部屋を出た時はそんな状態になっていなかったようで、唖然としている。協会長さんも何か蔦に不満を持たれているのではないかと思ってしまうほど、蔦が多い。下手したら、先ほどの道よりも多いかもしれない…。だって、さっきの道は辛うじて壁が見えていた。でも、こっちは全く扉の木の色が見えない。まるで、碧色の葉っぱのカーテンのよう。協会長さんが近付くと、その量を更に増やしていた。ゼンやギルさんも、その蔦の量には驚いているようだ。

「部屋に色々と置いてきた物があるのに…。これは嫌がらせか何かですか…」

協会長さんが呆然とつぶやいている。そして、助けを求めるようにわたしを見た。…燃やせってことですね。そうなる気がしてた。ただ、ここで魔法を使うと魔法の花が完全に萎れそうなんだよね…。まあ、その時はその時でどうにかしよう。幸い、ここには魔法の花を研究しているギルさんもいるし。そう思ったわたしは、蔦に再び花をかざした。碧色の中に、緋色が生まれる。そしてその色は段々広がっていく。それに従って、魔法の花が急速に枯れていく…。枯れるのが先か、燃えるのが先か…。大丈夫かな、これ。そう思った、次の瞬間。何とか火から逃れた蔦が急にわたしに向かってきた!ゼンが咄嗟に氷で壁を作ってくれて太めの蔦は退いたのだが、いつの間にか忍び寄っていた細い蔦が勢いよく飛んできた。そうかと思えば、蔦は器用に氷を避けてわたしの手から花を奪い、花と一緒に消えていく。一瞬の出来事に、何も反応できなかった。花がなくなったことで、炎が収束していく。でも、何とか蔦はほとんど取り除くことができた。協会長さんは安心したように扉を開けて中に入っていったけど、わたしは呆然としてそこから動くことができなかった。なぜなら、あの瞬間。蔦が花に触れた瞬間、花を通して何か感情のようなものが伝わってきたからだ。悲しみと、憤りと、わたし(・・・)に対しての驚き。どうしてなのか、その理由は分からなかったけど、あの時確かに蔦から伝わってきたのは、それらの感情だった。それと同時に、こんな声が聞こえてきたような気がした。

『…なぜ、あなたがここに…』

聞いたことがないはずなのに、どこか懐かしい声だった。わたしは、この声を知っている?…気のせいだったのかもしれないけど。先ほどまで生えていた蔦は、いつの間にか消えている。それを確認するのと同時に、ばたばたと大勢の足音が聞こえてきた。何だろう、と思ってそちらを見ると、他の協会の人たちが来ていた。その中には、ニーナの姿もある。ニーナはわたしを見ると安心したような表情を浮かべた。

「無事で良かったです。わたしたちは上の階を主に担当していたのですが、先ほど何もしていないのに突然収まりまして…。なので、半分は協会長に報告。もう半分はまた出てくることを警戒して待機、ということになったんですよ」

そう説明してくれた。上の階も大変だったのだという。でも、一階はともかく、どうして二階の床から蔦が生えてきたんだろう?気になったが、収束したし、取りあえず気にしないことにした。朝から蔦が生えてきて非常に疲れた。でも、この後はきっと協会中の大掃除が待っているはずだ。それを考えると、非常に憂鬱…。それに、何故かわたしの心の中には、不安にも似た、それでいて冷静な…、妙な気持ちが広がっていた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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