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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第44話

事件が解決した次の日。全て終わったので、わたしは魔法協会に戻ることにした。ゼンはどうするのか分からない。今回の件で色々あったから、まだここに残るのかもしれない。だが、取りあえずわたしは帰るので、お世話になったカノンさんと、リオナ様に挨拶することにした。カノンさんのところに行こうとしたらちょうど途中でリオナ様に会った。話しかけてもいいのかな、とためらっていると、リオナ様の方がこちらに気付き、駆け寄ってきた。リオナ様は目覚めたばかりなのにすごく元気そうなご様子だ。だが、わたしが協会に戻ることを告げると、少し寂しそうな表情をしていた。しばらくしょんぼりとしていたが、最後には笑って、

「また来てくださいね!その際には、また色々とお話ししましょう!」

と言って下さった。しかも、その笑顔がとても可愛らしい。失礼かもしれないけど、話していてとても癒される方だ。だが、この後リオナ様は用事があると言い、すぐに行ってしまった。今度お会いできたら、またわたしもお話ししたいな。そう思いつつ、カノンさんのところへと向かう。今の時間は祈祷が終わってしばらく経った頃なので、恐らく大丈夫だろう。きっと、お部屋にいるはずだ。初めて来た時は迷路のようでよく分からなかった宮廷だが、かなり慣れた。迷わずにカノンさんの部屋にたどり着き、閉まっている扉を叩く。すると、すぐにカノンさんが出てきた。にこにこと笑みを浮かべて部屋に入れてくれた。なので早速、今日帰るということを伝えると、驚いたような表情をされてしまった。正直、わたしももう少しここにいたかったけど、さすがに遊んでばかりいると協会長さんに怒られる。ついでに、隊長さんとかギルさんにも。なので、事件が終わったからには速やかに帰らなくてはならない。それを言うと、カノンさんは納得したような表情をした。

「…そういえばジェシカさん、昨日、ゼンが危ないところを助けてくれてありがとう。まだあの子、お礼を言ってないでしょう?全くもう…。後で来たら言い聞かせておくわ」

「いえ、そんな…。仲間ですし、いつも迷惑をかけているので。ゼンが怪我しないで、本当に良かったです」

あの時は、本当に必死だった。…そういえば、あの時の声、結局何だったのか分からなかったな。一体誰なんだろう…。でも、時々危険な場面もあったけど、何とか終わったし、良かった。…それに、わたしの力で大切な人を守ることができた。協会に行く前までは、人を傷付けてもおかしくなかったし、実際に傷つけかけたような力で…。その力で誰かを救えたということがとても嬉しい。そう思ったところで、ふと気付いた。い、今、わたし、「大切な人」って。この場合は、もちろんそれはゼンを指しているわけで…。え、ちょっと待って。自分で言ったことなのに、その意味が一瞬分からなくて、わたしは混乱した。もう一度、自分が思ったことを心の中で繰り返す。大切な、人…。おかしい、どう考えてもおかしい。だって、ついこの前までは、わたしはゼンを魔法関連の仲間でありいたずら相手であるという認識をしていた。それなのに、いつ…。いつから、わたしの中でのゼンが変わってしまったのだろう。この前、カノンさんに『好ましく思っている?』と質問された時?それとも、その後?それか、もっと前のことなのか…。ごちゃごちゃとわたしが考えていると、カノンさんが不思議そうに尋ねてきた。

「ジェシカさん、どうかしたの?何か考えこんでいるようだけど…。悩みごと?」

「…今まで何とも思っていなかった人が大切な人に変わるのってどういう時なんでしょう?」

ぼんやりと考えていたせいか、素直にそう答えてしまった。しかも、その後しばらく、わたしは自分が何を言ったのかよく分かっていなかった。だが、なかなか返事が返ってこなかったことで、ようやく変な空気になっていることに気づく。そこでカノンさんを見ると、彼女は驚いたように目を見開いていた。…わたし、今、何を言ったかな?少し考えて、思い出す。けど、思い出した瞬間、すぐにそれを忘れたくなった。一体、何を聞いているんだろう、わたしは……。思わず謝った。

「ごめんなさい、突然変なことを聞いて。忘れてください!」

「まあ、突然のことで驚いたけど…。別に気にしないで。ちなみに、そのお相手はどなた?」

逆に興味を持たれてしまった。あー、でも、言えないんだけど!だって、本人のお姉さんだし。非常に言いにくい…。だが、カノンさんはある程度予想ができているらしく、嬉しそうに微笑んだ。そして、私の質問に答えてくれた。

「私はまだそういうことがないからよく分からないけど…。でも、そういうのってきっと、何気ない瞬間にふとやって来るんじゃないかしら?だから、いつなのかはっきりしないのだと思うわ」

カノンさんの言っていることは非常に当てはまっているような気がした。でも、ゼンはどうかなー…。やっぱり、どう考えても、「いたずらしてくる迷惑な人」と思われている気がする。そもそも、ゼンは協会に帰ってくるのかな?ここに残る可能性だってあるし。と考えていた、その時。

「失礼します。…あ、ジェシカ、ここにいたんだ。どこにもいないからもう帰ったのかと思ってた」

ゼンの声が聞こえた。非常に驚いた。思わず、持っていた荷物を落としかけるくらい。だって、自分の気持ちに気づいた後で、まさかその本人がすぐに来るとは思っていなかった。そんなわたしを見てカノンさんはくすくすと笑っている。ゼンも、どうしたの?とでも言いそうな表情をしている。恥ずかしい…。わたしは、わざと話題を変えた。

「どうしたの、ゼン?もしかして、わたしのことを探してた?」

「うん。だってジェシカ、協会に帰るよね?それなら一緒に帰ろうと思って。一応、水上車が来る時間は調べてあるよ。そろそろ出発した方がいいんじゃないかな」

だが、わたしはその言葉に一瞬戸惑った。勝手に、ゼンはここに残るのかと思っていたからだ。すると、わたしの反応にゼンは逆に戸惑ったようだった。なので、わたしは何でもない、と慌てて首を振った。一緒に帰れるのは、素直に嬉しい。わたしは最後に、カノンさんにお礼を言った。

「カノンさん、色々とお世話になりました!また会える日を楽しみにしています」

「ええ、こちらこそありがとう。それと、ゼンのことをよろしく頼むわね」

カノンさんは意味深に微笑んだ。…やっぱりわたしの「大切な人」が誰なのか分かっているみたい。だが、取りあえずうなずいた。すると、ゼンは、いつものように一言。

「ジェシカの方がいつもこっちに迷惑かけてるけどね」

と…。否定はできないけど、ひどくない?しかも、わざわざこの場所で言わなくてもいいと思うんだけど!そう思ってわたしはゼンをじとーっと見た。だが、ゼンは何とも思っていないように笑って、

「まあ別に、ひやひやさせられるのも事実だけど、…ジェシカのそういうまっすぐなところは嫌いじゃないよ。それじゃあ、そろそろ行こうか?確か、次のを逃すと、同じ方面のものは夕方まで来ないはずだから」

すぐに話題を変えられて、一瞬わたしも流しかけたけど…。前半の言葉が一体どういう思いを込められて言われたのか、後から非常に気になった。でも、今は取りあえず、時間に間に合うようにしないと。わたしはゼンを追って、皇国の宮廷を出た。

読んでくださり、ありがとうございました。

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