表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
43/90

第43話

今回も刃物表現があります…。

たぶん、今回で微妙に危険なシーンはなくなると思います。

「ゼン!終わった、終わったよ!魔法仕掛け、ちゃんと壊せた!」

わたしがそう言うと、ゼンはこちらを見て、お疲れ様、と言うように微笑んだ。その笑みに何故か一瞬心拍数が上がったような…、そんな気がした。…何だろう、今の。魔法を使いすぎて疲れたのだろうか…?思わずわたしが胸に手を当てたその時。黒幕が、さっと下の方に視線を動かした。どうやら、わたしが声をかけたことで、ゼンの魔法が少し緩み、多少動けるようになってしまったようだ。だが、ゼンは気付いていない。いや、そもそもその効力が徐々に解け始めている。魔法の花に込められた力が失われてきているのだろう。だから、黒幕は動くことができているのだろう。たぶん、あの人の視線の先にあるのは、さっき持っていた刃物…!!魔法は絶対ではない。確かに、その力は人間の力に比べれば圧倒的だ。だが、時と場合によってはその魔法を普通の人でも破ることができる。そのことに例外はない。それに、予感がしていた。魔法が破られる…、そんな予感が。もし彼が動き始めたとしたら…、誰を攻撃するか分からない。だが、わたしの手元にはもう、魔法の花がない。恐らく、今ゼンに声をかけても遅いだろう。逆に黒幕を刺激してしまう可能性がある。ゼンなら恐らく防げるはずだが、それは賭けに近いようなものだ。タイミングによっては、危ないだろう。魔法を使いたいのに…、使えない。だが、その時だった。不意に、頭の中に誰かの声が響いた。

『花がなくとも、魔法は使える。その方法を、君は知っているはずだ。記憶になくても、必ず…』

それは、魔法試合の時にも聞いた声。久しぶりに聞いたような気がするが…。いや、そんなことより言葉の内容だ。花がなくても、大丈夫…?それは、一体?わたしはぎゅっと手を握った。だが、その手の中に何かがある。硬い感触の物が確かにそこにある。見ると、それは魔法仕掛けだった。そういえば、持ったままだった。…魔法、仕掛け。謎の声の言葉の意味に気づいた、その瞬間。呪縛が解けた。花が散り、澄んだ高い音が響く。その音でゼンは黒幕の動きに気づく。しかし、彼は既に刃物を持った後だった。それを、ゼンに向ける。ゼンは咄嗟に目の前に透明な盾を魔法で作った。だが、それは慌てて作られたもので、不完全だ。刃が当たった瞬間、音を立ててひびが入る。恐らく、次の攻撃で割れてしまうだろう。…けど、それまでの時間で十分だった。わたしは、魔法仕掛けを黒幕目掛けて強く投げつけた。お願い、成功して…!再び刃物が煌めいて透明な盾が割れると同時に、魔法仕掛けが刃物に到達する。その瞬間、ただの綺麗な装飾品が炎に変わり、よっぽど高い温度でなければ熔けないはずの刃が、赤い色に染まる。黒幕はその熱さに、思わずそれを取り落とした。その瞬間、ゼンが刃物を氷の力で冷まし、一気に冷えたそれを、遠くへと飛ばす。それは、部屋の端っこまで一気に飛んで行ってしまった。これで、黒幕は攻撃できない。黒幕は、驚いたようにわたしを見た。ゼンも不思議そうにわたしを見ている。花がないのにどうして魔法を使えたのか、不思議に思ったのだろう。だが、その足元に落ちている魔法仕掛けを見て納得したようだった。…そう、わたしは、魔法仕掛けを花の代わりとして使った。元々これが持っていた夢を見させる効力は失っているが、まだこの中に魔法の力が残っているのは事実。…けど、声の主はどうしてそれがすぐに分かったのだろう。正直、あの言葉がなければ分かっていなかったと思う。もし、分かっていなければ…。だが、わたしはあえて余裕があるように微笑んだ。

「わたしが、簡単に大切な仲間を怪我させるわけないでしょう?」

すると、タイミングよく部屋に複数人の人物が入ってきた。いくらここが隔離された場所とはいえ、こんなに大騒ぎしていたら誰か一人くらいは気づくだろう。状況説明を求められたので、取りあえず、黒幕がリオナ様やゼンに攻撃しようとしたことを説明した。魔法仕掛けに関する話もあるけど、それをしていたら面倒なことになる。なので、魔法のことを飛ばしつつ説明する。だが、黒幕はそっぽを向いており、認める気は全くないようだ。困ったな…、と思っていると、不意にベッドから凛とした声が聞こえてきた。

「彼らの言っていることは本当です。確かにあたしはずっと眠っていましたし、おかしな夢ばかりを見ていましたが…。外の声はちゃんと聞こえていましたので」

見ると、先ほどまで目を閉じていたはずのリオナ様が目を開けた。ゆっくりと起き上がる。まさか、このタイミングで起きるとは思っていなかったため、驚いた。ゼンや他の人たちも驚いているようだ。そんな中で、リオナ様一人だけが冷静な様子で言葉を紡ぐ。

「この方たちが来る前、あの方は確かにこう言っていました。『リオナ様、すぐに楽になれますからね』と…。その後で、金属同士が触れ合う音も…。恐らく、刃物を取り出したのでしょう」

そう言って、黒幕を見た。ついでにわたしは、先ほど部屋の端っこまで飛ばされた刃物を手に取った。恐らく、この刃物だろう。リオナ様は美しい微笑みを浮かべ、澄んだ瞳を衛兵たちに向けた。

「そういうわけですので、彼をすぐに捕縛して頂けませんか?」

だが、衛兵たちはためらっているようだ。確かに、彼が刃物を持っているのを実際に見たのは、わたしとゼンくらいしかいない。リオナ様はその時音しか聞いていなかったからか、信用性に欠けていると思ったようだ。そんな衛兵たちに、リオナ様は少し苛立ったように尋ねる。

「それとも、あたしが嘘をついているとでも?確かにあたしは目を閉じていましたけど、それは確かですよ。ここにいるお二方が何度もここを訪ねてきてくれたことも知っていますし、誰がここにいらっしゃったのかも分かっています」

そう言うと、衛兵たちは慌てたように動きだし、ようやく黒幕を連れて行ってくれた。良かった、取りあえず一件落着と言えるだろう。わたしを追いかけて来た謎の人物の正体もあの人だったわけだし。そんなことを考えていると、

「ええと、確か、ジェシカとゼン…、でしたっけ。ありがとうございました。あなた方のおかげで、こうして目覚めることができました。…この国は、魔法の存在について好ましく思っていない人が多いようですが…。でも、あたしはその力を認めます。魔法がなければ、きっとあたしは助かっていなかった。まあ、逆に言うと、魔法があったせいでこんな目に遭ったのですが…」

リオナ様は苦笑する。…それにしても、黒幕の人は、どうやって魔法仕掛けを手に入れたのだろう。その辺りがまだ疑問だったが、取りあえず終わったことだし、あまり気にしなくてもいいだろう。

「ですので、あたしはこれから、皇国の宮廷人にもこの力が認められるよう、精一杯努力すると決めました!そもそも、魔法が認められていれば、魔法仕掛けに関することがすぐに分かったはずですから」

きっと、そんな日が来れば、ゼンも多少はここでの居心地が良くなるだろうな。

「その暁には、ぜひまたこの国にいらして下さいね、ジェシカ。それと、ゼンもこの国に戻ってきた時にはあたしに魔法のことを色々と教えて下さい!」

リオナ様はそう言って可愛らしく微笑んだ。…けど、もしもそれが実現したら…、ゼンはこの国に戻っちゃうのかな?基本的に、魔法使いは魔法協会にいる、という決まりにはなっているけど…。でも、この国にはカノンさんがいるし、今回の件で魔法に興味を持ったリオナ様だっている。…ゼンがここに戻る日が、いつか来てしまうのだろうか。それだけが、何となく複雑に心の中に残った。

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ