第41話
残酷描写ではありませんが、少し危険な場面がありますのでご注意ください。
魔法仕掛けを持つ宮廷人は、彼の協力者が提案した唯一自分が助かるという策を実行しようとしていた。だが、そのためにはまず魔法使いを探さなければならない。そこで彼は、偶然すれ違った人々にその情報がないか聞いてみることにした。だが、なかなか有力な情報は集まらない。噂はただの噂だったのだろうか…。いや、だが、あれほど広まっていた噂が嘘だということはないだろう。そう考えながら歩いていると、知り合いに会った。何やら慌てている様子だ。そこでどうしたのかと尋ねてみると、彼は言った。
「庭園の近くでそろそろ魔法が使われるって…。実際に今、そこで何か準備をしている人がいて…」
と非常に怯えている。今は向こうに行かない方がいい、と丁寧に忠告までして去って行った。…だが、有益な情報が手に入った。つまり、その場所に行けば魔法使いがいる。彼の作戦を、実行できる。そこで彼は早速庭園の方に向かうことにした。そこに行くにつれて、人が少なくなっていく。恐らく、先ほどの知り合いのように魔法を怖がって逃げている人が多いのだろう。…だが、彼にとっては都合が良い。…魔法使いを、排除するには。辺りを警戒しつつ、庭園に向かうとそこには一人の少女がいた。まさか、自分よりも年下だとは思っていなかったため、彼は拍子抜けした。だが、何か罠が仕掛けてあるかもしれないと思い、しばらく様子を伺ってみることにする。少女は、何やら夢中になって地面に何かを描いている。その作業をしながら、数本の花を取り出して何やらその本数を数えていた。しかも、それらの作業に夢中になっているようで、こちらには全く気付いていない。安心した彼は、ゆっくりと少女の背後に近付いた。そして、隠し持っていた刃を取り出し、躊躇することなくその背に振り下ろす。だが、刃が少女に到達しかけたその瞬間。
刃が赤い炎を上げて燃え上がった。
柄が一気に灰となり、金属の部分まで赤色に染まる。彼は驚いてそれを取り落とした。すると、刃を燃やす炎が一気に大きくなり、彼を取り囲む。それは、まるで檻のように高くそびえ立った。つまり、逃げられない。彼が慌てていると、不意に少女が立ち上がり、振り返った。その瞳は、彼を取り巻く炎のような色をしている。彼女は、炎を映して更に濃くなった緋色の瞳を細めて笑った。
「まさか本当にこっちに来るとは思わなかったけど、念のために魔法を用意しておいて良かった。…それで、この状況の中わざわざここに来たってことは、あなたが魔法仕掛けの犯人ってことでいいのかな?」
その言葉で、彼は、自分が魔法使いの罠にかかったことを悟った。
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炎の檻に犯人らしき人を閉じ込めたはいいけど、どうしようかな?取りあえず、魔法仕掛けを出させた方がいいのかな。それとも、詳しく事情を聴くべき?どっちがいいのかな、と炎の魔法を維持しつつ考えていると、ゼンがやって来た。けど、その方向が明らかにおかしい。どう考えても変。何故か木の上からやって来た。何で??まさか、建物の上を歩いて移動して来たわけじゃないよね!?と混乱しているうちに、彼は軽々と地面に着地した。
「こっちに来るかと思ってたから、その辺りに隠れてたんだ。危なかったら助けようと思って。一応、向こうには魔法で作った人形がいて、そっちに被害があったらすぐに分かるようにしておいたけど。予想が当たって良かった」
と言った。全然気付いていなかった…。やっぱりゼンの魔法はすごいな…、と思っていると、どこか怒っているような表情でゼンは言葉を続けた。
「それよりもさ、見ているこっちがひやひやするような罠のかけ方しないでくれる?!捕まったから良かったけど…。さすがにあれだけ近づかれたら反応するだろうと思っていたら全然反応しなくて…。ジェシカがやられるかと思って気が気でなかったんだけど」
と文句を言われた。いや、あれはただのお試しみたいなもので…。実はあの炎の魔法はわたしの試作魔法みたいなものだった。ここに来る前に作ったはいいものの使ってみるきっかけがなかったのだ。でも、今回のこの件はちょうどいい機会だったから試してみようかな、とずっと考えていて…。もし、発動しなかったとしても、防御の魔法もちゃんとかけてあったから、どちらにしても怪我をすることはなかっただろうし。なので、実行したのだ。だが、それを説明すると、ゼンに呆れたように言われた。
「試すならもっと緊迫していない状況の時に試してよ…。本当に気が気でなかったんだってば…」
「ごめん。…でも、まさかゼンがそんなに心配してくれるなんて思ってなかった。でもありがとう、気にかけてくれて」
そうお礼を言うと、ゼンは一瞬固まった。…が、すぐにまた動き出し、本題に入った。…そう、炎の檻の中にいる犯人らしき人物についてだ。ずっと炎に取り囲まれていたせいか、少し暑そうだ。なので、火力を少し弱くしてあげることにした。その方が、魔法を無駄遣いしないで済むし。逃げる危険性があるので、完全に炎を消すことはできないが。だが、これくらいの温度なら大丈夫だろう。その状態を維持していると、ゼンはその顔に笑みを浮かべた。…非常に怖い。ものすごく迫力がある。それに、口元は笑っていても目が全然笑っていない。氷のような冷たさを感じる。恐らく、本気で怒っている。でも、それを笑顔に変えてしまうのは本当にすごいと思う。一方、犯人の方は見ていて可哀想になるほど怯えている。まあ、あの表情を向けられたら誰だって怖いだろう。何だか犯人が気の毒になってきた。
「一応、確信はしているけど、念のために聞きますね?あなたが、魔法仕掛けを使った犯人ですか?」
その笑顔のままそう尋ねた。犯人は震えながらも、激しく首を縦に振って肯定した。嘘を言ったら何をされるか分からない…、という犯人の心の声が聞こえてきそうだ。…というか、今更だけど、わたしたちが質問してもいいのかな?そういうのって、尋問する担当の人がいそうだけど…。そもそもこの辺りに全く人がいないし、まあいいのかな。わたしは楽観的な結論を出したが、そこで犯人が震えながら驚くべきことを告げた。どうやらその時、ゼンはどこでその仕掛けを手に入れたのか質問していたらしい。それに、彼はこう答えたのだ。
「元々持っていたわけではなくて…!リオナ様をどうにかしたい、と知り合いに相談したのだが、その時にいいものがある、とそいつにもらっただけなんだ!!」
これはゼンにも予想外の言葉だったらしく、わたしたちは顔を見合わせた。だが、放っておけるような話ではないので、今度はわたしがその人に尋ねた。
「その知り合いって一体誰?まあ、答えなかったとしても魔法を使えばすぐに分かることだけど…。面倒だし。あなたに聞いた方が手っ取り早いよね。もしかして、この宮廷にいる人?」
すると、彼はあっさりとうなずいた。まさか、協力者がいたなんて…。
「…あ、そうだ、それともう一つ。あなた、数日前にわたしのことを市井の方で追いかけてきた?」
しかし、その質問には首を横に振られた。…あれ、この人ではないんだ。…ということは、協力者の方?もしかして、協力者の方が危険人物なのかもしれない。なので、わたしは更に、その協力者のことについて尋ねてみた。そこで情報をある程度集めてから、宮廷の衛兵さんたちにその人を引き渡した。もちろん、魔法仕掛けはこちらに渡してもらう。…だが、協力者もどうにかしなければならない。一つ解決したが、また新たに問題が浮上してしまった。
読んでくださり、ありがとうございました。




