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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第39話

その後、祈祷が終わったカノンさんに特別な鍵を貸してもらったわたしたちは、再びリオナ様の部屋に入った。誰もいない。相変わらず、重い空気がこの部屋を支配している。非常に暗い雰囲気だ。…けど、いくら眠りから目を覚まさない人がいるとは言っても、ここまで暗くなることあるのかな?正直、こんなに重苦しい場所に来たことがない。リオナ様の状態以外、何も悪いところはないのに…。それが少し気になったが、ふわふわの床を歩いてリオナ様に近付いてみた。昨日よりも状況は悪化しているようだ。辛そうな表情で目を閉じている。悪夢を見せる魔法仕掛けだから、相当怖いのだろう。本当に、この魔法仕掛けを作った人は悪趣味だと思う。そして、それを使ってリオナ様を苦しめている人も…。許せない、と思った。ついでにわたしは部屋の中を少し見てみることにした。特に深い意味はないけれど。そういえば、昨日は全然部屋の状態を見ていなかったな、と思ったのだ。ゼンは早速、魔法の痕跡探しを始めている。だが、その瞬間、部屋全体が蒼い色に染まり、わたしは驚いた。思わず壁に触れていた手を引っ込めてしまう。この部屋だけが、蒼い世界へと変貌している。それは、美しくて…、どこか寂しい。ゼンもぎょっとしたように魔法を使うのを中断した。思わず顔を見合わせた。まさか、ここまで魔法の形跡が強く残っているとは思っていなかったのだ。それはたぶん、ゼンも同じだろう。恐る恐る周りを見た後で、もう一回魔法を発動させた。その瞬間、また部屋が蒼く染まった。…だが、一つ気になる点がある。それは、床に残っている形跡だ。分かりにくいけど、一筋だけ、濃く染まっている。それはどこに繋がっているのかというと、部屋の出入り口だ。恐らく犯人が、魔法仕掛けがまだ少し動いている間にこの外へ移動したのだろう。…ということは、外に出たら形跡が残っているのかな?

「ねえ、ゼン。この部屋ってその特別な鍵を使えば、どの扉からでも入ることができるの?」

「うん、確かそうだったと思う。でも、詳しく知りたいなら姉さんに聞いてみた方がいいと思うよ」

そう言われたので、戻ってからカノンさんに聞いてみることにした。ついでに、謎の筋についてもゼンに伝えて、他にも怪しい場所がないか、くまなく探すことにした。


しかし、それ以外は何も見つけられず、わたしたちはリオナ様の部屋を後にした。大した情報がなくて残念…。それに、わたしたちが調査している間、誰も来なかったので、話を聞くこともできなかった。でも、一つは手掛かりが見つかったから、いいかな。魔法の痕跡が残っている扉を見つければ、そこから特定できるかもしれない。そんな話をしながら歩いていると、不意にゼンが立ち止まった。向こうの方にある建物を見ている。釣られてわたしもそっちを見ようとした、その時。急にゼンがわたしの手を掴み、素早くその建物の反対方向へと歩き始めた。…!?急にどうしたのか気になったが、聞ける雰囲気ではなかったし、よそ見すると転びそうなほどの速さだったので、さっきの方向に一体何があったのか、見ることもできなかった。少し離れた場所に着いた後で、ようやくゼンは立ち止まり、手を離してくれた。疲れたように、その場に座り込む。聞いていいのか分からなかったが、取りあえず聞いてみた。

「…えっと…、どうかしたの?」

「…両親がいた。あまりうろうろしていると色々言われそうだったから、つい…。ごめんね、急に意味不明な行動をとって。…祭祀家っていう枠に捕らわれないようにする、って決めたはいいけど…、まだちょっと…」

ゼンは苦笑した。わたしは、何も言えなかった。何か言っても、それは何の慰めにもならないような気がした。だから、わたしは何か言葉を言う代わりに、ゼンの隣に座って、彼の手に自分の手を重ねた。ゼンは驚いたようにわたしを見た。でも、構わずにその状態のままでいた。どうか、ゼンの心が少しでも落ち着きますように、と、そう願いながら。まあ、わたしよりもカノンさんがこれをした方がよっぽど効果があると思うけど…。今は、カノンさんがここにいないので、仕方がない。わたしたちはしばらくの間、その場所でその状態のまま、待機していた。手を離すタイミングに非常に困ることになったのだが、取りあえずそのまま時は流れていった。


その後、わたしたちはカノンさんを探すことにした。色々な場所をうろちょろするとまたゼンのご両親に会いそうだったので、限られた場所しか探さなかったのだが、何とか見つけることができた。カノンさんは一人、ぼんやりと庭で花を見つめていた。やはり、絵になる光景だ。わたしたちが声をかけると、カノンさんはふわりと笑みを浮かべた。そして、進捗を尋ねられた。ゼンは「それなり」と一言答えた。すると、カノンさんは突然、いたずらっぽい表情をして、とある提案をしてきた。

「二人とも、私に一つ、いい案があるわ。祈祷している間に思いついたのだけど…」

そう言ってその内容を話し始めたけど…、祈祷の間ってそれに集中しなくてもいいの!?と気になってしまった。だが、案としてはとても良いもので…。確かに、それが成功すればすぐに犯人を捕まえられる。ただ、色々と面倒なことが起きてしまう。基本、魔法の存在は人々に知られてはならない。この国で宮廷につかえている人たちのほとんどは、魔法が今もこの世界にあることは知っているが、それらを信じていない。なので、大々的に使ってしまえば大混乱を招くことになるだろう。ゼンもそれを心配しているらしく、少し考えているようだった。そんなわたしたちにカノンさんは一枚の紙を差し出した。…?

「ふふ、祈祷が終わった後で、直接お会いできたからお願いしたの。そうしたら、大成功だったわ。あの方は、リオナ様のことをとても大切に思っていらっしゃるから…」

カノンさんはくすくすと笑ってそう言ったけど…、これ何て書いてあるんだろう?幾つかの文章と、赤い印が押してあるのだが、皇国の文字なので、さっぱり読めない。まさか、皇国の文字を読む機会があるとは思っていなかったので、全く勉強してこなかったから…。だが、それを読んだゼンは息をのんだ。少し震える声で、その内容を説明してくれた。

「…これ、この国の最高権力者の許可書だよ。この宮廷で、魔法を自由に使用できる許可…」

想定外の言葉に、一瞬、何と言われたのか分からなかった。だが、徐々にその意味を理解して、わたしは絶句した。最高権力者って…、え、この国の帝王ってことだよね。その人が、魔法の自由な使用を許可…。つまり、こそこそと魔法を使わずに済むということ…。ということは、カノンさんの言っていた作戦が実行できるということだ。わたしが思わずカノンさんの方を見ると、彼女は得意そうに微笑んだ。

「たまには、弟の役に立ちたいもの。それに、ゼンがジェシカさんのお世話になっているみたいだし。そのお礼と思ってくれればいいわ」

「…そこまでお世話になってないけど」

ゼンがぼそっとつぶやいたが、カノンさんはにっこりと笑って、

「あら、ゼンはそう思っていないかもしれないけど、私はジェシカさんがいなかったら協会でのゼンの様子を知ることができなかったからねー」

ゼンはそっぽを向いた。珍しい、と思わず笑ってしまったが、にらまれてしまったので、わたしは何とか笑いを抑えて、カノンさんに

「ありがとうございます!」

とお礼を言った。すると、彼女はわたしに許可書を渡してくれた。そして、

「頑張ってね」

と言ってくれた。ここからは、わたしたちが頑張らなければならない。早速作戦の準備をするため、わたしたちは先ほどのカノンさんの案を更に具体的にしていくことにした。

読んでくださり、ありがとうございました。

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