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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第38話

翌日。わたしは朝から宮廷に来ていた。今日はちゃんと、門番さんにちゃんと許可をもらって中に入った。ただ、ゼンやカノンさんがどこにいるのかさっぱり分からない。きょろきょろと辺りを見渡しつつ、回廊を歩く。時々、後ろも振り返りながら…。結局、昨日の夕方にわたしを追ってきた人物が誰だったのかは分からずに終わってしまっていたのだ。なので、警戒しておく必要がある。その人の来ていた服は、かなり高級そうな素材だったので、宮廷にいる可能性も少なくない。というかこのこと、ゼンやカノンさんに言った方がいいのかな?でも、何が目的なのか、今のところよく分かっていないし…。そう思いつつ歩いていると、途中でゼンに遭遇した。案外早く合流できたことにほっとする。けど、ゼンはわたしが意外と早かったことに驚いているようだった。どうやら、わたしが来る時間はそこまで早くないだろうと、のんびりしていたらしい。しかも、その間に色々とあったようで…。朝にも関わらず、少し疲れているようだった。しばらくこの辺りで待っていてほしい、と言われてしまったので、わたしはすぐそこにある庭を眺めて待っていることにした。穏やかな風が吹いて、花びらが雨のように降り注ぐ。すごく綺麗だな…、と思ってみていると、花の雨の向こうからカノンさんがやってきた。非常に絵になる光景だ。わたしがぼーっと見とれていると、カノンさんは微笑して、

「ジェシカさん、おはよう。昨日は宿を見つけられたかしら?ずっと心配していたんだけど…」

「おはようございます!大丈夫です、ちゃんと見つけました。ただ、その前に少し……」

口がすべった。別に言わなくてもいいかな、と思ってたのに普通に言ってしまった。しかも、言いかけて止めてしまったせいで、カノンさんが非常に怪訝そうな表情をしている。しかも、運の悪いことに、そこにゼンまで来てしまった。わたしたちの間に流れている微妙な空気を感じ取ったのか、首をかしげた。そんなゼンに、

「ジェシカさんに昨日のことを聞いていたんだけど、その途中で何かを言いかけて止めてしまって…」

とカノンさんが説明する。それを聞いたゼンが更に怪訝そうな表情をしたので、わたしは慌てて首を振った。

「いや、全然大丈夫だから!そんなに大したことじゃなかったから、別に気にしなくても…」

「要するに、大したことじゃなくても何かがあったってことだよね?…本当にジェシカって素直だね…」

その言葉でようやく気づいた。わたし、何かがあったことを示唆する内容の文章を言っていた…。素直って言われているのに、全く褒められている感じがしないのは気のせいではないだろう…。二人にじっと見られたわたしは仕方なく、昨日、わたしを追ってきた謎の人物について白状することになった。すると、二人は少し硬い表情になって顔を見合わせた。二人は目線で会話していたようだったが、少ししてうなずきあう。そして、

「ジェシカ、それ、相当危険じゃない?だって、基本身分が高い人って強盗の危険があるからわざわざ自分で市井には行かないよ?それなのにそいつは自らジェシカを追いかけたわけだよね?どう考えたって危ないよ…」

カノンさんも同意するようにうなずいた。そして、宮廷にいる間も一人にならないよう、何回も念押しされてしまった。そんなに…?と思ってしまったけど、たぶん、それだけ危険だということなのだろう。ゼンも、わたしが市井と宮廷を行き来するときは絶対に送り迎えする、と宣言した。どうやら、わたしは大したことがないと思っていたけれど、本当はかなり大事だったようだ…。

その話が終わった後で、ようやく本題に入る。取りあえず今日は、昨日魔法の気配が感じられた場所に行ってみるということで意見が一致した。それと、一応リオナ様の方にも。ただ、昨日の場所は誰もいない時にしか入れないようで、それだけは祈祷の時間を待つ必要があった。午前中にも祈祷はあるらしく、その時間になってからその場所に行ってみる。また、昨日の謎の人は来るのかな?と思ったが、今日は来ないようだった。先ほどまでは賑やかだったのに、祈祷の時間だけは非常に静かになる。さわさわと、風で木々が揺れる音だけが聞こえている。そんな静かな空気の中で、わたしたちは魔法の花で、そのあたりに残っている魔法の痕跡を探し始めた。…と、早速ゼンが何かを見つけたようだ。何の躊躇もなく、部屋に入っていく。…無人とはいえ、もうちょっと警戒した方がいいような…。そう思いつつも、わたしも中に入ってみることにした。そこにあるのは、簡素な部屋。あるのは、机と椅子と本棚と書類くらい。必要最低限のものしか置いていないようだ。そんな部屋の中に、一つ、まるでそこにだけ絵の具が落ちたかのように蒼く染まっている場所がある。それこそが、魔法関連の何かが使われた証だ。更に魔法を強くさせると、さっきは見えていなかった、薄い痕跡も現れてきた。それは、この上の階に続いているようだ。わたしたちはそれに釣られて思わず上を見上げた。だが、そこには天井が広がっているだけだ。ゼンがこの建物の構造を思い出そうとしている間に、わたしは更に調べを進めることにした。蒼い色を追ってみたが、この外には出ていない。…つまり、この部屋でだけ使われたということ…?わたしが考えていると、ゼンはようやくこの上の部屋を思い出したようだ。

「たぶん、この上ってリオナ様のお部屋じゃないかな?しかも、今使っている…。たぶん、このまま目覚めなかったらまた数日後に移動することになるだろうけど…」

予想外の事実に驚いた。…わざわざリオナ様の近くでやったということは、どう考えても故意にやったということだ。あの魔法仕掛けは、どこで発動させたとしても問題はない。だが、対象の近くでやればやるほど強い効果を得ることができる。そして、効果を更に強めるためには、何回もその魔法を発動させればよい。ただ、非常に体力を削ることになってしまうが……。それをゼンに伝えると、

「ねえ、ちょっと待って。もしかして、昨日会った人ってここから出てこなかった?しかも、その直前に魔法の気配がした…。すごく怪しくない?何かしらの形で関わっているよ、あの人」

そもそも、この部屋はこの辺りのエリアに入れる人ならば、出入り自由なのだそうだ。なので、そこまで管理は厳しくない。しかも、あの時間はほぼ全員が祈祷に言っていて、人は全くいなかった。…つまり、ここに入るには絶好の機会だったというわけだ。…ただ、問題は、どうしてその人が魔法仕掛けを使ったのか、ということだ。前に言っていた派閥の問題なのかな?そこらへんはよく分からない。大体、あの人の名前も身分あたしたちは全く知らない。それを調べなければならないのだが…、ここに勤めている人の人数はかなり多い。見つけることができるかな、という不安がある。まだ、分からないことの方が多い。ゼンはため息をついて、

「取りあえず、リオナ様のところにも行ってみようか。何かヒントがあるかもしれないし。それに、さっさと抜け出さないと人が戻ってくるだろうし…」

わたしはその言葉にうなずき、取りあえずその場を後にした。

読んでくださり、ありがとうございました。

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