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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第37話

ゼンは少しの間、何かを考えるように黙っていたが、少しして、一瞬外に行く、と言って部屋を出て行ってしまった。取りあえず、今は放っておくことにする。…というか、きつく言い過ぎたかな?ネガティブな発言にちょっと苛立って、かなり厳しい言葉を言ったような気がするけど…。今になってそんなことを心配しておろおろしていると、カノンさんはわたしを落ち着かせるように、穏やかな声で言った。

「ゼンは、きっと大丈夫。あれくらい言わないと、効果はないでしょうし…。それに、あなたはゼンと同じ魔法使いだもの。その分、深く響いたはずよ?」

そう言ってくれた。そうだといいんだけど…。まだ微妙に不安が残っているわたしに、カノンさんはお茶を淹れなおしてくれた。それは、先ほどの彼女の言葉のように、温かい。まるで、光のような…。そんなことを考えながら、カノンさんとお話ししてゼンが戻って来るのを待った。十分ほどして、ようやくゼンが戻って来た。その手には、何故かあのお守りを持っている。…?どうしたのかな、と思っていると、ゼンは、

「これ、どこかに捨てようかと思ったんだけど…。誰かに拾われて悪用されたら困るから…」

そう言うと、魔法の花を取り出した。…まさか、ゼンは。そう思ったが、わたしの予想は見事に当たってしまった。その場に氷が現れ、部屋が急にひんやりとした空気に包まれる。そして、その氷を何枚もの刃に変えて…。ゼンは空中にお守りを放り投げた。その瞬間、出来上がっていた氷の刃がそれを細かく切り裂いて。細く、小さくなったお守りが花びらのように舞った。かなり大胆なことやったな…、とわたしは思ったが、ゼンは何故か満足そう。吹っ切れたような表情をしている。悩みが消えたならいいのかもしれないけど…。カノンさんはどうやら魔法を見ることができたのが嬉しかったらしく、目をきらきらと輝かせている。…まあ、いい…のかな?たぶん、わたしが同じことをする必要があったとしたら、炎を使って一気に燃やすだろうし。あまりそれと変わりはないのかもしれない…。

「さて、お守りを壊したし、本題に入るね。今のところ、魔法仕掛けのある場所は分かっていない。でも、それを見つけないと、何も解決できない。だから、強硬手段を取ってでも探さないといけないんだけど…」

強硬手段…。それ、大丈夫なのかな。さすがに強引すぎる方法を取ったら、協会の方に苦情が入りそうな気がする。わたしはそこが少し心配だったが、取りあえず話の続きを聞くことにした。

「ただ、それで見つからなかった場合、大問題になるから、上手く犯人だけをおびき寄せるようなことをしたいと思ってて。何かいい案ないかな…」

良かった、強引すぎることはしないらしい。本当に良かった。ゼンはそういう時に限って、何故か非常に大胆なことをすることが多いから。うーん、どうしようかな。何かいい案…。でも、ゼンが祭祀家の制約をほとんど気にする必要がなくなったのならば、かなりできることは多くなったはずだ。そういうことも生かした作戦…。わたしたちは真剣に考えたが、なかなか案が出てこない。そもそもどの魔法を使うかによって、できることもかなり違ってくるし。そちらを中心に考えた方がいいのかな。そんなことを考えていると、カノンさんが質問してきた。

「それって、探している物がある場所や持っている人を一度で見つける方法はないのかしら?それだったら、私がどうにか機会を作って、その間に調べることができると思うけど」

なるほど…。確かにそれは良さそう。ただ、一人の魔法がどれだけの範囲に届くのかが分からない。もしも宮廷全域に届かなければ、違う場所からもやる必要があって。一回だけでは済まなくなるだろう。でも、考え自体はすごく良さそう。何か良さそうな魔法、あるかな?その辺りはゼンの方が詳しいので、わたしはゼンの方を見たが、

「ジェシカもちゃんと考えてよ」

と言われてしまったので真面目に考えることにした。本当に何かあるかな。分からない。わたしは考えこんだ。…それか、目的のものを探すのではなく、魔法の気配を探る魔法、というのもありかな?皇国にいる人で魔法を使っている人はいないはず。…そういえば、ゼンと二人で探索していた時、ゼンが魔法の気配を感じる、って言ってたっけ。あれ、一体何だったんだろう。…だが、取りあえずそれは放っておいて、魔法を検知する魔法があるかどうか思い出してみた。…が、特に思いつかない。一応、魔法の授業で全部の魔法を覚えさせられたけど、使わない魔法はかなり忘れている。そこで、ゼンにそれを尋ねてみると、

「あるんじゃない?確かにそれを使えばできると思うし、痕跡も見つかるだろうけど…。かなり範囲って狭くなかったっけ?というか、魔法の種類くらい覚えておいた方がいいと思うんだけど」

と言われてしまった。…おっしゃる通りです。でも、魔法に関しては覚えていられる方がすごいと思う。けど、こういう時に不便だし、協会に戻ったら復習しようかな…。

「でも、それを使えばどうにかなるかも…。使われたかもしれない場所を特定して、そこで魔法を使えばそこで魔法仕掛けが使われたことが証明できるし。問題は、どうやって特定するか…」

「そのことなんだけど、ゼン、さっき、魔法の気配がしたって言ってたよね?あの辺りで一回使ってみる?そうしたら何か分かると思うんだけど…、どうかな?」

そう言うと、ゼンはその時の違和感を思い出したのか、ちょっと険しい表情になったが、うなずいた。だが、わたしたちが早速行こうとすると、カノンさんに止められてしまった。

「ちょっと待って。二人とも、普通に人の往来があるところで魔法を使うつもり!?たぶん、それをしようとしたら二人とも止められるわよ!それに、ジェシカさん、そろそろ宿を探さないと野宿することになるんじゃないかしら?」

そう言われて時計を見ると、確かに時間がまずい…。驚いたことに、既に夕方と夜の境目あたりの時間になっていた。…うーん、明日の方が良さそう。ちゃんと対策を立ててからやった方が失敗なくできるだろうし。ゼンも同じことを思ったのか、うなずいた。けど、わたしは取りあえず宿探しをする必要があるので立ち上がった。

「それじゃあ、今日はお暇させていただきます。また明日!」

そう言って、急いで外へ出た。迷路のような宮廷をどうにか抜け出し、町に出る。既に空は暗くなってきていた。…宿、見つかるかな。そう思いながら歩いていたのだが、途中であることに気付いた。…誰かがついてきているような…?でも、何でだろう?わたしを追うことで何かその人にとって得することってあるのかな?そもそもわたし、今日皇国に来たばかりなんだけど。そう思っている間も、その足音は聞こえ続けている。…どうしようかな。どこかで撒きたい。なので、取りあえずわたしは近くの細い路地に入った。そして、その直後に魔法を使い、一時的に姿が見えなくなる魔法を使った。こうすれば、相手に気付かれることはない。透明な状態でそこで待っていると、少ししてから布で顔を覆った人が路地を覗き込んできた。…この人が、追ってきた人?予想外だ。顔を隠しているからよく分からないけど、明らかに着ている物が、庶民が着るようなものではない。その人は、しばらく路地をじっと見つめていたが、しばらくするとあちこちを見渡し、わたしの姿が消えてしまったことに対してか、ため息をついた。諦めたように道を戻って行く。…が、その瞬間。わたしは、何かを感じた。…この場所では感じられないはずの、独特の気配。それは、紛れもない魔法の気配だった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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