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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第33話

取りあえず宮廷の中を探索することになったわたしとゼンだったが、一つ疑問に思ったことがあった。それは、ゼンが祈祷の儀式に出なくても良いのか、ということだった。普段は協会の方にいるとはいえ、祭祀家の人だって言うし、出た方がいいんじゃないかと感じたんだけど…。でも、ゼンは全く気にしていない様子だ。むしろ、それに関わりたくない、という感じさえする。時々、祭祀に関する部屋や物品が置いてある場所を通っても、あまりそちらには目を向けない。見たくもないようだった。まあ、カノンさんは強制していなかったし、別にいいのかな?わたしはそのことについて、深く考えないことにした。ゼンにはゼンの事情があるのだろう。そう思いつつ、ゼンの説明を聞きながら歩いていた、その時だった。不意に、前を歩くゼンが立ち止まる。そして、辺りを注意するように見渡した。どうしたのか、声をかけようとしたけれど、何やら集中しているようで、話しかけられなかった。しばらくして、ようやくゼンが、小さな声でこう問いかけてきた。

「ねえ、何か…、感じない?本当にわずかなんだけど、魔法の気配みたいなもの…」

そう言われて神経を集中させてみたが、残念ながらわたしには何も分からない。何かおかしいような気がするけど…。それが何なのかはよく分からない。そもそも、そういう気配を察知するの、苦手だし。そういうのは断然、ゼンの方が得意だ。しかし、気配を探っている間にそれは消えてしまったらしく、ゼンは諦めた。

「今の、絶対に魔法の気配だったよ。…でも、おかしいな。ここには、魔法使いは僕たち以外いないはずなのに。でも、僕らが魔法を使ったわけじゃないし、それならすぐに気付くだろうし…」

不思議そうにぶつぶつとつぶやく。でも、ゼンがわずかでも何かを感じたというのなら、たぶんどこかで魔法が使われたのだろう。けど、今の状況では明らかにおかしい。なぜなら、ここは皇国だ。魔法を承認していないのに、堂々と魔法を使う人なんてなかなかいないだろう。それなのに魔法の気配がしたのは、一体…。二人してその場で考えこんでいた、その時だった。急に近くで物音がして、誰かがわたしたちの近くにやって来た。わたしたちは驚いてそちらの方向に向いた。そこにいたのは、いかにも身分が高そうな人。服が明らかに高級そうで、身なりもしっかりしている。しかし、相手もわたしたちがここにいると思っていなかったらしい。驚いたように固まった。

「な…、何だね、君たちは。この辺りは君たちのような子どもが入っちゃならんぞ。さあ、帰った帰った」

そう言ってわたしたちを追い払う。ゼンは一瞬、その人を探るような瞳で見つめたが、すぐに視線を逸らし、何も言わずにわたしの手を引っ張ってその場から離れた。そして、彼の死角になるような隙間に隠れ、そっとその様子を伺おうとする。…それはいいんだけど。何か、距離が近い気がするんですけど!!まあ、隠れている場所が狭いスペースだからしょうがない。それは分かっている。それに、こうして距離が近くなるようあことは何回もあった。それなのに、何で今さらこんなに動揺しているのか、自分でもよく分からない。何なんだろう、一体…。しかし、ゼンは全く気にせず、男性の方を見ている。なので、わたしは距離の近さを頑張って気にしないようにしてそちらを見た。一方、男性はきょろきょろと辺りを見渡した。誰もいないのを確認すると、ほっとしたような表情をする。そして、どこかへと立ち去って行ってしまった。その後でわたしたちもその隙間から出た。その瞬間、非常に安心した。しかし、それがどうしてなのかはやはり分からない。自分の感情なのに…。

「今の人、一体何なんだろうね?今は祈祷の時間なのに、あれくらい偉そうな人が出てないのってどう考えてもおかしくない?」

ゼンは意味が分からない、というようにそうつぶやいた。その言葉に、わたしも思考を切り替えた。謎の感情は、取りあえず横に置いておく。わたしは先ほどの人が去って行った方向を見やった。既に彼の姿はそこにない。誰だったんだろう、一体…。それに、もし今度会った時、何て言えばいいか分からないし…。二人でその場で考えていた、その時だった。

「ああ、二人とも、そこにいたのね!少し前に祈祷が終わって、その直後からあちこちを探していたのよ!まさか、こんなところに来ていたなんて思ってもいなかったわ」

カノンさんが向こうからやって来た。先ほどとは違う、白の服を着ている。終わった直後から探していたってことは…、もしかして、祈祷の時の服なのかな?どうでもいいことを考えていると、ゼンが、

「あ、姉さん。ちょうどいいところに。聞きたいことがあったんです。今回の祈祷に来ていらっしゃらなかった方って分かりますか?」

「ごめんなさい…。分からないわ。祈祷の方に集中していたし、そもそも祈祷する人は、あの建物の中には入ってはならないから…。直接顔を見るわけではないのよ…。申し訳ないわね」

その言葉で、そういえばそうだった…、というような表情をするゼン。どうやら、さっきの人がかなり気になっているらしい。確かに、不思議だったし、挙動不審でもあったけど…。そんなに?いつか、またどこかで会えるかもしれない、とゼンを慰めていると、カノンさんが、

「そういえば、二人はどの辺りまで回ったのかしら?ここはかなり広いし…。ゼンも、知らないところの方が多いんじゃない?」

そう尋ねた。ゼンは、素直にうなずく。珍しいところを見たような気がする。素直じゃない、って言ったら怒られそうだけど、段々時が経つにつれてゼンが素直じゃなくなってきたように感じていたので、少し意外。まあ、それを言ったら怒られることは目に見えているので、何も言わなかったけど。でも、わたしがそういうことを考えていたのが何となく分かったのか、一瞬こっちを見られた。勘が鋭い…。わたしは、取りあえず知らないふりをすることにした。けど、相当怪しまれているらしく、しばらくじっとわたしの方を見ていたが、カノンさんが「こっちよ!」と言ったため、カノンさんの方へと目を向けた。わたしは一安心した。


「こっちが宝物殿で、向こうが祭祀の場所。…これで、一通り回ったかしら」

しばらく宮廷中を歩きまわった後で、カノンさんはそう言った。普段は行けない、という場所にまで行ったせいか、相当時間がかかった。そもそも、この場所は広すぎる。たぶん、行ったことはないけど、ヴェリエ国の王宮よりも広いと思う。でも、皇国にしかないような場所もあって全体的には面白かった。こんな機会は二度とないだろうな…、と考えていると、カノンさんが不意にこそこそとわたしたちにこう言った。

「そうだわ。二人とも、リオナ様のところへ行く?ジェシカさんは今日来たばかりだからお会いしていないでしょうし、ゼンも、前に行った時はすぐに他の人が来たから、そこまで長くいられなかったでしょう?」

そう言われて、本来の目的を思い出した。そういえば、一番の目的はそれだ。魔法仕掛けを、どうにかすること…。わたしとゼンがうなずくと、カノンさんは微笑み、「ついてきてちょうだい」とわたしたちをその場所へと案内してくれた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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