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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第31話

部屋に帰った後、わたしはニーナに、皇国に行くことになったことを伝えた。けど、ニーナはあまり驚いていない様子だ。どうやら、何となくそうなることを予測していたらしい。一瞬、ニーナは予言者なのかと思ってしまったが、彼女曰く「ただの勘」だそうだ。勘にしては鋭すぎる気がするんだけど…。しかも、すごく当たりやすい。わたしは不思議に思いつつ、取りあえずその支度をすることにした。すると、ニーナが、

「今度こそ、そのお守りを忘れないようにして下さいね?それを忘れたら、あなたが皇国に行くことの意味が半分ほど失われることになるでしょうから。くれぐれも、お気をつけ下さいね?」

と言われてしまった。一言余計だけど、反論できない…。そもそも、わたしが皇国に行くことになった原因の半分はこれを渡し忘れたことだし…。わたしは無言で、お守りをかばんの中の、分かりやすい場所にしまった。こうすれば、かばんを開いた時に毎回思い出せるはず!これなら完璧なはず。たぶん。それと、自分なりに調べた、魔法仕掛けや皇国に関する資料を中に入れる。まあ、これだけ調べても恐らくゼンの知識量には勝てないだろうけど。何か分からないことがあったら辞書代わりに使えるだろうし。それに、備えあれば憂いなし、って言うし。無駄になることはないはずだ。なので、持って行く。そんな感じで準備していると、あっという間にその作業が終わってしまった。一応、出発は明日なので、急ぐことは全くないし、時間も余裕なんだけど…。何となく落ち着かない。一応、何となく調べたけど、皇国ってどんな場所なのかな?と非常に気になっている。わたしが部屋をうろうろしていると、ニーナは少し呆れたらしく、ため息をついた。そして、いきなり話を始めた。恐らく、うろうろしているわたしが鬱陶しいから、どうにかしたかったのだろう。

「私は、随分昔に一度だけ皇国に行ったことがあったのですが…。ある意味あの国はすごかったですよ。統率されている感じが…。町の建物は、全て同じ大きさで、直線状に並んでいるんです。あの光景は、今でも忘れられないですよ。…ただ、ヴェリエ国などと比べて自由がそこまでない国なので、少し息苦しく感じるかもしれません」

そんな話をしてくれた。統率された国、か…。少し不安になるが、重要な情報だ。かばんに入っていた資料を取り出し、その端っこにニーナのその言葉をメモしておいた。そこで、ふとある言葉が目に留まった。

「ねえ、ニーナ。それじゃあ、この、神の御加護って何?本当に神様がいらっしゃるってことなの?」

それは調べていて一番気になったことだった。その力によって皇国は守られていて、民に信仰されているみたいだけど…。その姿を見た人はもちろんいないみたいで、その真偽はよく分かっていないみたい。ただ、この神様という存在はこの国に暮らしている人々に一番影響を与えているお方らしく、だからこそ、他の力は受け入れられていないようだ。つまりそれは、魔法も承認されていないことを指している。大丈夫かな、この国…。考え方を否定するつもりはないけど、ちょっと怖い。一つの考え方だけしかない、という状況は、時に大きな間違いへと進むことがある。他の人たちを滅ぼそうとしたり、虐げたり…。そんなことを考えていると、ニーナは少しうつむいた。

「ええ…、そうですね。実際、しばらくの間この国は他国から攻め入られていません。…まあ、それはただの偶然だと思いますが。ですが、そのことが、国内で神の存在を強調させています」

神がいるから、戦争が起きていないのだと…。そもそも、最近は戦争が起こること自体が非常に少ない。つい最近起きたのは、北の方にある大国での内戦くらいで…。それも、五年ほど前。すぐに終戦したので、そこまで大きな混乱は起こらなかったみたいだけど…。

何となく皇国について知ることができたわたしは、その後はひたすら皇国に関する本を読んでいたのだった。


翌日。皇国へ出発する日だ。微妙に不安だけど、取りあえず出発しなければならない。部屋を出る前、もう一回確認したので、特に忘れ物はないはず。ちなみに、皇国へどうやって行くのかというと、協会長さんが用意してくれた、特別な魔法の花を使う。本来、転移魔法は自分の行ったことがある場所に行くときにしか使えない。でも、例外はある。着地点などを細かく計算し、それらの情報を魔法の花に読みこませると、行ったことがない場所にも行けるらしい。ただ、普通の転移魔法に比べると、違う場所に行ってしまう可能性が高いらしいけど…。大丈夫かな。

「もし変なところに着いたら、取りあえず自分の知っている場所に転移するか、周りに人がいたらその場所を聞いてください。恐らく、大丈夫だと思いますが…。気をつけて下さいね」

協会長さんは、微妙に不安になることを言ってくれた。一応、花には、「皇国の宮廷の前」という情報が組み込まれているみたいだけど。どうなることやら…。だが、怖がっているわけにもいかないので、わたしはその花を振った。その瞬間、金色の光が溢れてきて…。視界が真っ白になった。


しばらくすると、再び真っ白な世界に色が現れてきた。まるで絵具で少しずつ塗られていくように…。そして、気付くとわたしは見知らぬ場所にいた。…けど、ここ、明らかに宮廷の前ではない。協会長さんの話だと、その場所には壮麗な門があるのだという。でも、ここは明らかに屋内だ。どう考えても、外ではない。周りに人もいないし…。近くに窓があったのでそこから外を見てみると、少し先に門があった。…もしかして、本当はあの前に到着する予定だったのかな?要するに、少しだけ着地点がずれた、と…。

「まあ、中に入れたし、いいかな?取りあえずゼンを探そうかな…。どこにいるんだろう?」

そもそも、勝手に動きまわっていいのかな。ここ、宮廷だよね?宮廷って勝手に入っちゃっていいのかな。でも、今更外に出るわけにもいかないし。…まあいいか。誰かに見つかったら、その時はその時だ。楽観的な結論にたどり着いたわたしは、宮廷内の探索を始めることにした。取りあえず、右に行ってみる。そこには、綺麗な庭園が広がっていて…、丁寧に整えられている。季節の花が満開を迎えている。それに一瞬見とれていたが、本来の目的を思い出し、慌てて別の場所を探すことにした。この先は、庭園しか存在していない。

再び元の場所に戻り、今度は左に行ってみることにした。こっちにはたくさんの部屋があり、人の気配がする。どこかに誰かがいるんだろうけど…、急に開いたらどうしよう?それが少し不安だったので、そこは素早く通り過ぎることにした。そこを抜けると、今度はわいわいと賑やかな場所に出た。こちらも人の姿はないけれど…。今にも誰かが出てきそうな雰囲気だ。絶対にこれ、人に遭遇する!!それを避けるため、わたしは脇にあった狭い道に入ることにした。こっちなら、人は来ないよね、きっと!そう思いつつ、その道をまっすぐ進む。こちらは別の場所に繋がっているようだ。ずっと向こうは行き止まりになっていて、そこに曲がり角がある。わたしがまっすぐにその道を進んでいた、その時だった。

「…………………!」

「…、………」

不意に、話し声が聞こえてきた。どうやら、この近くに誰かいるみたい。でも、どこから聞こえてくるのかよく分からない。まあ、でもどこかの部屋からの声かな。こんなに狭い道を抜けた先に人がいるわけない。そう、思っていた。

だが、そういう時に限って、こういう予想は外れるものだ。

角を曲がったその瞬間、わたしは誰かとぶつかった。その痛みで、思わず目を瞑る。非常に痛い…!でも、誰だか分からないけど、ぶつかったんだから謝らないと!そう思って目を開けたわたしは、そこで動きを止めた。それは、ここで会うとは思っていなかった相手。向こうも、驚いたように固まっている。

「ゼン…!?え、待って、何でここに?」

「いや、それはこっちのセリフだから。協会長が誰か人を寄越すって言ってたけど、どうやってここに入ってこれた…?!」

予想外の再会をしたわたしたちは、しばらくその場でお互いを見合うことしかできなかった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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