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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
3章 皇国の魔法使い
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第30話

久しぶりにジェシカ視点のお話です。

「あああああ!!」

わたしは一人、部屋で大声をあげていた。今、わたしの目に映っているのは、ゼンのお守り。…そう、この時になってようやくわたしはその存在を思い出したのだった。どうしよう、どうしよう……っ。すっかりその存在を忘れていた。ゼン、ごめんなさい…。ここにはいないが、心の中で謝る。だが、あわあわしていてもどうしようもない。なぜなら、既にゼンは皇国に行ってしまった後だから。このお守りがなかったせいでゼンに何かあったら…、と考えるとすごく怖い。わたしは意味もなく、部屋中をうろうろと歩きまわった。こんなことをしてもどうにもならないのは分かっているけれど、それでもぐるぐるしてしまう。こんな時に限って、ニーナはどこかに出かけちゃってるし…!協会のどこかにいるのは分かっているけど、そもそもこの場所が広いので、見つけるのに時間がかかる。下手すると、どこかですれ違う可能性だって…。ああ、本当にどうすればいいんだろう!?わたしはお守りを持ったまま、ベッドに飛び込んだ。こんなことをしている場合じゃないけど、言わば、現実逃避だ。だが、他のことを考えようとしても、ゼンのことや、本で読んだ皇国のことばかりが頭に浮かんでくる。思わず、わたしはつぶやいた。

「…ゼン、どうしてるかな?」

資料室での、ゼンの様子が頭に蘇ってくる。大丈夫かな、上手くやっているかな…。ここから皇国まではかなり遠いし、関係ないと言えば関係ないんだけど…、妙に気になってしまう。と、その時だった。

「最近、元気がないと思っていたら、ゼンさんのことを心配していたんですか?何だか意外ですね…」

いきなり、ニーナがそう話しかけてきた。え、いつの間に帰ってきてたの!?驚いて、思わず飛び起きた。見ると、ベッドのすぐそばにニーナがいて、言葉通り、驚いているような様子でわたしを見ていた。…驚かせるの、本当にやめてほしいんだけど。というか、元気がない、って本当に…?いつも通りだと思うんだけど。けど、ニーナはわたしが納得していないのを読み取ったのか、椅子に座ってから言った。

「だって、最近のジェシカは本当に変ですよ。ぼーっとしていたり、話しかけられても気付かなかったり…。それに、魔法の実習の時だって、いつもよりも勢いが二割引きくらいになってると思いますよ?」

二割引き……。お店の値引きみたいな言葉を使わないでほしい…。微妙に複雑な心情になったが、思い返してみると、確かにそうかもしれない。この前、ギルさんにも最近様子がおかしい、って言われた。その時も本当に自覚がなくて、気のせいだろう、ということで終わらせたけど…。…でも、何でだろう?ゼンがいないだけで二割引きって…。ゼンってそこにいるだけで魔法の力を上げるような能力でも持っているのかな…?よく分からない。わたしが「???」としている様子を見て、ニーナはため息をついた。少し呆れているみたい。

「まあ、個人的にかなり気になる案件ですが、それは一旦置いておくとして…。その水色の花みたいな物、どうしたんですか?すごく大事そうに持ってるようですけど…?」

「あー、これ?ゼンの落とし物。届けようと思ってて、ずっと忘れていたんだよね…。どうしよう。ゼンは今皇国だから、届ける手段がないんだよね…。でも、これ、ゼンの大事な物だから…。早く返さないと!」

「そうなんですか。…ですが、何で人の大切なものを返し忘れるんです?そこは普通、忘れずに覚えておくことだと思うのですが?」

おっしゃる通りです…。ごめんなさい…。いつも使わないところにしまっておいたのが、一番の原因だ。わたしがしょんぼりしていると、

「それなら、協会長さんのところにでも行って来たらどうです?そしたら、何かいい案を考えて下さるかもしれませんよ?まあ、そもそも話を聞いて下さるか分かりませんが…。謎の植物大量発生事件の後、非常に忙しいようですし」

と、ニーナが提案してくれた。うーん…、ダメもとで行ってみようかな。無理そうだったら、ギルさんにも相談してみよう。それか、色々な魔法を知っている人に聞いて、荷物を送るような魔法があるか聞いてみてもいいかな。そう思ったわたしはニーナにお礼を行って、早速協会長さんのところに行くため、部屋の外に出た。


協会長さんの部屋へ向かうため、廊下を歩いていると、幸運なことにその途中で、彼に会うことができた。けど、協会長さんは何か手紙のようなものを読んでいる。どうしよう、読み終わるのを待っていた方がいいだろうけど、いつ読み終えるかな…?そう考えて、その辺りをうろうろしていると、協会長さんがこちらを見ずに、

「どうしたんですか、ジェシカ?落ち着かない様子ですが、何かありました?」

え、気付いていたんだ!?そのことに驚いた。手紙の方に集中しているみたいだったから、絶対に気付いていないと思っていたんだけど…。まあ、いいか。細かいことはあまり気にしないことにする。

「実は、この前、ゼンの大切なものを拾ったんですけど、渡しそびれていて…。だから、ゼンに届けたいんですけど、物を人に送れるような魔法ってありませんか?」

「もちろん、ありますよ。…ですが、それよりももっといい方法があります。それに、タイミングも良いですし…。良かったですね、ジェシカ」

はい???良かったですね、って言われても、何のことだかさっぱり分からないのですが!?それに、もっといい方法って一体…。その言葉は魅力的なもののはずなのに、何故か非常に嫌な予感がする。その予感にわたしが少し身構えていると、協会長さんはわたしを安心させるように微笑を浮かべた。だが、その後で彼の言った言葉に、わたしは嫌な予感が的中したことを悟った。

「要するに、あなたが皇国に行って、直接ゼンにそれを渡せばいいんですよ。ああ、それと、ついでに魔法仕掛けもどうにかしてきて下さい。今さっき、彼からの手紙が届いて、そこに魔法仕掛けに関する情報が書いてあったんですよ」

そう言って、協会長さんはわたしに、さっき読んでいた手紙を渡してきた。わたしは、それを受け取り、手紙を読んだ。紙には、ゼンのお手本のような綺麗な文字が並んでいる。

『魔法仕掛けは、どうやら、皇国の皇女でいらっしゃるリオナ様に使われたようです。ただ、それがどこにあるのか分かっていないので、引き続き調査するつもりです』

と…。うわ、大変そう…。と、ゼンに同情しそうになったが、協会長さんはどうやら、わたしも皇国に行かせたいらしい、ということを思い出し、気が重くなった。わたしは、皇国に行くのに自分がふさわしくない、と証明するため、必死に言った。

「そもそもわたし、皇国や魔法仕掛けに関する知識、少なくともゼンよりはありませんよ。わたしが行っても、あまり意味がないのでは?」

「そうでしょうか?前に資料室で、魔法仕掛けや皇国に関する本を読んでいたと思ったのですが…。見間違いでしょうか?」

…そういえば、資料室でゼンと協会長さんの話を聞いた後、必死で読んでいた。というか、何でばれてるんだろう?どこからばれたんだろう?どうやら協会長さんは、それを確信しているらしい。見間違いでしょうか、と言いつつ、その言葉の裏には、そんなわけないですよね、という意味が込められている。それにわたしは気付いていた。協会長さんには絶対に論戦で勝てなさそうな気がする…。そんな気がした。

「それに、ゼンも誰かと一緒にいる方が落ち着くでしょうし。彼のためにも、行って頂けませんか?」

その言葉で、わたしは再び皇国に行く前のゼンの様子を思い出した。あの時資料室で、ゼンは行きたくない、と切実に、でも、どこか諦めたような口調で言っていた。そのつぶやきを、誰にも聞かれないまま。それが何故か、鮮明に記憶に残っている。もしも、わたしが少しでもその状態をどうにかできるならば。それなら、行ってみてもいいかもしれない。そう思った。

読んで下さり、ありがとうございました。

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