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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
2章 魔法の本
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第25話

わたしが二つ目の言葉は何だろうな、また容赦ない言葉を言われるのかな…。めちゃめちゃ怖い…。こんなにゼンを怖がったことって一度もない気がする…、とか本当に色々と考えていると、早速ゼンが二つ目の話を切り出した。

「じゃあ、二つ目。取りあえず、ジェシカが無事で良かった…。ジェシカは炎の魔法が得意だから、光で照らすことは可能だろうけど、急に暗がりから何かが出てきたら対応できないだろう、ってすごく心配してた」

そう、本気で言われた。二つ目でも怒られるのかな、と考えていたので、正直予想外の言葉だった。でも、どうやらわたしは、相当ゼンに心配と迷惑をかけてしまったようだ。今回のことは、最初から最後まで色々な意味で申し訳ない…。けど、その後でゼンは独り言のようにこう言った。

「本当はジェシカが戻って来たら、今までの分も含めて色々と文句を言いたかったし怒ろうと思ってたんだけどね。でも、ジェシカが本の世界から戻ってきたのを見たら、本当に良かったな、って思ったし、失わずに済んで安心したから。だから、不本意だけど、これだけにしておく」

ゼンはちょっと困ったような笑みを見せた。非常に珍しい。いや、珍しいどころか初めて見た気がする。…何か可愛いかもしれない、と思わずじーっとゼンを見ていると、見つめすぎたせいか、そっぽを向いてしまった。…残念。すごく珍しくて可愛かったのに。なのでそれを言うと、不満そうな表情をされた。そこで昨日の話を思い出す。そういえばゼン、可愛いって言われるの嫌なんだっけ。忘れていた。しかし、気付いた時には既に遅く、今度こそゼンは怒ってしまったようで、その日はわたしに二度と話しかけてくれなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日。わたしたちは森に戻ることにした。持っている荷物は、本の分だけ少し重くなっている。本の仕掛けは完全に解いたものの、念のために荷物の一番下にしまってある。行きと同じように水上車に乗った。ゼンはまた本を読んでいる。皇国から持って来たという本。しかし、難しいのかその本を読むのが嫌なのか、そのスピードは驚くほどゆっくりだ。わたしは特にやることがなかったので、ゼンがどれくらい読んだのかそのページ数を数えてみた。その結果、そこそこ時間があったはずなのに、たったの一、二ページしか進んでいなかったということが分かった。それでも読もうとしているんだから、やっぱりゼンってすごいなと思ってしまう。駅に着くと、ギルさんがそこで待っていてくれた。…抜けだしてきて大丈夫なのかな?そう疑問に思ったが、ギルさんはかなりのんびりとしている。しかも、迎えに来てくれたけど、最初の時のような馬車はない。なので、わたしたちは歩いて森まで戻った。その途中で協会の様子を尋ねてみると、ギルさんはあっさりと言った。

「ああ、その件については今日の真夜中に終わった。そのせいで皆今寝てると思うから、静かに入った方がいいかもな…。かなり長い闘いだったし。そっちもご苦労だったな」

「…今回、主に苦労をかけたのはジェシカだけどね。おかげでこっちはひやひやさせられたよ…」

…ごめんなさい。反論が全くできないのがちょっと悔しい。まあ、自業自得なんだけど…。そんなわたしたちの様子にギルさんはひたすら楽しそうな表情をしていた。そんな彼に、ゼンが早速そこでの出来事を語り始め、わたしは後で絶対に怒られるということを予感した。戻るのが非常に憂鬱…。…というかわたし、今回の件に関してすごく怒られてる気がする…。


そんな感じで協会に戻ってくると、何だか久しぶりにここに来たように感じられた。ずっとこの敷地から出ていなかったから、すっかりこの場所に慣れてしまった気がする。…けど、異常に音が聞こえないような…?皆、寝ているのかな。すると、そこに協会長さんがやって来た。

「二人とも、お疲れ様でした。どうやら色々と騒動があったようですが…。無事に終えることができて何よりです。それに、こちらの方も一応落ち着いたので…」

協会長さんはそう言って、わたしたちがいなかった間何があったのか教えてくれた。どうやら、協会の建物の中に大量の植物が生えてきたらしい。もし、その植物が普通のものだったらまだ良かったのかもしれない。だが、その植物は切っても再び伸びてきてしまったのだという。まるで、トカゲのしっぽのように…。結局、どうにかそれは抑え込んだものの、原因が分からずに終わってしまったそうだ。

「それの駆除にずっと時間を費やしていたせいで色々な作業が滞っていたり、作業で疲労困憊の方が続出したりして…。本当に大変でした。あ、部屋に戻る際、所々壊れている場所があるのでお気をつけて」

そう言った後、魔法仕掛けの本を渡すよう求められたので、わたしはかばんからそれを取り出し、渡した。すると、協会長さんは何のためらいもなくその本を開いた。…効力は失ったから何も起こらないけど、もうちょっと警戒した方がいい気がする…。

「本の中に入れたら面白そうだと思ったのですが…。既にその力はないみたいですね。残念です。ですが、一応これは地下迷宮に保管しておきましょう。誰かにいじられたら面倒ですし」

そう言って、協会長さんは姿を消した。早速、その地下迷宮に行ったのだろう。…そういえば、地下迷宮ってどんなところなんだろう?落ちたら一生戻って来られない、ということと、何故か協会長さんだけは中に入れるってことと、大量に魔法仕掛けの品々が置いてあることくらいしか聞かされていない。一体、何が隠されているんだろう?とちょっと気になったが、取りあえずわたしたちはそれぞれの部屋に戻ることにした。てくてくと廊下を歩くと、確かにあちこち壊れている。壁に亀裂が入っていたり、ガラスに蜘蛛の巣のようなひび割れができていたり、床に置かれている敷物が破れていたり…。これ、相当大変だったのでは…!?わたしはそんなことを思いつつ、時々散らばっているガラスの破片に気をつけて歩いた。…補修が大変だろうな。しばらくして、ようやく部屋にたどり着く。鍵を開けて中に入ると、異常に静かだった。…もしかしてニーナ、寝てる?そう思って奥に行くと、予想通りニーナはすやすやと眠っていた。わたしが入ってきたことにも気付かないくらい熟睡している。しかし、何故か床で寝ている…。何で?と辺りを見て気付いた。どうやら、部屋の中でも植物との攻防があったらしく、まるで泥棒が物色した後のように非常に荒れている。それを整理している途中で力尽きてしまったようだ。ニーナのお気に入りだったガラス細工も割れているし。どうやら、それを片付ける時間すらなかったみたい。他にも、色々と壊れている物が多い。…片付けないと。ただ、この中にはニーナのものもあるので、捨てていいものと悪いものの区別がつかない。なので、取りあえず壊れている物とほとんど被害を受けていない物に分けてまとめておくことにした。本当に何があったんだか…。詳しい状況は説明だけではよく分からないけど、ニーナは本当に疲れているのだろう。隣で少し音をたててしまったのに、それにも気付いていない様子だ。でも、どうやら疲れているのはニーナだけではないらしく、普段はそこそこ賑やかなはずの協会が静まり返っている。…でも、たまにはこういう時間も悪くないな。何だか落ち着く。わたしはそっと目を閉じ、滅多にない穏やかで静寂な時間を味わった。

二章完結です!

読んで下さり、ありがとうございました。

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