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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
2章 魔法の本
18/90

第18話

ヴェリエ国の王宮へと続く道に行ってみると、そこはたくさんの人で溢れかえっていた。この中に入ったら最後、後戻りはできずにそのまま人の波に流されてしまいそう。…あ、でも、ゼンだけは例外かもしれない。すいすい、その間を通り抜けてあっという間に遠くまで行っちゃいそう。…そして、わたしはその場に置いて行かれそう。それに、本を探すって言ってもこの道のどこかにあるとは限らない。もし出現したとしてもその現場に行く前に本が消えちゃいそう。…と考えていると、

「じゃあ、早速行こうか。本を探すのも大事だけど、この辺りの道とかも把握しておかないと。何かあった時に色々と役立つだろうし。あ、そうだ、ジェシカ、はぐれるといけないから手でも繋いでおく?」

ゼンは勝手に話を進め、わたしが何も言っていないのに手を繋いできた。一瞬、何故かどきっとした。でもわたしが戸惑っている間にゼンは、そのまま人で溢れている道に突っ込んでいく。え、え、ちょ…っと待って。早くない!?それと、この状況、一体どうすればいいんだろう?ここで手を離したら絶対に迷子になるからそれはできないけど、本当にどうすればいいか分からない。一体何なんだろう、このシチュエーション!?もしもここに魔法協会の女の子たちがいたら視線でぐさぐさと刺されるところだと思う!!それか、さりげなく魔法で攻撃されそう…!想像しただけで怖い…。まさか、こんな状況になるとは…。わたしは何度目か分からないけど、昨日ゼンにいたずらしたことを後悔した。…取りあえず、戻ってもゼンと手を繋いだ、なんてことは絶対に絶対に、他の人はもちろん、ニーナにも言わないでおこう…。ニーナだったら他の人たちにばらしかねないもの。けど、そんな感じでわたしが複雑な心情になっているにも関わらず、ゼンはいつもの調子で手を繋いだまま道を歩く。

「この道、どこか面白そうな場所に繋がってそう。行ってみようよ。何か面白い物があったりして」

そんなことを言ってマイペースに裏道みたいなところに入っていく。え、危険じゃないの、大丈夫なの!?とわたしは心配になったが、手を繋がれているので仕方なくついていく。結局、何事もなく道を抜け、他の道に通じていることは分かったけど…。こちらの方が、やや人が少ない。でも、色々な意味で、本当に心臓に悪い…!早くゼンの「探検」が終わってほしいな…、と私は心の中でため息をついた。


そうこうしているうちに、わたしたちはいつの間にか元の道に戻ってきていた。そのことにわたしは困惑した。どこをどう戻ってきたんだかさっぱり分からない。けど、ゼンの方はちゃんとどうなっているのか分かったらしく、非常に満足そうな表情をしている。それはいいんだけど…、いつ手を離してくれるんだろう??さっきからずっとそのまま手を繋いでいるんだけど…。けど、ゼンは自然のことのようにしているので何だか言いだしにくい…。そのままの状態で、今度は賑やかな大通りの探検を始めた。…何か、ゼンに振り回されているように感じるのは気のせいだろうか?まあ、元はと言えば、わたしのせいでこんなことになったんだから別にいいんだけど…。…意外とゼンってマイペースなところがある。彼女になる人は大変だろうなー…。たぶん、上手くゼンをコントロールできる人じゃないと疲れるだろうな…、なんてどうでもいいことを考えてしまった。…けど、その後で我に返って思った。何を考えてるんだろう、わたし?そんなのどうでもいいはずなんだけど!自分でも意味が分からない。なので、取りあえず今の自分でも理解不能な考えはさっさと記憶から消去することにした。そして、そのためにもゼンに話しかけた。

「…そういえば、ゼンってこういう人通りの多い所にかなり慣れてるみたいだけど、人ごみに酔うことってないの?」

「人に…、酔う…?たぶん、ないと思う。でも、やっぱり皇国の方が人も多いと思うよ。道ももっと広くて、きらびやかで…。その印象だけは、すごく印象に残ってるんだよね…。あ、もしかしてジェシカ、疲れた?ごめん、さっきから僕があちこち行ってたから…」

ゼンは申し訳なさそうにそう言った。確かに、かなり疲れている。しかも、暑いし。比較的涼しい場所に住んでいたせいか、未だに暑いのには慣れていない。…でも、口に出してないのにどうして分かったんだろう?と気になったが、ゼンは近くに座れる場所を見つけると、そこにわたしを座らせ、「ちょっと待ってて」と言ってどこかに行ってしまった。その姿があっという間に見えなくなる。…早い。わたしは椅子の背もたれに寄りかかり、上を見上げた。ちょうど日陰になっていて、涼しい。ずっと日向にいたので、余計にそう感じる。わたしがその場でぼーっと地面に落ちた葉っぱの陰を見つめていると、不意に目の前に誰かが立った。ゼンかな?そう思って顔を上げたが、違った。誰だか分からないけど、どこかで見たことがあるような…?でも、それがどこなのかは思い出せない。うーん…、どこだったかなあ…。

「なあ、お前、ジェシカだろ?気味の悪い、火の玉を出してた…。急に姿が見えなくなったと思ったらこんなところにいたんだな。何してるんだ?」

そこまで言われて、ようやく思い出した。この人、故郷でわたしをからかって遊んでた人だ。確か、ギルさんが来た日もわたしを馬鹿にしていた…。けど、何て答えよう?素直に、「調査してます」なんて答えるわけにもいかないし。と考えていると、わたしがなかなか返事を返さないことに苛立ったのか、更に言った。

「今でも火の玉出せるのか?まあ、そんなことしてもこっちには対抗策があるけどな!」

そう言うと、後ろでに持っていたバケツをわたしに見せつけた。それで納得する。わたしが火を出したら水で消す…、そういうことみたい。というか、これを用意してあるってことは、かなり前からわたしに気付いてたのかな?…だけど、面倒なことに巻き込まれちゃったなー。対処法に困る。…と、向こうから救世主がやって来た。わーい、と心の中で喜んでいると、その救世主は氷のような冷たい声で言った。

「ねえ、君、何してるの?バケツの中の水、何に使うつもり?まさか、人に浴びせるため…じゃないよね?」

うわあ…、怖い。めちゃめちゃ怖い。そのせいで、いたずら好きの男の子が固まってるから!しかも、凍りつきそうなくらい、冷たい…!それに、この「冷たい」は絶対に比喩表現じゃない!!見ると、バケツの中の水が凍り始めてる…。やっぱり…。ここだけ異常に寒いもの。前に、ゼンもかなり力が強い、と聞いたことがあったけど本当みたい。魔法の花がなくても凍っちゃってる。…でも、これ以上はまずい。近くにある噴水まで凍ったら、怪奇現象になっちゃう!なので、わたしは慌てて立ち上がって言った。

「ゼン、ストップ!大丈夫だから、わたしは何ともないから!」

それと同時に、こっそりと魔法の花を使って凍ってしまったバケツの水を融かした。これで大丈夫。一方、ゼンはそこでようやく氷ができていたことに気付いたらしく、小さな声で「ごめん」と一言言って、目の前にいる男の子を思いっきり無視してわたしに飲み物を渡してくれた。いい感じにひんやりしている。たぶん、普通に常温で売っていた物を魔法で冷たくしてくれたのだろう。

「…というか、これ、わざわざ買ってきてくれたの?ありがとう!暑かったからすごく嬉しい!」

「良かった。でも、元々はあちこち回ってた僕が悪いんだし、お礼を言われるほどのことじゃないよ」

と仲良くわたしたちが話していると、いたずら好きの男の子は、呆然とわたしを見て、それから去って行った。何だろう…、わたしに友達ができていることが意外だったのかな…?わたしがきょとんとしていると、ゼンは何故か何とも言えない表情をしていた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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