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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
2章 魔法の本
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第16話

わたしが自分の部屋に戻ると、どうやらニーナは既に何があったのか他の人から聞いたらしく、少し気の毒そうな表情をされた。まあ、元はと言えばわたしのせいだし、それは全く否定することができない。それに、そのせいで、協会長さんの部屋を出た後で思いっきりゼンに怒られたけど…。あ、それと、隊長さんにも。めちゃめちゃ怖かったな…。でも、そんなに憐みの目を向けられると、それはそれで何だか複雑…。やっぱり、人を驚かせるときは周りに何も被害が出ない時の方が良さそうだ。と考えていると、ニーナに詳しい説明を求められた。そもそも、本の話は協会長さんの部屋でしたわけだから、そこでの話まではニーナも知らない。わたしはニーナに協会長さんの話を細かに伝えた。

「…それで、外に行くことになった、と…?それはまた、随分大変なことになりましたね。でも、外に出られるなんてうらやましいです。でも、ついていくわけにもいかないですし、森の中で応援してることにします」

わたしの話を聞き終わった後でニーナはそう言った。本当にうらやましい、というような表情をされたけど…わたしはあまり嬉しくない。だって、明らかに厄介としか思えないでしょ、この事件!そもそも、本の中に人が取り込まれるなんて想像できないし…。わたしの得意な炎の魔法はあまり役に立たない気がする。

「あー、憂鬱だなー…。ねえ、ニーナ、外に行きたいならわたしと代わってくれない?そしたら、わたしはここにいられるし、ニーナは外に行けるよ?」

「何言ってるんですか。そんなことできるわけないですよ…。それに、そういう任務がないなら普通に外に行きたいですけど、今回の場合は事件の調査なんでしょう?それに参加するのは嫌ですね」

と断言されてしまった。まあ、そうだよね…。ダメもとで言ってみたことなのでわたしはすんなり諦めた。…それにしても、外、か…。この一年、森の外には出ていない。魔法という存在がばれないようにするためには仕方のないことだろうけど…。ちょっと寂しい。一度でいいからお家に帰りたいな、と思ってしまう。わたしは外の空を眺めた。ここから見える空の、ずっと先に母さんがいるんだろうけど…、遠い。この世界は空で繋がっているというけれど、それは果てしなく広くて…。先を見ることができない。だから、繋がっていたとしても寂しいものは寂しいのだ。そう思ってぼーっと空を見続けていると、ニーナが再び話しかけてきた。

「…そういえば、ゼンさんと一緒に行くんですよね?また、色々な人たちから注目を浴びるのでは?」

…それ、わたしが今一番忘れたかったことなんだけど?何で思い出させちゃうかな…。ただでさえ、ゼンによく話しかけられているせいで周りから視線で攻撃されまくっているというのに…。まあ、これも自業自得なんだけどね…。何だか、色々と自業自得なことが多い気がするのは気のせいじゃない気がする。あー、でも、どうしようかな。本当にこれ以上視線攻撃を受けていたら精神的に辛いんだけど…?まあ、でも、しばらくは外に行くわけだから考えなくてもいい…、のかな?うん、それに関しては後で考えることにしよう。帰ってきてから対処すればいいよね!それが一番いい気がする。

「当分はそのことについて気にしないで、本探しに集中することにする!」

わたしの前向き(?)な発言にニーナはあまり興味がなさそうに「そうですか」と返した。自分から聞いてきたというのに…。でも、ニーナはいつもこんな感じだし、今更気にはならない。なので、わたしは取りあえず明日の支度をすることにした。これ以上本による被害者を出すわけにはいかない、ということで明日にも出発するよう言われてしまったからだ。何だか、人使いが荒いような…?それだけ大騒ぎになってるってことだろうけど。それなら、自分たちが行った方が早いだろうに…。そこまで考えたところで、思い出した。協会長さんは、協会内で色々な問題が起こっている、って言っていた…。それって一体、何なんだろう?特に異常はなさそうなんだけど…。でも、隊長さんはそのことについて把握していたみたいだし。極秘情報、ってことなのかな。何となくもやもやする。けど、教えてもらえなかったということは、言いたくないということだろう。なので、わたしはあまり深く考えないことにした。そもそも、そういうのってすごく大変そうだし。わたしが関わってもいいようなことじゃないし、そもそもわたしなんかが関われるようなことじゃないだろう。気にしていても、しょうがない。なので、わたしはさっさと気持ちを切り替えることにした。取りあえず今は、本探しについて考えないと。心の中のもやもやを打ち消し、わたしは明日の準備に取り掛かり始めた。


次の日の天気は、見事に快晴だった。空は青い。…けど、何かちょっと変な…そんな気がする。自分でも上手く言えない。でも、明らかに何かがおかしい。まるで、嵐の前のような…。夕立の前に吹く生暖かい、どこか湿った風のせいだろうか?ゼンも空を見て眉をひそめている。でも、空に全く雲がないことを確認してすぐに上に向けていた目を前に戻した。そこには、協会長さん、隊長さん、ギルさんなどなど。知っている人たちが見送りに来てくれていた。そんな、永遠のお別れじゃないんだけど…?と少し不思議に思ったけど、賑やかな方がいいかな、とあまり深く考えないことにした。それに、どの人もいつも通りだ。ギルさんは忘れ物をしていないか、とか適度に休憩しろ、とか、無茶するな、とか色々と過保護だし、ニーナはニーナでどこか呑気に「お土産待ってますね」なんて、冗談交じりに言ってるし。まあ、その方がありがたいんだけど。変にしっかりとしたお別れをされても逆に緊張するだろうし…。とかそんなことを考えながらギルさんやニーナと話していると、協会長さんがわたしとゼンを呼んだ。

「くれぐれも、久しぶりの森の外だからと言ってはしゃがないように。それと、人通りの多い所をなるべく通るようにしてくださいね。あと……」

と、色々とギルさん以上に色々と注意事項を話す。それを聞いてギルさんは苦笑していたけど、人のことを言えないような気がするのは気のせい…?そんなこんなで、協会長さんの長いお話の後でようやくわたしたちは出発することにした。…それまでがめちゃめちゃ長かった…。何故か、話している間に他の人がいっぱい来て、更に話が盛り上がって…。ゼンなんか、それだけで疲れてしまったようだった。

「…何か、ヴェリエ国の中心部に着く前にこんなに疲れてるんだけど大丈夫かな…?」

森を歩きつつ、ゼンがそうつぶやいた。確かに…。

「何だったら、今日は目的地に着いたら何もしないでのんびりしてる?でも、それはそれで協会長さんに怒られそうだよね。何だったらわたし一人で探してもいいんだけど。元々、わたしが原因だし」

「それは止めておいた方がいい気がする。何か、ジェシカが迷子になりそうで怖いから」

ゼンにそう即答された。何かひどくない?わたし、そこまで方向音痴じゃないんだけどな?迷子になったことだってほとんどないし。…と思っていたら森の出口に着いた。ここからは、久しぶりの、外の世界…。ゼンはさっさと外に出ていたけれど、わたしはゆっくりと外の様子がうっすらと見える木に向かって手を伸ばした。何となく、緊張する。触れると、水面に波紋が広がるようにゆらゆら、木の表面が揺れた。そして、次の瞬間、わたしは暗い森から明るい日差しが降り注ぐ、外の世界へと出ていた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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