第14話
2章スタートです!
わたしが魔法協会に来てから一年ほどが経った。今ではわたしも自分の力をかなり使えるようになり、コントロールの仕方にも慣れた。まあ、そのほとんどはゼンのおかげなんだけど。魔法の練習相手になってくれたおかげで何とかできるようになった。…まだたまに失敗することもあるけど、それでも、最初にここに来た時と比べれば大きな進歩だと思う!そんなことを考えつつわたしが歩いていると、中庭にゼンの姿を見つけた。端っこの方にあるベンチに座り、何かを真剣に見つめている。…?一体、何だろう?気になったわたしは、そーっと中庭に降りてゼンのところに近付いてみることにした。ついでに驚かせてみたいな、って思ったので。気付かれないようにそっとそっと…。そして、ようやくゼンの真後ろにたどり着いた。ゼンは手に試験管を持っている。ベンチには色々な粉のような物が色々と置かれている。実験してるのかな?けど、その内容はよく分からない。わたしは取りあえず、ゼンを驚かせてから何をしているか聞いてみることにした。
「ゼン!!何してるの?」
ゼンは相当集中していたらしく、いきなりわたしに声をかけられて非常に驚いていた。ぎょっとしたような表情でわたしの方を振り返る。その拍子に、試験管に入れようとしていた粉が全てその中に入ってしまった。…大丈夫かな?毒ガスが発生したりしないよね!?とそっちを気にしていると、ゼンが恨めしそうに言った。
「ジェシカ…、いい加減、僕を驚かせて楽しむの、止めてくれない?そのせいで寿命が縮みそうなんだけど」
「だって、ゼンって予想以上の反応を返してくれるから面白いんだもん。…ところで、わたしが驚かせた時に粉が全部入ってたけど、その試験管、大丈夫?…まあ、元はと言えばわたしのせいなんだけど…」
その言葉で試験管と粉を乗せていた紙を見比べたゼンは一瞬固まった。どうやら、粉が入ってしまったことに気付いていなかったらしい。険しい表情で何かを考える。…あれ、もしかしてまずい事態だったりする?
「…ジェシカ、先に言っておくね。協会長とかに怒られることになるだろうけど、その時はジェシカ一人で怒られてね。確かにここで実験してて、ジェシカの気配に全く気付いていなかった僕も悪いんだけど…。一番の原因はジェシカの方だから」
…???どういうこと??驚かせて分量を誤らせたのは確かにわたしのせいだけど、何で協会長さんが出てくるんだろう?謎すぎる。と、試験管を見たら、何故かそこから煙がもくもく。しかも、火薬のような匂いまでする。…って、これ、もしかして…!!わたしが何が出来上がったのか悟った、その瞬間。ゼンが思いっきりその試験管を中庭の中心に放り、わたしの手を強く引っ張ってなるべく中庭から遠ざけた。中庭から出たちょうどその時、大きな爆発が起こる。びりびりと近くの窓ガラスが大きく揺れた。…今にも割れそうで怖い。その後でゼンはわたしに怪我がないか確認し、試験管に近付いた。わたしも恐る恐るそれを覗き込む。…が、試験管はもはや形をとどめていなかった。それに、試験管の周りの地面もえぐれている。
「…あの粉、少量を水に溶かすだけならただ発熱するだけなんだけど、あれくらい大量に溶かすと爆発するんだよね。もしあれを室内で実験してたら、間違いなくこの建物が全部吹っ飛んだと思うよ」
怖…っ!だから、後で怒られる、って予告されたんだ…。うん、これは絶対に怒られそう。実際に、さっきの爆発音を聞いた人たちが続々と集まってきてるもん。そんなわたしにとどめを刺すように、ゼンさんが一言言った。
「ジェシカがこれでいたずらに懲りればいいんだけどね」
「すみませんでした……。今度からゼンを驚かせる時は、実験の道具を持ってない時にするね」
その言葉にゼンがちょっと呆れたような表情になる。何かを言おうとしたその時、急に集まってきた人たちの群れが二つに分かれた。…?分かれた…??その現象に首をかしげていると、そこから現れたのは隊長さんだった。あー、これは絶対に、めちゃめちゃ怒られるな…。隊長さん、と言うのは、この協会の副会長さんだ。でも、顔つきとかから皆に隊長、って呼ばれている人だ。普段はどこか茶目っ気がある人なんだけど、怒らせるとすごく怖い人でもあるらしい。まあ、滅多に怒ることはないみたいだけど…。
「さっきの音は一体何事だ?」
うわあ…。トーンが低いし、雰囲気が不穏すぎる…!わたしは首をすくめてその質問に答えた。
「えっと…。ゼンが実験をしてたんですけど、わたしが急に話しかけて驚かせたせいで粉が全部水に溶けちゃって…、それで爆発が起きました。ゼンが中庭の真ん中に試験管を放ったおかげで何とかなりましたけど…。ごめんなさい!!」
わたしは勢いよく頭を下げた。すると、隊長さんはそれに何も答えないまま、試験管とその地面の近くに行った。そして、それをじっくり見て何とも言えないような表情になる。
「お前ら…、かなり派手にやってくれたな…。これは後で協会長にも怒られるはずだ。…ゼン、よくここに来ていたお前ならここに何があったか知ってるんじゃないか?」
その言葉でゼンは記憶をたどるように考え込んだ。そして、それを思い出したらしく、目を見開いた。
「…そこにあったのって、もしかして、協会長のお気に入りの木だったりしました?」
その言葉に隊長さんは大きくうなずいた。木…?そういえば、あの辺りにそんなのがあったようななかったような…?でも、確かにそれはなくなっている。よくよく辺りを見てみると、枝の破片らしきものが散らばっていた。これってもしかして、木の残骸だったりするのかな!?え、どうしよう。まさか、驚かせた結果、こんなことになるなんて!わたしが今更、事の重大さにあわあわしていると、そこに、今一番現れてほしくなかった人が現れてしまった。
「何か大きな音がしたのと、人が集まっているから来てみたんですが…、一体何が……」
そこで、協会長さんの目が中庭の真ん中にある、えぐれた地面と木々の破片に向けられ、言葉が不自然に止まった。そのまま、よろよろとこちらに近付いてくる。そして、じーっと無言のままそれを見つめる。あー…、不穏すぎる。隊長さんの時よりも怖い。天気で例えて言うならば、ここにだけ暗雲が立ち込めているみたいな感じだ。しばらくそこで呆然としていた協会長さんは詳しい説明を求めてきたので、恐る恐る先ほどと同じような説明をした。その説明に、協会長さんはかなり呆れたような表情になった。
「まさか、こんなことになるとは……。本来であれば、同じ種類の木を探して来い、と言いたいところですけど…。ちょうど良い機会ですし、この二人にあの件について頼んでもいいかもしれないですね…」
協会長さんがぶつぶつと小さくつぶやいた。あの件って…?しかし、協会長さんのその言葉に隊長さんは何故か非常に驚いたような表情をする。だが、少し考えこんだ後でうなずいた。その反応に、わたしとゼンは顔を見合わせた。そんなわたしたちに、協会長さんはこう告げた。
「今回の件を不問にする代わりに、君たちにとある調査を依頼しようと思いますがよろしいですか?」
「「調査???」」
わたしとゼンは協会長さんに、同時にそう尋ねていた。
読んで下さり、ありがとうございました。




