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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
1章 緋色の炎の魔法使い
10/90

第10話

…そして、とうとうこの日がやって来てしまった。魔法試合当日。色々な意味で憂鬱だ。一応、今日までに何回か説明を受けたり、実際に出る人たちと戦ってみたりしたんだけど、正直わたしは驚いている。なぜなら、わたしの力が異常すぎるのだ。要するに、強すぎる。なので、色々と迷った末、わたしは一発で試合を終わらせる作戦に出ることにした。そうじゃないと、自分の力を上手くコントロールできないからだ。もうちょっと上手くなれれば良かったんだけど…。わたしはため息をついた。すると、横を歩いていたニーナが励ましてくれた。

「大丈夫ですよ!ジェシカはずっと練習を頑張ってきたじゃないですか!それに、成績がつくわけではないですし、結果はあまり気にしない方がいいと思いますよ?」

そうかもしれないけど、それでも憂鬱…。今からでも誰かと代われないかな…、とわたしが周囲をきょろきょろと見ていると、ニーナにちょっと呆れられてしまった。いや、本当に無理だから…!と思っているうちに、今日の試合の組み分けが書いてある紙が貼ってある場所に来てしまった。まあ、どうせ知らない人だろうから見てもあまり意味はないけどね…。そう思いつつ紙を見ると、やっぱり相手は知らない人だった。その方がいっそ気楽かもしれない。とか思っていると、ニーナが観客席の方へと行ってしまった。…急に心細くなるんだけど。わたしが出るのは二回戦目なので、取りあえず一回戦の試合を見てみることにした。少しでも雰囲気を知っておきたい、というのと、どんな技を使うのかが気になったのだ。試合するスペースの近くにわたしが行くと、ちょうど試合が始まった。得意な魔法が「水」の人と「光」の人の戦いみたい。最初に、「水」の人が大量の水滴を空中に浮かび上がらせた。…うわ、すごい。しかも、見事にコントロールしている!うらやましい。そして、その水滴を一気に相手目がけて打ち込んだ!そのスピードは風のように速く、一気に相手までその水の玉は迫る。だが、その人は慌てずそれを避けた。その反射神経の良さに驚いていると、「水」の人が再び水滴を浮かび上がらせた。しかも、今度の方が大量。さすがにこれは避けきれないんじゃないかな…、と思っていたその時だった。「光」の人が軽く手を振った。その瞬間、きらりとその人の近くで光が輝いた。どうやら、光の魔法を発動させたみたい。…でも、どう攻撃するんだろう?わたしが疑問に思ったその時。「水」の人の周囲に浮かんでいる水滴がきらきらと光を放ち始めた。…あ、そういうことか。そこでわたしはようやく「光」の人が何をしたかったのかに気付いた。周りにある水滴を光に反射させて目くらましをさせるつもりだったんだ…!「光」の人は自由に光を操り、様々な場所にある水滴を光らせ、相手を翻弄させる。そして、その隙に悠々とその人に近付き、選手であることを示すリボンを勢いよく外した。その時にようやく「水」の人が相手が近付いていたことに気付いたようだったが、もう負けている。そのまま試合は終わってしまった。…すごい、考えていることがすごすぎる!それに比べて、わたしは一発で試合を終わらせることしか考えていないという…。

と考えていると、二回戦が始まる、というアナウンスが聞こえてきたのでわたしは試合スペースに出ることにした。相手はどうやら「草木」が得意な人みたい。蔓で動きを封じられちゃったら危険だな…、と考えていると早速相手が攻撃してきた。出てきたのは、大量の鋭い葉っぱ。それが一斉にこっちへ向かってきた。怖い!怖いから!当たったら切れそう!というか、たぶんそれが狙いなのだろう。カッターみたいな葉っぱでわたしのリボンを切ってしまえば向こうの勝ちになってしまう。

『…これは面白い』

心の中で、一言誰かがつぶやいた。それと同時にわたしは花をかざし、心の中で ―葉っぱを燃やせるほどの炎!― と唱えた。だが、炎は何故かこういう時に限って言うことを聞かず、大きく燃えた。…たぶん、突然の葉っぱの出現に驚いたせいで集中できなかったせいだ。観客がざわざわしている。たぶん、炎の威力が大きすぎたからだろう。反省…。相手の人も、驚いたようにこちらを見ている。…けど、どうしよう。わたしが炎を使ってリボンを燃やす場合、相手が傷つかない程度の炎を出さなければならない。…でも、この規模の炎を出したら相手まで焼けてしまう。わたしは相手が呆然としていることをいいことにもう一回炎を出してみた。…今度は成功。そこまで火は大きくない。ただ、この程度の炎がいつも出せるとは限らない。そう考えていると、我に返ったらしい相手が再び攻撃してきた。…今度は、蔦。わたしは出していた炎でそれを焼いたが、蔦はずっと伸びていて、焼いてもキリがない。面倒すぎるよ、これ!それにずっと使っていれば集中力が切れてしまう。けど、それは相手も同じだったらしく、一旦攻撃の手を止めた。

『チャンスは一回限り。それならば……』

再び、心の中で誰かがどこか楽しそうにつぶやいた。その後で紡がれた言葉にわたしははっとした。この「誰か」の正体は分からないけど、これしか勝負を終わらせる手立てはない。わたしは、再び魔法の花をかざし、すっと目の前を見据えた。わたしの周りの空気が、どこか鋭い雰囲気へと変わった。けど、そのことを全く気にせずにわたしは ―誰もが注目する、大きな炎― と心の中で唱えた。それと同時にもう一つ、ある言葉を唱えた。その瞬間、自分でも驚くほど大きい炎が現れ、まっすぐに相手の方へと向かっていく。相手は一瞬、それに対抗するかのように花をかざそうとしたが、すぐに怪訝そうな表情に変わった。それもそのはず。その炎は、相手の真横(・・)を通って後ろの木を燃やしたからだ。でも、わたしは全く動揺していない。なぜなら、それこそが目的だったからだ。さっき、わたしが唱えたもう一つの言葉。それは、 ―際立つことのない、極小の炎― だ。つまり、一番最初の炎に隠れて目立たずに近付く炎、という意味。気付かれたら消されてしまう、そんな炎。

その瞬間、わたしが作りだした二番目の炎が相手のリボンに到達し、音を立てて燃え上がる。しかし、それが服に引火することはない。それくらい、小さな炎だから。相手ははっとしたがもう遅い。リボンは既に燃えた後。わたしはそれを確かめ、ほっとした。その瞬間、一気に力が抜けた。そもそも、さっきまでのわたしが何かおかしかったのだ。よく分からない声が聞こえたし、いつもの自分では考えられないくらい集中していたし…。何だったんだろう、さっきのは…?けど、わたしがそれを深く考える前に審判がわたしの勝利を告げ、観客が再びざわめいた。すると、どこから来たのか、いつの間にかニーナがわたしの傍にいて心配そうに言った。

「ジェシカ、大丈夫ですか?!さっきの試合、本当にすごかったですけど、力を使いすぎたのでは…?」

「そう、かも。かつてないほど集中していたから…。たぶん、少し休めば大丈夫だと思うよ」

わたしは何とかそれを言って、取りあえずニーナと一緒に試合場所の外へ出た。すると、そこに出たところでニーナが少し怪訝そうな表情をしてつぶやくように言った。

「…そういえば、ジェシカがすごく大きな炎を出した時…。気のせい、かもしれませんけど、ジェシカの瞳の色が深紅に変わった気がしたんです。…でも、今は普段通り、ですよね…。やっぱり、見間違いだったんだと思います」

…深紅?わたしの普段の瞳って紫色のはずなんだけど。炎の加減でそう見えたのかな?少し不思議に思ったけど、その後は休憩時間とか他の人の試合とか色々とあったせいで、わたしはそのことをしばらく忘れていたのだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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