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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
1章 緋色の炎の魔法使い
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第1話

こんにちは。今日から、「煌めきの森 魔法の花」の連載を始めます!

「私の異世界花記録」にも登場したジェシカが主人公です。

よろしくお願いします。

さあっと強い風が吹き抜けていく。その強さに、わたしは思わず目を閉じた。しばらくすると、風が収まり、わたしはそっと目を開ける。そこには、まるで全てを燃えつくしてしまうかのような強い火はなく、一瞬、わたしは何もしていなかったんじゃないかと思ってしまうほどだった。しかし、何かが焼け焦げたような匂いと、茶色く変色してしまった辺りの草が、そうではないことを物語っている。…そして。わたしの目の前には、誰か知らない人がいた。その人は、わたしに尋ねた。

「…君の力、何かに生かしたいと思わないかい?」

その言葉は、とても魅力的で…。―――そう、きっと、その言葉が、全ての始まりだった。


わたしの名前はジェシカ。ヴェリエ国南西部の小さな村に住んでいる。そして、わたしはとある力を持っていた。…それは、感情が高ぶるとわたしの周りで、火の気がなくても炎が発生する、という謎すぎる力。正直言ってすごく迷惑!だって、冬に暖炉代わりになることくらいしか、使い道がないんだもん!それに、その力のせいで周りの人たちに避けられてるし…。いいことなんか、全然ない!わたしは、自分の力が怖い。いつか、人を傷付けてしまいそうだから…。なので、次第に自分から人を避けるようになってしまった。


「おい、お前さ、火が出せるって本当かよ?」

とある日、川の近くでぼーっとしているわたしに、誰かが声をかけてきた。全く…。わたしは他の人と関わらないようにするために、あえて人気の少ないここに来ているのに、何でわざわざ向こうからやってくるのかな?少し苛立ちつつ、わたしは声のした方を振り向いた。そこにはにやにや顔の、わたしとおなじくらいの男子。…ああ、からかいに来たんだ、ご苦労様。こんなのを相手にしてたら、こっちの身が持たない。さっさとどこかに行ってくれないかな。わたし、ここで火を出したくないんですけど?川の近くとは言えど、河原があるわけではなく、すぐそこから原っぱが広がってしまっている。ここで、火を出したら大惨事だろうな…。しかし、わたしが思いっきり無視していると、男子は更に声をかけてきた。

「ふん、不気味な奴!お前、本当はお化けなんじゃねーの?火の玉出して、怖い顔してさ!!」

何だそれ、そんなの知らない。というか、はっきり言ってどうでもいい!というか、お化けでも何でもいいけど、さっさとどこかに行って欲しい。これ以上話しかけられると、イライラを抑え切れしなくなりそう。だから、わたしは簡潔に言った。

「うるさい。どこかに行ってくれないかな?」

しかし、それは逆効果だったらしく、男子は離れようとしなかった。そして、更に色々とあることないこと言ってくる。何なの、この人…。ストーカー?警察に訴えてもいいかな?と、わたしは静かに怒りを溜めていた。でも、それと同時に、心の片隅で、もう一人のわたしがささやく。これ以上、怒っちゃダメ、と…。そうじゃないと、人を傷付けてしまう、と…。けれど、ダメだった。わたしの中の何かが、ぶつっと切れたような、そんな感覚がした。自分でもよく分からずに、勝手に言葉が出た。

「うるさい。いい加減にしてくれない?こっちの気も知らずに、好き勝手に言わないでよ!!!」

今まで我慢してきたことが全部溢れたような、そんな気がした。今までにもこういう風にあることないこと言われることはあった。その度に感じていたやりきれない気持ちや悔しい気持ちが、全て出てきたような、そんな感覚。その瞬間、ごうっと音を立てて、炎がものすごい勢いで現れた。それは、今までに起こしてきた中でも、一番大きいくらいの規模で…。それでも、その勢いは止まらない。更に、周りへ、周りへと炎が広がっていく。さっきの男の子は、怯えたような表情で逃げて行った。それなのに、止まらない。そして、その炎はわたしにも迫ってきた。全然、止まらない。…このままじゃ、焼けてしまう。そう思った、その瞬間。

強い強い風が吹いた。まるで、体ごと持って行かれそうなくらい、強い風が…。わたしはぎゅっと目を瞑った。しばらくすると、徐々に風が収まっていった。なので、恐る恐る目を開ける。そして、驚いた。わたしを囲んでいた火は、跡形もなく消えている。一瞬、あの火は幻じゃないかと思ったけれど、辺りの草は茶色く焼け焦げていて、何かが燃えたような匂いもしていた。そのことが、あの火が幻じゃなかったことを物語っている。もしかして、さっきの風が火を消してくれたのかな?でも、何で急に風が…。そう思いつつ、草を見ていた顔を上げた。そこには、いつの間に、知らない誰かがいる。…誰?警戒するわたしに、その人は尋ねた。

「…君の力、何かに生かしたいと思わないかい?」

「………………」

わたしは、反応に困った。急に知らない人に、そんなことを言われても、困る。わたしは、急いでその場を離れた。いや、だって、怖かったんだもん。…でも、生かせるとしたら?思わず、そう考えてしまった。それを言った人物はともかく、その言葉自体はとても気になってしまう言葉だったのだ。

…もし、生かせるとしたら。わたしは、少しはこの変な力を好きになることができるのだろうか。


「…で、何でこんなところにいるんですか。ストーカー?」

わたしが何とか家に戻ると、家の前には何故か、さっきの原っぱの人がいた。何で?わたし、この人と面識がないはずなんですけど。でも、お母さんの知り合いとも思えない。

「勝手にストーカー扱いされても困る。俺は、君のお母さんに会いに来たんだ」

はっきり言っていいかな?……この人、めちゃめちゃ怪しい。わたしがじとーっと、その人のことを見ていたその時だった。急に家のドアが開いて、お母さんが姿を現した。そして、何故か驚いたような表情で、わたしではなく、謎の人の方を見た。…まさか、本当に知り合いだったのかな?嫌な予感がする。…そして、その予感は当たってしまった。

「兄さん?!何でここにいるの?勝手にここに来ちゃっていいの?」

「久しぶりだな!元気にしていたかい?君の手紙を読んで、来てみることにしたんだよ!」

何故か、感動の再会をしている二人。…何なの、一体?けど、その空気を邪魔するわけにもいかず、わたしはしばらくその場で困っていた。しばらくすると、ようやく二人の感動の再会が終わる。…そろそろ、二人の関係を説明してほしいのですが?母さんはさっき、謎の人のことを「兄さん」と呼んでいた。でも、母さんに兄弟はいないはず。少なくとも、私はそう聞いていた。それなのに…、何で?そこら辺が、詳しく知りたい。すると、母さんがにっこり笑って、わたしに言った。

「ジェシカ、今まで黙っててごめんね。この人は、私の兄なの。っていうのも、これには色々と理由があって…。そろそろ、ジェシカにもあのこと(・・・・)を説明しておいた方がいいかしら」

母さんがその後も何かを言っていたが、ちっとも頭に入って来ない。だって、母さんにお兄さんがいるとか、聞いてない!全然、全く、何も聞いてないよ?!というか、何で教えてくれなかったんだろう…。非常に私は混乱していたが、母さんに促され、取りあえず家に入ることにした。そして、ダイニングへ。その間も、わたしはぼーっとしていた。後ろで楽しそうに母さんと、その兄(?)が話しているけれど、その会話もよく分からない。そして、そのままわたしはダイニングの自分の席に座った。すると、兄(?)は私の真正面に座る。その顔は、どこか楽しそう。…ちょっと怖いんですけど。


けれど、その人こそが、わたしの人生を大きく変えることになる人だっていうことを。この時のわたしは知らなかった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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