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特に理由もなく覚醒した妹  作者: 鴨居 洋
一章
1/4

特に理由もなく覚醒した妹

なろうのシステムを理解するためのテスト用作品のため、しっちゃかめっちゃかになる予定です。ご了承くださいませ(汗)

「にいさん。」


 俺にとっての土曜日の幸せとは好き放題眠ることである。

 そんな理念を持ちソファに寝っ転がって至上の惰眠を貪る俺は妹の雫の呼び声で目を覚ます。

 瞼を擦り眠気を飛ばしながら時計を見やると短い針は六を指していた。


「あぁ、飯の時間か?晩には何が食いたい?」

「にいさん。」


 おっと、俺を食いたいと。兄妹でそれはいかんよ。

「はいはい、お好み焼きで…」


 雫の冗談を軽く流し、今の自分の気分のメニューを提案し、献立の決定を委ねるため雫の方を見て、俺は言葉を失った。


 浮いていたのだ。

 もちろんそのままの意味でふわふわと。


「にいさん。」

「え、なんで浮いてん?」

「知らない。なんか気付いたら浮いてた。」


 特に理由も意味もないらしい。


 とりあえず雫の頭の上と足の下をスカスカと手を通す。

 うむ、何も無いのを確認。ハイレベルなマジックとかドッキリか?


 少し戸惑っていると俺と雫の腹の虫が空腹を知らせてきた。


「とりあえず飯作るから待ってろ。お好み焼きでいいよな?」

「うん。」

「よし、ちなみに椅子は座れるか?」

「大丈夫そう。」


 雫はそっと床に降り立ち、椅子に座って指で丸を作ってみせる。

 とりあえずはゆっくりご飯は食べれそうだと一安心する。

 今日は大阪風の本格っぽいやつにしよう。何となくそう思った。



 我ながら会心の出来のお好み焼きを食べながら先程の事を聞く。


「んで、なんのドッキリやったん?」

「ドッキリじゃない、なんか浮いてた。」

「えー…原因は?分からんの?」

「うん。昼寝して起きたら浮いてたとしか言えない。」


 うーむ、理由が分からん。本人が特に苦しそうではないので大事では無さそうだ。


「他に何か変わったことは?」

「…うーん?」


 浮くことが出来る以外になにか変化が無いか、首を傾けたり手をワキワキさせたりしながら自身の異変を調べている。


「むん!」

 すると変な掛け声と共に雫が力んだ。

 その直後、俺の手元のお好み焼きがかつお節を踊らせながらふわりと浮いて…ゆっくり俺の顔面に着地した。

 お好み焼きが突然浮くとは思えなかった。反応することが出来ないのも仕方ないだろう。


「アッッッッヅぅゔウイ!!?」


 椅子を蹴って飛び跳ねずにはいられない。

 流石は出来立てアツアツ、その熱さたるや冷静に対処するには刺激的過ぎた。


「浮いた…よ?」

「そうだね!?なんでお好み焼きを顔に飛ばした!」

「全自動食事って素敵かと、良かれと思って。」


 こんにゃろう、と顔に血管を浮かばせると素直に謝ってきた。


「ごめん、上手く制御出来なかった。」


 雫が素早く冷えたタオルを持ってきてくれた。

 わざとでも悪気もないらしい。俺は寛大な心で許すことにした。



 まだ顔がヒリヒリするが、ひとまずは落ち着いたため改めて問う。


「で?つまり、昼寝から起きたら物を浮かせられる様になったのか?」

「…むん。」


 問いに答える代わりか、雫がまた力んだ。すると唐突にテレビのチャンネルが変わる。


「さっきの番組まだ見たいんだけど。」

「むっ。」


 また力む。次はコップのお茶がぼこぼこと沸騰する。100℃を超えた証拠だ。


「飲めねぇ…」

「ふっ!」


 テンションが上がってきたらしい、強めに力を込めて腕を振るう。

 部屋に強烈な突風が吹いた。

 当然、家具も小物も()()も吹き飛ぶ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


 俺は顔を押さえて絶叫した。仕方ないだろう、だって沸騰したお茶の入ったコップが顔面に直撃したのだから。

 現在の部屋の惨状にも声を荒らげたいが、とりあえずお好み焼きで敏感になった顔が熱い!痛い!周りを気にする余裕が無い!

 一方の雫は振り切った腕をそのままに、手のひらをキュッと握り、腕をゆっくり下ろす。

 すると風が収まり、吹き飛んでいたものが時間の逆再生のように元の位置に戻る。

 ご丁寧に俺の顔で爆発四散したお茶の破片も逆再生されコップの中に戻っていく。


 全てが落ち着き、バラエティ番組の笑い声だけが響く部屋は雫が暴走する前と比べても同じ光景だった。

 寧ろ綺麗に見える。

 何か部屋に違う部分があるとすれば部屋中から集めたのであろう埃が丸まって足元に転がってるのと、俺の顔が真っ赤になってる事くらいだろう。

 俺の顔が赤いのは断じて怒っているからではない。


「雫?顔、痛いんだけど?」

「…痛いの痛いの飛んで行けー。」


 そんな子供騙しなことを言いながら顔を撫でてきた。

 すると顔を撫でられた瞬間痛みが引いた。

 俺は火傷していた顔を擦りながら、呆気に取られた表情で雫の顔を見る。

 雫は戸惑い3割 焦燥2割ドヤ顔9割と言った14割の顔で言い放つ。


「いまなら何でもできそう。」

「おまえ、魔法少女だったのか…。」

「高校生にもなってそれは無い。って言いたいけど今は否定ができない。」


 うちの妹はどうやら魔法に覚醒して魔法少女になったようです。


「なんでだろなぁ…」

「なんでやなぁ…」


 本人に心当たりがないんじゃあ、どうしょうもない。


「とりあえず、何か言うことは?」

「楽しかったです。ごめんなさい。」


 よろしい。治ったし許す。




 夕食後、雫は「実験♪実験♪」と呟きながらそれはもうノリノリで魔法を使いまくった。

 移動は全て足を使わずにふよふよと浮いて。

 お風呂は自分で出した水を魔法で沸かした。

 ドライヤー代わりに自分で温風を吹かせ、風呂上がりの水は水道水をキンキンに冷やして蛇口から直接飲んでいた。

 浮きながらベランダの窓を開け外に飛び出そうとした時は必死に羽交い締めにして止めた。

 就寝前は興奮で眠れない様だったので

「自分に睡眠魔法でも使ってみたら?」

 と試しに言ってみたら雫はおもむろに自分の顔に手をかざし、膝から崩れ落ちた。

 俺は雫が頭を床に打たない様に滑り込んで抱きとめた。

 (雫ってこんなワイルドな娘だったっけ!?)


 俺が知っている雫は少なくとも良く言えば大人しい、悪く言えば何事にも無気力な子だった。


 年齢は俺の一個下で16歳。高校ではそれなりにラブレターとか告白とかを受けていると言う。全てを「興味ない」の一言で粉砕しているらしいが。

  容姿は10人が見れば8人は可愛いと言うであろう儚げな雰囲気を纏っており、身内贔屓かもしれないが、中々の美少女だと思う。


 そんな彼女が、今日ははしゃぎまくってて、そのギャップがいい。と言えるレベルじゃなかった。

 俺ですらいままで見たことのないテンションの上がり様で正直疲れた。


 羨ましいとも思わずにいられないが。


 雫を彼女の部屋のベッドに寝かせ、自分も自室に戻り布団をかぶる。

 (一体なにがなんだか…)

 精神的になのか、肉体的になのか、非常に疲れが溜まっていたようですぐに眠れた。




 昨晩はこれはきっと夢だと自分に言い聞かせながら眠りについたが、現実は変わらず、妹が部屋まで起こしに来た。

 太〇拳のようなポーズで〇陽拳のような眩い光を発しながら、浮きながら。

 おぉう、朝からキマってらっしゃる。


「にいさん、実験に行こう。」

「うん…とりあえず光消して…」


 お目覚め朝イチにこの光量はキツイです。


 朝ごはんは手早くおにぎりで済ませ、さっと着替えも済ませ(させられ)て手を引かれて外へ飛び出した。


「ちょ!靴履いてない鍵閉めてない!」


 一旦落ち着け!のニュアンスを込めて靴下のままの足をと鍵を見せつけ抵抗の意を見せつける。

 雫が人差し指をくりっと回すと玄関から靴が飛んできて足にハマり、扉からガチャリと音がした。


「戸締りもかんぺき。」


 見事なVサインを見せつけてきた。

 どうやら抵抗は出来ないようであった。

 この娘はここまで魔法を使いこなしておきながら一体どこで『実験』とやらをするのだろう。

 聞き出したいが、それどころではない。エレベーターや階段では遅いとマンションから飛び降りたのだ。


「ちょ!ここ8階!!」


 死ぬ!と思った。

 が、地面にぶつかる寸前身体が重力と反対  

 方向にふわりと反発した。さぞニュートンも涙目であろう。


 そのまま雫は浮いて飛び出そうとしたので俺は地面に足を打ち込み初速を殺した。

 とりあえず実験するにしてもこれだけは言っておかねばならないだろう。


「外で魔法使うの禁止!あと落ち着け!」

「ぶげ!」


 そう言いなが、雫の脳天に手刀を振り下ろした。情けない声が聞こえたが知らん。

 人に見られたらどう言い訳すれば良いのか分からない。


 極力見られないようにしようね。

 とりあえず落ち着いた雫の手を暴走しないように握って街へと歩きだした。

うん、難しい。

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