まとわりつく義務感
未成年喫煙は法律で禁止されています。
気がつくといつの間にか、私に泣くことを許さなかった夕陽はいなくなっていて、月のない静かな夜が身支度を始めたようだった。
私はまだ、家に着いていなかった。
あれから歩いていたのか、止まっていたのかも分からない。
鼻をすすると同時に近くの家から美味しそうな晩ごはんのいい匂いがしてくる。
夜と、匂いと、無気力が、私を包む。
今が何時か確かめようと、カバンに入れていた携帯を探す。
すると携帯ではない、何か箱のような物に手が触れた。
覚えのない箱を取り出してみると、それは青色っぽいきれいな色をした、煙草の箱だった。
ああ、そうだ。
彼と同じ気分を味わいたくて、彼に少しでも近づきたくて、いつもの何倍も大人っぽく見える化粧をして買いに行ったんだった。
「どうしよう、これ...」
言葉にならない声でそうつぶやく。
月数千円の少ない小遣いからちょっと無理して買った煙草。
本来持っていてはいけない年齢なのに、捨てる気にはなれなかった。
しばらく考えたあと、私は試しに1本吸ってみようと人目のつかない所に移動した。
煙草と一緒に買っておいたライターをカバンの中から探し出す。
箱から1本取り出して口にくわえる。
慣れない動作で、心細そうに灯る火を風から守りながら煙草に火をつける。
その瞬間、匂いに覚えのある煙が私の中に勢いよく入ってきて思わずむせる。
咳が止まらなくて苦しくなる。
なんだ、美味しくないってのは本当だったんだ。
彼と交わした言葉と、煙草でむせた苦しさとその両方が私を切なくさせた。
自然と目から涙がこぼれ落ちる。
どうにか1本吸い終わる頃には少しだけ慣れて、咳も落ち着いた。
大人になれているのかな、私。
そう簡単になれるものではないことくらい分かっているけど、今は大人に近づいたと無理にでも思いたかった。
とりあえずこの箱の分だけでも、私が処理しよう。別に捨ててしまってもよかったのだけれど、変な義務感みたいなものが私にそう決心させた。
ゆっくり、少しずつ減らして、全部なくなったら彼の事も忘れよう。
きっと、時間が解決してくれる。
本当にそう思っていたわけではなかったけど、そう思わざるを得なかった。
未成年喫煙はだめとうたいつつも未成年に煙草を吸わせる話を書いてます。
私は分からないんですが、煙草にしろ料理とか物事にしろ、何か些細な違いでも分かる方素晴らしいと思います。
いろんな世界を持ってそうで、少し羨ましいです。
あと、次ラストになります。