塾通いの日常
日常を扱ったものでも…見方次第では…
そんなことを考えて書いてみました
特にこうした経験は自分には無かったので
創作と言えば創作ですが…
自分結城勝は中学生をやっている
特に何の取り柄も無く…学校へ行き
塾通いをしている
そのこと自体に疑問を感じたことは無かったけど
いつからか…パターン化されたような
平坦に過ぎていく日常に…どこか焦りというのか
焦燥感というのか…言い様のない気持ちを覚えていた
今日もそんなで塾通いを終え…夕食を食べるべく
帰路に着いている
夕食の場が家族で話をする場になっているので
なるべく会話するように心がけている
「今回の試験の点数…どうだった?」
母親がこう切り出してくるので
「うん…こんなのだったよ」
差し出したテスト用紙の結果は…満点に近いものだった
「凄いじゃない勝!これ苦手の科目よね?」
「そうだけど…」
「この調子でどんどん頑張ったら…」
父親はあまり塾の出来事は聞いてこない
でもどこか満足げな笑顔というのも毎回のことなので
まあ両親が喜んでいるのならそうで…
しかし…そうなればなるほど…自分のことで無くなっていくような
どこか奇妙な気持ちというのも最近感じるようになっていた
そんな少し複雑なところで…考えても仕方ないと
言い聞かせるように眠りに落ちた
気が付くと…塾通いのいつもの道を歩いている
道端には…いつもとは違う…占い師のような人が座ってるのが
見えた
近づいていくと…別に意識すること無く手のひらを差し出し
手相を見てもらうんだろうか…そんなことを考えてると
「良くないこと…起こる…」
占い師がそう告げるのを聞いて
「…え?」
ここで目が覚めた
「夢か…いや夢で良かった…」
ひとまず安堵はしたけど…後味の悪さに少し眠れず
寝汗がひどいことに気が付いたので…着替えないといけないと思い
下の階に降りていくと…深夜二時だというのに居間に明かりが
両親が何か話しているようだ…思わず聞き耳を立てていると
「あの子の幸せは…いい大学を出ていい会社に勤める…
これ以外何があるっていうの?」
「それはそうだが…果たしてそれだけが…」
母親はいつもの調子だったのだけど…父親が珍しくこのことに
触れているので…思わず注目していると
「自分が貧乏暮らしをしてきた訳じゃないけど…あの子には
そんな苦労はして欲しくないと思うの…」
「そうだな…」
いつもの満足げな笑みとは全然違う…苦虫を噛み砕いたような
父親の表情が印象的だった
きっと何か言い足りないことが…まあそれを聞いても…
気が付かないよう注意して着替えを済ませ
その日はそれからスッと眠りに落ちた
学校が終わり塾の時間だ…考えてる間も無く到着し
毎日同じ顔ぶれなので…勝手に知り合いになっていくものだと
最も皆が皆ライバル意識をむき出しにする場所ではあるので
どこか手探りの感じは否めない…そんな中でも
あまり親しくしようと思わない人に限って話しかけてくるものだ…
そんな友人…いや友人なのかどうか…そんな風に思ってる男が
近づいてきて
「勝…お前最近やけに成績が良くなったじゃないか
何か特別な勉強の方法でも見つけたのか?」
「いや…そんなことは…」
この男にも名前がある…なので名前を呼びたいとは思うんだけど
実のところ…いじめに近いひどい嫌がらせを受けたようなこともあり
意図的に名前のことは考えないようにしている
「何かあったら教えろよ…俺たち仲間だろ?」
「そうだね…」
仲間か…一体どこからが仲間でどこからが他人なんだろう…
そんな嫌な印象をこの男はいつも持ってくる
そうすると…決まってある女の子に声をかけることにしている
「昨晩何だか妙な夢を見てね…」
「え?夢って…」
「何故だか占い師の人に手相を見てもらい…」
「うん」
「良くないことが起こるって…」
女の子は少し顔が青ざめたような表情を見せたかと思うと
「私も似たような夢を…」
「えっ?」
「でも良くないことが起こるとか…そんなことは言われなかったわ」
「そうなんだ」
「何でも欲しいものが手に入るって言われたの…だから
雑貨屋さんに入って…片っ端から買い物しちゃった」
「そんなことが…」
同じ夢を共有している?いや単に偶然なんだろう…しかし…
「だから今日はちょっといい気分…夢から覚めたときは
ガックリきちゃったけどね」
「そう…」
いつもこうして自分から声をかけてるから…気があるって
思われてるんだろう…でもいつも雑談で終わってしまう
これもまたパターン化された日常か…
あの男とはまた別の…少しの落胆を覚えるのも毎回なので
塾での授業を終えると…少しばかり急いで帰路についた
これもまたいつものように夕食を済ませ
どこかしら慌てた気持ちでベッドに横たわる
そう…昨日のあの出来事だけが…夢とはいえ
非日常を感じた貴重な体験だったかもしれない
今日も…
どこか恐怖の気持ちもありながら…夢の続きをどうか
見れますように…
祈るような気持ちで眠りに…
…これは…またあの道だ…
今回は夢を見てるという感覚がある…この気持ちをどう表現すれば
いいのか分からず…占い師に近づいていく
手を差し出し…答を待つ…すると
「良くないこと…起こる…しかし…」
「しかし…」
「心がけ次第でそれを変えることが出来る」
「えっ?」
ここでハッと目が覚めた
前回とは違い…寝汗もかいてないし…冷静は冷静のようである
「心がけ次第…」思わずそれを復唱してしまい
前日は寝不足であったので…すぐさま就寝してしまった
起きたらまたいつもの日常だ…そう思いつつ
顔を洗おうと洗面台に向かう
いつもは割と乱雑に扱ってる歯ブラシやコップなどを
丁寧に取り扱ってる自分に気がついた
「これって…」
同じような気持ちで…しかし今度は意識して朝食を取ってみると
いつもよりやはり違う感じ…味や感触がより鮮明になっていると
でもいうのか
「心がけ次第…パターン化された日常…」
この2つの事柄が…どこか繋がっている
直感としてそんなのが出てきたので…そのことに注目していると
パターン化された日常…そのことに対しどこかしら平凡で
単純な作業の繰り返し…嫌というのか良くない印象だったけど…
心がけ次第…そう…このパターン化されたものって…
ここまで考えて…そのパターンを繰り返すことが…
「周りは何も変わらない…だけど心がけ次第で…」
自分の境遇に不満を持っていたのは…間違いだ…
頭をハンマーで殴られたような衝撃を受ける勝
「やりたいことが出来ない訳じゃないし…」
そう呟いたと思うと…まず思ったことは
「あの子…欲しいものを片っ端にって言ってたけど…
何が欲しかったんだろう…思い切ってそれを聞いてみようかな…」
もうあの夢は見なくてもいいかもしれない…でも…
パターン化されたという思い込みを捨てることに対し
どこか躊躇しているような…複雑な感情が込み上げる
「まあ…いきなりそれもね…」
少しばかり足取りも軽く…学校へ向かう勝だった
おしまい
日常というのも考えてみると
その時間面白いことをやったらいいのかなとか
そんなことを自分なりに伝えたいと思いました
読んで頂いた方へ
お疲れ様でした