深層人格
2016年。
9月。
横浜。
21時。
club。
ダーツ。
蔡羽 (さいばね)「はあ・・だりい」
田中「おいおい大学もそろそろ卒業だってのにお前ってやつは」
蔡羽「っるせえなあ・・」
田中「ははは!そうだ!明日さ!皆で肝試し行くんだけどお前もどう?」
蔡羽「はあ?んなのに行くか馬~鹿」
田中「へえ~あっそ!可愛い子4人来るんだけどなあ・・んで男は3人なんだけどなあ?」
蔡羽「え・・」
田中「そうか、そうかあ・・行くか馬~鹿かあ・・」
蔡羽「あ~・・ごほん・・ま、まあ・・行ってやらん事もー」
田中「ん~?はいはい、行かないのね~」
蔡羽「おいおい!行く!行かせて頂きます!」
田中「はははは、素直になったじゃねえか」
蔡羽「ははは、んで?誰々行くんだ?」
田中「それはお楽しみ~」
蔡羽「っは~?・・ったく・・本当に可愛いんだろうな~?」
田中「任せとけって!」
蔡羽「・・分かった・・お前を信じるよ」
田中「ふふん!予言してやる!絶対お前は俺に感謝する事になるぜ」
肩を組む。
蔡羽「はあ?」
田中「まあまあ、お前バイトしてねえし、明日の19時に桂木公園な!車は俺の兄貴の借りてくっから」
蔡羽「ああ、分かった」
田中「んじゃな~」
別れた。
蔡羽「・・」
田中「でよ~・・はははは」
田中は他の友達と飲んでいる。
蔡羽「俺には・・真似出来ないコミュ力だな・・〈ヒュ、カ!〉」
?「んねえ?飲んでる~はねはね~」
蔡羽「それ止めろってんだろ、蒔絵 (まきえ)」
蒔絵「いいじゃん、一回寝た中じゃあん♡はねはね~♡」
蔡羽「あれは同じ部屋で、酔って朝一緒だっただけだろうが!人聞きの悪い!」
蒔絵「あのまま・・やってもよかったのよ♡、私あんたとだったらー」
顔を近づける。
蔡羽「やめろ・・」
肩を掴み、離す。
蒔絵「あんもう~釣れない~んでもそこがいいん~♡」
蔡羽「俺は・・」
蒔絵「解ってる、あんたは私みたいな女には興味ないもんね~」
蔡羽「・・帰る」
上着を取る。
蒔絵「・・ばいば~い〈ヘラヘラ〉」
蔡羽「・・」
玄関に向かい歩く。
田中「お?サイ?もう帰るんか?」
蔡羽「ああ」
田中「んじゃ明日な、忘れんなよ~」
蔡羽「ああ〈バタン〉」
蒔絵「〈ジュボ・・スウ〉・・スハア」
タバコ。
?「蒔絵さ~ん、この子達と話してたんですけど~彼~凄い格好良いじゃないですか~彼女とか居るんですか~?」
5人の女の子達が蒔絵に話して来た。
蒔絵「あ~駄目駄目、あいつすっごい堅いから!無理無理、そこら辺の適当に食った方が無駄な時間とらないよ」
?「え~?そうなんですか~?彼女は居るんですか~?」
蒔絵「・・ふう・・〈ガ!グイ!〉」
?「ひいい!?」
蒔絵「いいか?その空っぽの頭の中にこの言葉だけ突っ込んどけ」
?「は・・はい」
蒔絵「あいつにちょっかい出していいのは、あたしと死んだ沙織だけだ、メンツ集めてシメっぞ?」
?「す・・すいませんっした・・〈バッ!〉ひい・・」
蒔絵「分かったら行けよ・・今日はあたしもう帰っから」
?1~5『し、失礼しましたあ・・』
蒔絵「・・」〈バタン〉
?1「蒔絵さん怖・・」
?2「やべえ」
?3「だから言ったじゃん」
?4「いけっかなって思ったんだよ・・」
?5「でも・・何でハネさんの事になるとあんなに怒るんだろ?」
田中「それはね~・・」
?1~5『わ!?』
田中「蒔絵は・・あいつに借りがあんのさ・・」
?2「借り?」
田中「そ!だから・・蔡羽に相手にされなくても・・言い寄った時点でアウト~・・だからね?ふふ・・俺の紹介がなければ!」
?1~5『ざわあ』「ええ!?雅彦 (まさひこ)さんの紹介があればいいんですかあ?」』
田中「もちのロン!」
?1「ええ~じゃじゃあ、これLineです~」
?2「あたしのも~」
?3「あたしもあたしも!」
田中「はいは~い、承りましたとも~まあ・・これを受け取るかは本人次第って事でOK~?」
?1~5『はいOKで~す!』
田中「ははははは」
2時間後。
駅。
電車待ち。
田中「お前らみたいなの紹介する訳ねえじゃん・・俺が遊んでやるっての、全員登録完了~・・メモはポイっと」
ゴミ入れ。
深夜1時。
新築アパート1階。
酒。
蔡羽「〈グビ、タン!〉ふう・・何で出て来ねえんだよ・・くそ・・あの時・・何で・・沙織じゃなくて蒔絵を助けたんだ!?・・くうう・・くそ・・くそおお・・出てこいよおお・・答えろよおお・・お・・おおおお・・お”お”・・」
床に寝そべり、泣いている。
翌朝。
〈チュン、チュン〉
蔡羽「・・」
コンビニで朝食。
立ち読み。
パチンコ。
3万勝った。
あっという間に18時。
桂木公園。
蔡羽「・・」
公園には誰も居ない。
ベンチに座りながらスマホ。
〈ブロロロオ・・〉
田中「お~い、蔡羽来たぞお~」
蔡羽「ああ」
アルファード。
車に乗り込む。
大田 (男)「よう、お久!学科以来だな」
宮根 (女)「久ぶりい」
冴島 (男)「お前痩せた?」
空田 (女)「うん、少し痩せたっぽいよねえ」
花園 (女)「・・はいはい皆、騒がないの」
加護之咲 (女)「こんにちは、初めまして」
蔡羽「〈ドキン〉あ・・ああこんにちは」
余った席は加護之咲の隣り。
田中「〈にやにや〉さ!では~出発~」
町並み。
田んぼ並み。
山道。
トンネル。
怖い話しで盛り上がる。
加護之咲と蔡羽以外は付き合っている。
空田と鮫島。
花園と田中。
大田と宮根。
この企画は加護之咲と蔡羽とをくっつける事が目的。
加護之咲は美人だが、お人好し過ぎる部分が強すぎる為、良い不良グループから常に守られている立場。
蔡羽は過去の事件の英雄の為、コイツならという事になった。
進む怖い話し。
蔡羽も話す。
蔡羽「それで・・そいつは、おもむろにこう言ったんだ・・だって・・そいつら・・2日前に死んでるし」
加護之咲「ひゃあ!?」
全員『・・ひゅうう~~♪』
蔡羽「あ・・ごめん怖すぎた?」
加護之咲「・・蔡羽君、話し方上手いから・・余計に怖い・・」
蔡羽「そ・・そっか・・ごめん」
加護之咲「ん~ん、いいの、気にしてくれてありがとう〈ニコ〉」
蔡羽「〈ドッキン〉あ~・・ああ・・」
慌ててそっぽ向く。
全員『〈にやにや〉』
大田「さ・・次はー・・」
運転手田中「おい・・そろそろ着くぞ」
全員窓を見る。
花園「・・け・・結構不気味ね・・」
加護之咲「真っ暗・・」
大田「・・」
宮根「・・怖い」
冴島「何言ってんだよ、怖がる為に来たんだろ?だらしねえなあ皆」
空田「あらあ?そんな事言っていいの~?」
冴島「ああ?」
空田「だってあんたが一番ビビリじゃあん、この前だってー」
冴島「ば!馬鹿!」
空田「少しおしっこ漏らしてさー」
全員『ええええ?』
冴島「馬鹿!言うなよ!信じらんねえ!」
空田「あの時下着買ってやったのは誰かなあ?いつお金返すのでしょうかあ?」
冴島「分かった!分かったから!勘弁してくれ!」
全員『はっはっはっはっはっは』
田中「おい着いたぞお」
全員車から降りた。
廃病院。
結構大きい。
〈ヒュウウ・・〉
殆ど風は無い。
生温い風が漂っている。
新品の電池、懐中電灯で全員分。
田中「さ・・行くぞ・・」
全員でゆっくり進む。
玄関のガラスは全て割れ、隅に寄せてある。
誰かが掃いたあと。
蔡羽「・・?」
加護之咲は花園にくっついている。
蔡羽「・・」
暫く進む。
一階を堪能した一行。
今度は上か下かの別れ道。
田中「4人に別れよう〈パチ〉」
蔡羽にウインク。
蔡羽「・・」
田中、花園、大田、宮根。
空田、冴島、蔡羽、加護之咲。
田中「12時半に玄関に絶対集合な?」
蔡羽「・・ああ」
別れた。
階段を降りている。
当然、加護之咲は離れて一人で歩く。
加護之咲「・・」
空田「・・咲ちゃん蔡羽にくっついていいんだよ?」
加護之咲「い・・いえ・・私は・・大丈夫だよ」
蔡羽「・・」
空田「・・そ?」
冴島「・・うおお・・〈ガタガタガタ〉」
空田にしっかりくっつく。
蔡羽「・・」
観察。
違和感。
所々綺麗だ。
埃がない箇所が目立つ。
蔡羽「・・」
地下一階。
〈ガチャン、キイイイー・・〉
湿気がある。
独特な匂い。
結構長い通路だ、広い。
冴島「うおー・・・・やっべえ・・」
蔡羽「・・行くぞ」
空田「待ってよお」
〈バタン〉
途中色んな備品庫?がある。
扉には鍵がかかっていた痕があるが、壊されていた。
いちいち中を覗いていく。
一番奥まで来た。
遺体保管所、というプレート。
空田「うわあ・・あったよ、本当にあんだねえこういうの」
冴島「うおおお・・やっべえ・・〈ガタガタ〉」
蔡羽「・・」
加護之咲「・・ねえ止めようよ~・・〈ガタガタガタ〉」
蔡羽「・・〈チキ〉」
ドアノブに手をかけた。
〈ガチャン・・キ・・〉
開くようだ。
全員目を合わせる。
蔡羽「・・開けるぞ」
空田「う、うん」
冴島「やっべえ・・」
加護之咲「ええ~・・」
蔡羽「・・」
半分開けた途端。
冴島「うわああああああ!!」
空田「キャアアアアアア!!」
加護之咲「イヤアアアア!!」
冴島と空田が何かにビックリして駆け足で逃げた。
加護之咲は座り込んだ。
蔡羽「大丈夫だって!!おい!おお~~い!」
2人は行ってしまった。
階段の所の扉が開き、閉まった音が響く。
加護之咲「・・ひ・・ひ・・ひっく・・ひ・・」
蔡羽「・・はあ・・人形だよ」
加護之咲「・・え・・人形?」
蔡羽「ほら・・見て・・ただの人形だって、きっと誰かが悪戯で置いたんだよ」
加護之咲「・・」
上を向き、恐る恐る全開の扉の中を見る。
そこには白いドレス?を着た黒髪ロングのネキンの人形が一体ある。
蔡羽「ほら〈ドン〉」
〈カチャアアン〉
簡単に倒れてしまった。
加護之咲「ひ!?」
蔡羽「ね?・・だからほら・・早く立って・・あいつらの所へ戻ろう?」
手を伸ばす。
加護之咲「・・うん」
蔡羽の手を掴み、立ち上がろうとー・・。
加護之咲「・・?」
立ち上がろうとするがー・・。
蔡羽「・・?どうした?」
加護之咲「・・先に・・行ってて、直ぐに追いつくから」
蔡羽「はあ?んなの出来る訳ないだろ?」
加護之咲「いいから!」
蔡羽「・・腰が抜けて立てないのか?なら肩を貸すよ?」
加護之咲「いいから放っておいてよ!」
怒鳴る。
蔡羽「うお!?ビックリしたあ!」
加護之咲「・・うう・・ひっぐ・・ひっぐ・・」
蔡羽「・・はあ・・どうした?・・言ってくれないと・・分かんねえよ」
加護之咲「・・ひっぐ・・ひっぐ・・」
蔡羽「・・」
加護之咲「・・誰にも言わないで?」
蔡羽「・・ああ」
加護之咲「・・おしっこ・・漏らし・・」
蔡羽「・・そっか・・」
加護之咲「・・〈コクン〉」
蔡羽「換えは?・・ない・・よな・・」
加護之咲「・・〈コクン〉」
蔡羽「・・下着は山に捨ててさ・・ノーパンで帰るしかないよ・・持ってたら匂いがあるし」
加護之咲「・・〈コクン〉」
蔡羽「脱ぐ事出来る?足動く?」
加護之咲「・・〈コクン〉」
蔡羽「・・そっか・・んじゃあ・・少し離れるから捨てるの無理なら俺が捨てるよ」
加護之咲「・・有難う」
蔡羽「・・別に・・開けたの俺だし・・ごめんな」
加護之咲「・・サイ君・・優しいね」
蔡羽「・・誰でもこんな状況じゃそうするって」
加護之咲「・・ふふ」
蔡羽「・・じゃ・・離れるよ・・脱いだら言って」
加護之咲「うん」
1分後。
加護之咲「脱いだよ」
戻り、下着を持った加護之咲に肩を貸す。
加護之咲「ごめんなさい」
蔡羽「もういいって」
一階に戻った。
スポンジが飛び出したソファに加護之咲を座らせ、下着を受け取り、山に捨てた。
戻る。
加護之咲が居ない。
蔡羽「・・は?」
見渡すが・・居ない。
蔡羽「馬鹿な・・あいつは・・腰が・・・・お~い!」
〈シーーーン〉
蔡羽「おいおい・・お前らあ!いい加減にしろよお!」
〈シーーーーーン〉
蔡羽「・・」
玄関を出て・・車の元へ。
車はあった。
だが誰も居ない。
車の周辺も探すが・・誰も返事はない。
蔡羽「・・おいおい・・マジかよ・・マジか・・マジかマジか」
走った。
廃病院に戻る。
蔡羽「お~い!!お~い!!マジで止めろってえ!!お~い!!心配してんだぞ!!おおおいい!!」
駆け回る。
《シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン》
蔡羽「・・」
静か過ぎる。
蔡羽「・・」
〈ヒュウウウウウ〉
蔡羽「・・落ち着け・・落ち着け・・ふう・・ふう・・スウゥゥ・・・ハアア・・」
蔡羽「・・とにかく警察に電話・・っとその前に・・警察電話するからなああ!!捜索して貰うぞお!?」
《シーーーーーーーーーーーーーーーン》
蔡羽「あと10秒!9ー、8ー」
《シーーーーーーーン》
蔡羽「2ー、いーち!・・ぜーろ!」
《シーーーーーーーーン》
蔡羽「まじかよおお・・〈ス〉」
スマホを取り出す。
圏外。
蔡羽「ちょ!?はあああ!?マジかよお?」
〈ヒュウウウウ〉
〈ブフォオオン〉
蔡羽「!?」
車の音だ。
蔡羽「~~~~あんの馬鹿共がああ!」
急いで車に駆ける。
蔡羽「はあ、はあ、はあ、はあ」
エンジン、ライトが点いている。
蔡羽「ったく~・・お前らなあ・・・・!?」
誰も・・乗っていない。
蔡羽「・・はあ?」
もう一回、しっかり見るが・・誰も乗っていない。
蔡羽「おいおい・・ま~だ足りないのか~?ったくいい加減に~・・・・・」
気づいた。
この辺りは山以外には隠れる場所はないという事に。
そして山に向かうには玄関前を通るしかないという事に。
玄関前は色んな物が散乱しており、物音一つ立てずに移動は困難だという事に。
そしてさっき自分は走ってきたのだ。
車から降りる時の音も・・百歩譲って、聞こえなかったとしても・・あのタイミングで10秒足らずで駆け抜け完璧に隠れる事などー・・。
蔡羽「・・(不可能だ)」
〈ひゅうううう〉
蔡羽「人間じゃねえな・・出てこい!姿を見せろ!」
〈ひゅううううううう〉
〈カチカチ〉
ウインカーが点滅。
〈ピーーーーガーーーー〉
ラジオがつく。
〈さあ次は新作の曲を引っさげてのご登場~ネックスのおおおおおおおガガピュギインイインイイイイ・・こ”ろ”し”て”え”え”え”キュインガガアあアアあアアア・・な”ん”え”え”ガガガ・・こ”ろ”し”た”の”おおおおおピギュガガアアアアア・・ガガガガガ・・〉
蔡羽「皆を返せえええ!!さっさと返せ馬鹿!!」
車に向かって叫ぶ。
蔡羽「お前はここに居ちゃいけないんだよ!さっさっとあの世に行けやひ!?」
車のライトの間に女が立っている。
蔡羽「〈ガタガタガタガタ〉・・み・・皆をー・・か・・かえ・・」
よく見ればー・・。
蔡羽「!?お・・お前・・あの時の人形!?」
地下室の死体保管所にあったあの人形のシルエット?
《お・・おおおお・・・あが・・あがが・・うえええええ・・痛い・・痛いよお・・》
車の周りに見える。
沢山の悲惨な怪我や、火傷、損傷した幽霊達。
逆光でよく見えないがー・・確かに車の脇に沢山蠢いている。
その真ん中に。
両ライトの間に居る女のシルエット。
蔡羽「〈ゴクリ〉・・はあ・・はあ・・お!お前えええ!!お前早く返せよお!!お前と俺達は何も関係ないだろおおがああ!!やつ当たってんじゃねえよおお!!殺されたんなら犯人を恨めよおおお!!俺達は何にも」
《パ》
蔡羽「!?」
ライトが消えた。
《パ》
また点いた。
女はさっきより近づいていた。
蔡羽「っひ!?」
《パ》
また消えた。
《パ》
女のマネキン顔が目の前に。
蔡羽「ひいあああああ!?〈ズシャア〉」
尻餅。
マネキンの開くはずのない口が・・〈ギギギ〉開きー・・。
マネキン「い”い”あ”・・あ”あ”・・あ”あ”あ”あ”あ”」
蔡羽「うき”ゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あああ・・あ・・」
下を向いて・・身動き一つしない。
気絶したようだ。
マネキン「あ”あ”あ”あ”〈ガ〉」
足を掴み、〈ずる、ずる〉
廃病院へ引きずって行く。
地下室。
埋められた壁。
〈ズズズズズ〉異界への扉が開いた。
マネキン「あ”あ”あ”どうし・・てえ・・どうしてえ・・こんな目にいい・・どうしてえ・・」
〈ずる、ずるう〉
蔡羽を引きずり中に入って行った。
手術室だった。
小さいライト。
看護婦1「準備出来ました先生」
医者「はいよ、さあさあ、大人しくしててねえ、直ぐに終わるからねえ・・麻酔はないからごめんなさいねえ」
冴島「うぐううう!!うぐふうううう!!」
台の上。
革のベルト?を口にされて、四肢もベルトで固定されている。
他の全員はビニールで縛られ、台の傍に膝を立て怯え座っている。
冴島「うごふううう!!ん”ふ”~~~~!!〈ガチャガチャ〉」
医者「ああ・・いいねえ、活きがいい!実にいい内蔵が手に入りそうだあっはっはっはっは」
看護婦1~5『うふふふあはははは』
医者「押さえろ」
《ガッシ》
看護婦達から抑えられる。
冴島「んぶうううううううううううう!?んぶんぶううううううううう!?」
空田「ん”ん”~~~~~」
全員ビニールで四肢と口を結ばれている。
《ずずずずず》
そこへマネキン、蔡羽登場。
医者「おや・・はははは、まだ居たのかい?はははは、おい」
看護婦2「・・はい」
看護婦2が蔡羽に紐を結ぼうと近づく。
マネキン「どうして・・どうしてえ・・」
医者「じゃあ・・早速切り開こう・・メス」
看護婦「はい」
メスを手渡す。
看護婦2「うぎゃああああああああ!?」
全員『!?』
振り向くとそこには立ち上がった蔡羽と・・喉を押さえ、苦しみながら立ち暴れる看護婦2。
看護婦2「あ・・ああ・・ああ〈ガチャン・・ガチャアアン〉」
看護婦2は器具を巻き添えに倒れた。
医者「な!?何だ?どうした?」
看護婦2「あ・・〈ビクンビクン〉」
黒い液を喉から流し、痙攣している。
医者「一体何がー?」
蔡羽「・・」
手には釘。
〈ポタ・・ポタタ〉
釘から黒い液が滴っている。
看護婦1、3~5『「何やってるんですか!?」「ほら患者さんはちゃんと待ってくださらないと」「困りますよ大人しくしてくださー」』
看護婦全員駆け寄る。
蔡羽「・・〈ヒュバババ!〉」
まるで軍隊の動きであっという間に4人の喉をブッ刺した。
看護婦達『「ああ!?」「うっご!?」「あぐ!?」「うぐえ!?」』
《ドシャアア・・ガチャアアアン・・ガララアン・・パリイン・・カララン・・カラン・・》
医者「ひ!?ひいいい!?」
田中「ひ、ひい」
蔡羽「・・〈ズチャ〉」
黒い液体の上を歩いて来る。
医者「ひはははは・・お注射だよおおお〈ババ!〉」
注射1本で襲いかかるがー。
蔡羽「・・」〈ヒュパアン!〉
みぞおちへ蹴り。
医者「ひゅごおおおおお!?〈ズシャ〉」
膝を着く。
蔡羽「・・〈ズチャ〉」
医者「何で・・ここで・・動け・・る?・・どう・・して・・人間の・・癖に・・俺達を・・殺せる?」
蔡羽「・・〈ジャリ〉」
医者の前に屈む。
真正面。
顔が見える。
別人。
顔は同じだがー・・。
雰囲気が別人。
優しさが微塵もない。
皮肉ったニヤついた表情。
口だけニヤつき、目は睨んでいる。
医者「お・・お前・・とり憑いてるのか?・・何故邪魔をするう!?何故だああ!?」
仲間『・・』
やり取りを見ている仲間達。
蔡羽「・・勘違いすんな、俺はコイツだ・・同じさ、ただ・・同じ体なだけだ」
医者「ひぇい!」〈ヒュバ!〉
注射を刺そうとー・・。
〈パシ、グルンブス〉
腕ごと動きを制し、医者の胸に刺した。
医者「はっへああ!?」
蔡羽「どうだ?注射の味は?・・ただ・・その注射はお前の 部 分 だからな・・本当は効かないだろう・・だから・・〈ヒュブスブスブスブス〉」
釘を喉2発、前頭葉に2発ぶち込んだ。
蔡羽「これで大丈夫」
医者「・・〈ドサアア〉」
禍々しい空間がー・・《シュオオオオオオオオ》ただの暗い手術室になった。
蔡羽「マネキン・・後は・・頼んだぞ〈ッフ〉〈ドサアア〉」
倒れてしまった。
仲間『んぶうううううう!?・・んぶぶううう!?』
冴島「・・〈ボーーーーーー〉」
マネキン「・・」《ずずずずずず》
壁から現れた。
仲間『んぶうううううううううううううううううううう!?』
蔡羽「・・ん・・・」
走るアルファードの中。
まだ真っ暗。
加護之咲「あ・・起きたあ!」
空田「ホウ・・良かったあ」
花園「・・ひっぐっひっぐ・・良かったあ」
田中「・・」
冴島「〈ボーーーーーー〉」
宮根「〈ボーーーーーー〉」
蔡羽「・・ここは・・あれ?・・俺どうして?・・ハ!?そうだ!アイツは?あの女は?」
全員『・・』
蔡羽「お前ら!?あれ?・・あれ?・・あれ?・・どうして?あれ?・・病院は?あれ?」
大田「落ち着けよ・・もう・・大丈夫だからさ」
加護之咲「・・何にも覚えてないの?」
蔡羽「いやいや!お前らがどっかに消えたから俺必死に探したんだぞ!?んでマネキン女が俺に近寄って・・ハ!?・・そうだ、そっから覚えてないんだ!・・どうなったんだ?一体どうなってんだ?」
加護之咲「えっと・・」
田中「止めろ!その話はしたくないし、今は聞きたくないんだ」
運転しながら怒鳴る。
全員『・・』
蔡羽「いやいや・・おいおい・・俺だけ仲間外れかよ!?つうかお前らやっぱり隠れて俺を脅かそうとしてたんだろ!」
冴島「んな訳ねえだろおおおがあああああああああああああ!!」
蔡羽「!?」
全員『・・』
冴島「う・・ううう・・うあああああ」
蔡羽「・・な・・何だよ・・そんなに大声出す事ないだろ・・」
冴島「う・・うう・・お前何なんだよおおおううう」
蔡羽「はあ?何が?」
田中「冴島!」
冴島「何だよ!コイツがおかしいんだろお!?」
田中「そのお陰だろうが!感謝しろよ!」
冴島「うう・・うううう・・何なんだよ・・何なんだよおお・・ちっくしょう・・ふざけんなよお」
田中「とにかく全員落ち着け、サイは後日詳しく話すから!今は大人しく座ってろ!運転出来ないだろ?・・な?」
蔡羽「・・ああ・・分かった・・でも後できっちり説明しろよな」
田中「ああ」
全員『・・』
朝日。
桂木公園・・別れた。
最後まで・・怯えた目で見られた。
翌日。
ファミレス。
田中「・・という訳だ・・信じられないだろうが・・俺だって・・絶対この目でみてなきゃ・・」
蔡羽「・・そうか・・出たのか・・」
田中「あの2年前のキャンプの・・事件は・・やっぱりお前なのか?・・犯人達を・・殺したのは」
蔡羽「・・分かんねえよ・・でも・・5時間かかる山降りを・・3時間で降りたんだぞ?犯人達を殺して、その後に山を降りてたら3時間は無理ってなったじゃねえか」
田中「・・ああ・・でも・・あの身のこなしなら・・もしかしてって・・そう思ったんだ」
蔡羽「・・プロでも無理なんだ・・俺には無理だよ」
田中「ああ・・そうだな・・もう止めよう・・済んだ事だ・・何か食おうぜ?」
蔡羽「ああ」
田中「(まあ・・蒔絵だけは・・知ってんだろうけどな)」
2年前。
夏。
山の上腹。
岩場と、林?が目立つ場所。
少し奥はもう森。
岩場でキャンプ。
沙織「ねえ、マキ~・・トイレ」
蒔絵「はいはい」
森へ向かう2人。
蔡羽「ん?お前ら何処に行くんだあ?」
蒔絵「お花摘みよ!馬~鹿!」
沙織「馬~鹿!」
蔡羽「・・トイレって言えよ馬~鹿!」
沙織、蒔絵『馬~鹿!んべえ!』
蔡羽「・・ったく・・〈ぶるる〉っと・・俺もか・・」
2人の方向と少し離れ蔡羽も森へ。
蔡羽「ふんふ~ん〈ジョボボボボ〉わっと・・やっべ・・靴にかかった・・ああもう・・後で洗おう・・」
その間に軍マニア連中が大学生を遊びで殺しまくる。
何も知らず戻る蔡羽。
〈きゃあああああ!〉
蔡羽「!?」
走る。
ボーガンを構える犯人1が見えた。
犯人の前には沙織、蒔絵。
少し離れている。
2人どちらかが撃たれる。
走る蔡羽。
極限の状況。
蔡羽「(沙織!沙織いいい!!)」
走る。
犯人1「ふひひ〈チキキ〉」
構え、引き金をー・・。
蔡羽「(間に合う!沙織に間に合う!上に覆いかぶさる!沙織だけでもお!!)」
その時ー。
チラっと見えた。
沙織側にもう一人の犯人の姿ー・・。
蔡羽「〈プツン〉」
蒔絵の方へ方向転換。
沙織「!?・・」
ショックの表情。
蒔絵「!?」
蒔絵、蔡羽が一緒に倒れる。
《ボボジュ》
沙織は2本の矢で後ろから頭、横から胸を打ち抜かれた。
蔡羽「・・」
蒔絵「 さ お り い い」
犯人達第2射を準備中。
また別の犯人が蔡羽達の後ろから斧で振りかぶって迫ってー。
蔡羽「・・」《ビュオン!》避け、金的へパンチ。
崩れる犯人。
斧を奪い、首に押し込み切った後に、〈バ!〉振り返り、大きい斧で遠くのボーガンの矢を〈ギン!〉ガード。
犯人達『!?』
走り、もう一射を避け、斧で、一人の足を〈ザン!〉切り、3M隣りのもう一人の装填済み、構えようとする犯人へ〈ヒュ!〉投げ〈シュガ!〉胸に当たった。
そのまま胸に当たった犯人の元へ走り、寝転び後ろに回って、足が切れた奴の矢を犯人の体で〈ヒュガン!〉ガード。
片足は装填は間に合わないと、ナイフを〈ヒュン〉投げて来た。
蔡羽はそれを屈んで躱し、斧を抜き、また投げた。
当たったが、刃物部分は当たらなかった。
すかさず走り寄り、また斧を取り、〈ジュガン!〉腰に振り下ろした。
3人殺した。
蔡羽「・・そこにいろ」
蒔絵「え・・あの・・」
蔡羽「いいな、そこにいろ〈ダ!〉」
斧を持って何処かへ。
その後。
テント内で震えている所を発見された。
他の登山客、キャンプしていた一般人達28人全員ボーガンで死亡。
周りからゆっくり確実に一人一人殺されていた。
生き残りは蒔絵と、救助を求めて山を降りた蔡羽のみ。
警察の特殊部隊がヘリで到着した頃の40分前ー。
息を切らし走る犯人最期の1人。
沢側を駆ける。
犯人11「っはっはっはっは・・何だあ!?っはっはっはっはっはんだあいつっはっはっはっはっは・・〈ガササ〉〈バサササ〉」
〈シュカ!〉
足に命中。
犯人11「あう!?〈ゴロンゴロン・・バシャアアン〉」
犯人11「あっぷ〈バシャバシャ〉」
〈カチ・・カシャン・・〉
高い位置から狙うボーガン。
犯人11「んだお前えええええ!!!!」
蔡羽「しー・・黙って・・狙いがずれそうだ」
犯人11「た、助けて!遊びだったんですうう!すいませんっしたあ!!」
蔡羽「ん?遊び?」
犯人11「!!そうっす!!負けましたあ!!負けですうう!!俺の・・俺達の負けでいいっすからあ!!このサバイバル大会はあんたの優勝っすうう!」
蔡羽「・・ふうん・・〈チャカ〉」
止めた。
犯人11「は・・は・・は・・ははは」
蔡羽「はは」
犯人11「はははは」
蔡羽「はははは」
犯人11「はははははは」
蔡羽、犯人11『はははははははは』
〈パシャ、パシャシャ〉
鑑識が写真を撮る。
刑事1「何でコイツだけ溺死なんだ?」
刑事2「さあ・・何ででしょう?」
刑事1「・・にしても・・なんつう顔で死んでやがる・・相当苦しんで死んだらしいな」
刑事2「ええ・・考えたくないっすね」
顔は小石で殴られまくり、所々陥没。
歯は全て折られ、目玉はなかなか大きい石を押し込まれていた。
だが最終的な死因は溺死だった。
犯人12人全員死亡。
斧、矢、ナイフ、で殺されていた。
田中「(蒔絵は何も知らないっていうし・・でも・・)」
蔡羽「うん、中々旨いな〈モグモグ〉」
田中「まあ・・いいっか」
蔡羽「ん?〈モグモグ〉」
田中「何でもねえよ」
崖上。
〈ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ〉
蔡羽「アリバイまで・・残り2時間10分・・楽勝だな」
ロープを使わずー・・。
〈ヒュオオ〉
飛び降りた。
〈トン、ヒューーートン、ヒュウウ・・トトン・・ヒュううう・・トン、トーーン〉
蔡羽「っはっははああ!!」
Fine。