离题:中国の北方・南方とその方言
日本でも一部の関西人が関東の言葉や東京の人を嫌ったりするが、中国の地域主義は更に強い。中国では北京などの「北方」と上海以南の「南方」(これもかなり議論の余地がある。安徽省などはどっちに入るかでモメたりする)で言葉や文化がまるで違う。
例えば北方では主食は麺だが、南方では日本と同じく米であるという話は日本でも有名かと思う。しかし実際のところ、北方人が南方のものを口にしないわけでも南方人が麺を食べないというわけでもないのでその限りではない。
しかし言葉に関してはやはり違うと言わざるをえない。中国には七大方言などと言われる方言の区分があるが、そのうち上海語や浙江・安徽・江蘇省の方言である吴语(Wu2yu3 呉方言)や福建省・台湾などで話される闽语(Min3yu3 閩方言) 、広東語に代表される粤语(Yue4yu3 粤方言)などは普通話の属する官話方言系の方言とは発音や語彙がかなり違う。例えるなら、インド・ヨーロッパ語族でいうゲルマン語派だのロマンス語派みたいな色々な語派があると思うとが、普通話と広東語の違いは英語とフランス語の違いのレベルだ。要は、語彙を共有しているとはいえかなり違う言語である。
ほんの少し紹介しよう。
・こんにちは
普通话(北京語) 你好 Ni3hao3 ニーハオ
上海话(上海語) 侬好 Nong hɔ ノンホー
台语(台湾語) 汝好 Lí hó リーホー
广东话(広東語) 你好 Nei5hou2 ネイホウ(レイホウ)
こういう感じで並べると分かるが、子音だと你の子音の「n」と好の子音の「h」(南方の方言ではNとLが同じ発音として扱われることも多い。湖南人が日本語を話すと「これ」が発音できず「こネ」になってしまう)、母音だと「i」と「o」みたいな感じで発音に共通点が見える。
しかしBe動詞(copula)に当たる「是」なんかは上海語では同じだが広東語だと「係 hai6 ハイ」になり発音どころか字も完全に違う。
・私は日本人です。
普通话 我是日本人 Wo3 shi4 Ri4ben3ren2 ウォーシーリーベンレン
广东话 我係日本人 Ngo5 hai6 Yat6bun2yan4 コ゜ーハイヤップンヤン
「我」はまだ上海語でも広東語でもngoなので発音的に共通点が見える。この点だとヨーロッパの言語でも同じような感じで、Iをあらわす言葉は発音が似ている。
英語 I
ドイツ語 ich
フランス語 je
スペイン語 yo
イタリア語 io
ロシア語 я(ya)
しかし上海語には「阿拉 アラー 『私の』の意味」というのもあるし、普通話の「他 ta1 彼」は広東語では「佢 keoi5」、上海語だと「伊 イー」になり「他」と似ても似つかない。上海語では母音や子音が豊富で、日本語のような濁音に加え「伐 va ヴァ 普通話の吗、日本語の『か』」や「是 ズー」のような摩擦音もある。
語彙も色々と異なっていて、例えば普通話の「在 zai4 ~にいる」は上海語では「辣辣 ララ または 辣海 ラヘー」になり、広東語では「喺 hai2 ハイ」になる。
・どこにいるの?
普通话 你在哪儿? Ni3zai4nar3? ニー ザ イナール?
上海话 侬辣辣阿里塔? ノン ララー アリタ?
广东话 你喺边度? Nei5hai2bin1dou6? ネイ ハイ ビンドウ?
こうなるともはや類似点は人称代名詞の「あなた」だけである。




