中国語の動詞は二字以上の組み合わせになると凶暴化する
やった! 中国語の動詞は語尾変化が一切ないぞ! これなら簡単なはずだ!
そう思っていた時期が、僕にもありました。
中国語の動詞は単独ではさほど難しくないが、二字以上の組み合わせになると面倒なポイントがいくつか登場する。
一つは「離合動詞」、もう一つは「結果補語」や「方向補語」といった「補語」である。
まずは、離合動詞から。
中国語の動詞は二字で構成される動詞も多い。
结婚 jie2hun1
留学 liu2xue2
日本人ならこの上の二つは読めるだろう。これらは日本語の「結婚」「留学」と同じ意味である。
しかし問題はこれらがみな動詞であるということだ。
ここに、先日出てきた「过 ~したことがある」を入れてみるとどうなるだろう。
结过婚 結婚したことがある
留过学 留学したことがある
「结婚过」や「留学过」ではないのだ。他にも「结个婚 結婚する」「留了学 留学した」という具合に、文法要素が二字の間に割って入ることが多々ある。
このような動詞を「離合動詞」と言い、一つ一つ覚えていかねばならない。というのも別に二字の動詞なら全部離合動詞になるわけではなく、
参加 can1jia1 参加过
发生 fa1sheng1 发生过
「参加する」も「発生する」も離合動詞にはならない。これはこの二つの動詞が「二字で一つの動詞」という構造だからだ。つまり「参」も「加」も動詞で、動詞が二つ重ねられているととらえるわけである。
さきほど紹介した「结婚」「留学」はともに動詞+目的語という構造なので、あくまでも動詞は前にある「结」「留」であると考える。
いやいや「婚」はともかく「学」は動詞じゃないか、とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれない。
もう少し分かりやすい例を出すと、
理发 li3fa4 髪を切る
→理了发 髪を切った
日本語の「理髪」から分かるように、「理」が動詞で「髪」が名詞だと言われればすっきりする。髪は別に動詞ではないので「理髪」を一つの動詞として扱うことはできないのだ。
これは、動詞を重ね型にしようとした時にも問題になってくる。中国語の動詞は二度重ねると「ちょっと~する」という意味になる。
你看看。 ni3kan4kan0
ちょっと見てみろ。
だがここで二字の動詞を重ね型にしようとすると、離合動詞のせいでパターンが二種類になる。「散步 san4bu4」と「研究 yan2jiu1」という動詞を見てみよう。
散散步 ちょっと散歩する
研究研究 ちょっと考えてみる 中国語の「研究」は学術的研究だけではなく、個人的なことに対しても使える
「散步散步」とか「研研究」とかは言えない。
しかし結局、正直一つ一つ暗記する以外に対処法が無いのが難点である。突然「睡觉」「生气」「说明」「解决」とか言われても、それが離合動詞なのかそうでないのかは日本人にはぱっと見ただけで判断できない。
次に、動詞の補語を見てみよう。
補語というのは動詞の後ろについて動詞に意味を添加するものである。大きく分けて「結果補語」「方向補語」「可能補語」「程度補語」の四種類である。
「結果補語」はその動作が行われた結果、~という状態になったという意味を表す。
「看懂 kan4dong3 見て分かる→読める」「听懂 ting1dong3 聞いて分かる」という動詞型と、「洗干净 xi3gan1jing4 きれいに洗う」「说错 shuo1cuo4 言い間違える」という形容詞型のものがある。
つまり中国語では別に動詞の後ろに直接動詞や形容詞を並べることができるのである。だが何でもという訳ではなくて、「在懂 いて分かる」とか「说干净 きれいに言う」とかは許されない。あくまでも熟語として存在しうるものに限られる。後ろに来るものも「清楚 qing1chu0 はっきりと → 说清楚 shuo1qing1chu0 はっきり言う」「饱 bao3 満腹になる → 吃饱 chi1bao3 お腹いっぱい食べる」といったものだけである。
「方向補語」はその名の通り、その動作がどこの方向へ向かって行われる動作なのかを表す。方向補語は動詞の後ろにつき、「上」「下」「进」「出」「回」「过」「起」「到」といったものがある。
飞机飞上了蓝天。
飛行機が青空に飛び立った。
「飞 fei1」は「飛ぶ」の意味だが、「上」がつくことによって「飛び上がる」というような意味になる。他にも「考 kao3 試験を受ける」を「考上」にする「考上大学 大学に合格する」という意味になったり、単なる「上」という方向以外のことも表しうる。
他にも「拿 na2 持つ」に「出」をつけると「拿出 na2chu1 取り出す」の意味になったり、「走」に「进(進)」 をつけると「走进教室 zou3jin4jiao4shi4 教室に入る」という外から中へという意味を加える。
そしてこれらの方向補語は「去」や「来」と二つで組み合わさって使うことも多い。
动 dong4 動く + 起来 → 动起来 動き出す
拉 la1 引っ張る + 进来 → 拉进来 連れてくる
活 huo2 生きる + 下去 → 活下去 生きていく
そもそも方向補語は動詞としても機能するので、「回 hui2 帰る、戻る」に「来 lai2 来る」をつけて「回来 hui2lai0 帰ってくる」という感じで使うこともできる。
方向補語は単純計算で二十七個(方向補語九個+複合方向補語十八個)の組み合わせがあるので、慣れるまでは使い分けが大変である。補語が分離して「回去 帰る」が「回家去 家に帰る」にもなる。
「可能補語」は上の二つと似て動詞の後ろに「了 liao3 ~しきれる」や「完 wan2 ~し終わる」といったものがつくのだが、その動作が達成されるかどうかという点に重きが置かれている。
例えば「做 zuo4 する」を「做完」にすると「し終わる」、「做不完 zuo4bu0wan2」では「し終わらない」になる。
「了 liao3」は前々回紹介したleとは違う発音で意味も違う。多く「不了」の形で用いられ、「做不了」にすると「できない」という意味になる。さきほど方向補語で紹介した「到」も「不到」にする「做不到」というとやはり「しきれない」とか「できない」という意味になる。
このように、中国語は動詞の後ろに補語を加えることで可能・不可能を表すことがある。
結果補語として紹介した「听懂」「看懂」も「听得懂 ting1de0dong3 聞いて分かる(ことができる)」「看得懂 kan4de0dong3 見て分かる(ことができる)」にして間に「得」を挟むと可能補語になり、より可能かどうかということに焦点が置かれた表現になる。
最後の「程度補語」は「様態補語」とも呼ばれ、その「動作をする様子が~だ」という意味になる。「长 zhang3 生える」という動詞は「长得 zhang3de0」にすると、「~は見た目が……だ」という意味になり、「她长得很漂亮 ta1zhang3de0hen3piao4liang0 彼女はとてもきれいに育っている→彼女はとても美しい」という言い方ができる。他にも「他说汉语说得很好 彼は中国語を話すのが上手だ」という感じで、「得」は前の動詞と後ろの形容詞をつなぐ役割を果たす。
△補足
ちなみに、「结婚了」「留学了」は言うことができる。なぜだろうか?
この「了」が語気助詞と完了の意味を兼ねた「了」だからである。
他にも「私は北京に二年住んだ」というのに「我在北京住了两年了」よりも「我在北京住了两年」といった方がすっきりする。前者は現在も住んでいるのに対し、後者は今はもう住んでいないかもしれないという意味的な微妙な違いがあるが、細かい違いなので会話だとあまり気にしない。
中国語では二つ同じ単語を重ねるときもあれば、連続するのを避ける時もある。
例えば「他说汉语说得」は口語では「他汉语说得」と言って前の「说」をなくす。こうすると見た目SOVのような文にも見える。