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中国語は意外と数を気にする

 アジアの言語には冠詞がない。日本語をはじめ、中国語、韓国語、モンゴル語、ベトナム語、タイ語など、ほとんどの言語に定冠詞も不定冠詞もない。そもそも定冠詞・不定冠詞という考え方自体がインドヨーロッパ語族の言語に限定されたものなのかもしれない。

 しかし、中国語には不定冠詞と少し似たものがある。


 古代有一位老人,住在华北,名叫愚公。

 昔ある老人が華北に住んでいた。その名を愚公といった。


 こういう時、大体中国語では「一」を抜かして「有位老人」や「有个人」のように書くことも多い。「人」の前につく量詞の「位」「个」はまるで英語のaやanのような不定冠詞のようだ。

 今日のテーマは中国語の数についてである。


 中国語には日本語と同じように数詞(中国語で「量词 liang4ci2」)があって、个は基本的には「個」と同じ役割を果たす。他にも「张 zhang1」「条 tiao2」「本 ben3」「位 wei4」「把 ba3」「片 pian4」「次 ci4」などなどたくさんあるのだが、意味の区分が日本語とじゃっかんズレているので一筋縄ではいかない。


 个 ge 一個、ないし一人など


 一个人 一人の人

 一个问题 一つの問題

 一个苹果 一個のリンゴ

 个は割と万能で、大体なんにでもつく。


 张 zhang1 平たいもの、日本語の「枚」など


 一张照片 一枚の写真

 一张纸 一枚の紙

 一张桌子 一つのテーブル

 一张床 一つのベッド


 条 tiao2 細長いもの、日本語の「本」など


 一条河 一筋の川

 一条裙子(裤子) 一着のスカート(ズボン)

 一条鱼 一匹の魚

 一条锁链 一本の鎖

 一条牛(狗) 一頭の牛(犬)


 本 ben3 本を数えるときに使う、日本語の「冊」に相当


 一本书 一冊の本

 一本词典 一冊の辞書


 位 wei4 敬意をもって人を数えるときに使う、日本語の「名」に近い。


 一位老师 一人の先生

 一位客人 一名のお客さん

 各位先生 みなさん


 把 ba3 つかめるもの、柄や取っ手のついているものを数えるときに使う


 一把椅子 一つの椅子

 一把菜刀 一つの包丁

 一把花儿 一束の花


 片 pian4 薄いもの、平たいもの


 一片肉 一切れの肉、薄切りのもの 一块肉だと一塊ひとかたまりになる

 一片水 一面の水

 一片面包 一切れのパン


 次 ci4 回数、日本語の「回」


 一次机会 一回のチャンス

 我见过他一次 一度彼に会ったことがある。

 

 往復する動作である場合「趟 tang4」を使って、「想回家一趟(一度帰省したい)」と言う。


***


 とまあ、こんな感じでたくさんの量詞がある。もちろんこれら以外にも他の量詞があり、名詞一つ一つについて覚えなければならないので面倒である。また一つの名詞でも性質によって違う量詞を使うこともある(さっきの一块と一片肉など、面包 mian4bao1 パンも「一個」「二個」と数えるときは一个、两个になる)。


 量詞はものを数えるだけではなく、文の調子を整える役割も果たす。前回紹介した例文をもう一度見てみよう。


 昨天我看了一部电影。

 昨日映画を見た。


 この文には「一部 yi2bu4」という量詞がついているが、別にこの「一部」はあまり意味がなくただ文を終わらせるためについていると言ってもいい。「昨天我看了电影」にしてしまうと後ろに文を続けなければならず、すわりが悪いからだ。

 同じような理屈で「我脑子里一片空白 頭の中が真っ白だ」「露出了一丝笑容 笑顔を見せた」という時も、「空白(真っ白)」とか「笑容(笑顔)」のような抽象名詞でも「一つ」として数える。


 他にも、量詞は名詞と指示形容詞の間に入ることもある。指示形容詞とは日本語でいう「この」とか「あの」で、中国語には「这 zhe4 これ、この」「那 na4 あれ、あの/それ、その」「哪 na3 どれ、どの」の三つがある。

 

 这三个人

 この三人


 那两条线 线 xian4 線

 その/あの二本の線


 そして数が一つの時は、間にある「一」を省略する。例えば「这一位」は「这位 この方、こちらの方」になる。

 他にも、「这只猫 只 zhi1 匹」で「この(一匹の)猫」という意味になったり、「哪位 どちら様、どの方」に至っては指示形容詞+量詞だけでも機能する。これだけ見るとまるで、フランス語の指示形容詞が名詞の性によって屈折するのにも似ている。しかし中国語の場合の問題は量詞の数が男性・女性の二つよりも遥かに多く複雑なことである。


 さらに一群马(馬の群れ)とか一双鞋(一足の靴)というように、グループや二つ一組のものも量詞で表すことができる。


 そして名詞の数についてだが、無論中国語には名詞の複数形はない。アジアの言語でも名詞の複数形を持つ言語はある。例えばタガログ語は普通名詞にangをつけると単数、ang mgaをつけると複数になるが、中国語は日本語と同じく全く複数形はない。「人」と書いた時、「人」は一人だろうが二人だろうが百人だろうが「人」であって、形は変化しない。

 しかしいくつか、何人か(数の少ない場合)と言いたい時は「些 xie1」をつけて「这些人 この人たち」と言うこともある。


 複数形ではないが、人を表す名詞にのみつく「们 men」という複数を表す接辞辞のようなものはある。「们」は「你们 あなたがた」「人们 人々」「学生们 学生たち」などの単語につくが、逆に具体的な数字がつくと「两个人 二人の人」と言わねばならず「们」は落ちてしまう。この点英語やフランス語の複数形とは違う。

 また、口語的表現では「你们两个 ni3men0liang3ge0 あなたたち二人」と「你们三个 ni2men0san1ge0 あなたたち三人」にそれぞれ特別な言い方があって、「你们俩 ni2men0lia3」「你们仨 ni3men0sa1」という名詞の双数形と三数形のようなものが存在している。

 それに加え、中国語の一人称複数は「(相手を含めた)私たち」か「(話し手を含めない)私たち」の二つを「我们 wo3men0」「咱们 zan2men0」で区別している。


 そして疑問詞でいくつを表す言葉には「多少 duo1shao3」と「几个 ji3ge0」の二つがあるが、これも数によって言い分けている。「多少」は十個以上あるような多いもの、「几个」は十個以下程度の数の少ないものに使う。

 

 你们学校有多少人呢? あなたの学校は何人いるの?

 你家有几口人呢?/几个人 あなたの家は何人いるの?


 このように、「多少人」と「几个人」では表す数の規模が違う。「何時?」なら「几点」を使うし、「これいくら?」なら「这个多少钱?」である。


参考

 日本人にとって難解な中国語について

 Why?にこたえるはじめての中国語の文法書

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