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中『原』式中文:中国語で『日』は禁句

 前回は主に中国語母語話者の日本語の間違いについて取り上げた。今回は逆に、日本人学習者の中国語の間違いを指摘してみたい。

 以前、日本のテレビ番組でも取り上げられていたが観光地のお店や高速道路のサービスエリアなどにある中国語訳にはトンデモないものも多いらしく、グーグル翻訳か何かでやっつけで訳した結果「ぶっかけうどん」を「颜射乌冬面」、「菜の花と蟹の辛子和え」を「强奸(ごうかん)()扔螃蟹芥末(かにわさびをすてる)」と訳すなどネタとしか思えない案件も発生している。さすがに前者は漢字を見た時点で気づいてくれ。

 日本人の皆さんは中国語を勉強すると、(中国人もそうだが)日本語にある表現をそのまま中国語で使ってしまうイメージがある。それで通じる場合はいいのだが、やはり変に聞こえる場合のもたくさんあるので、意識して中国人らしい中国語を使っていくように心がけるとより上手に聞こえるだろう。


●请多关照 よろしくお願いします!


 実はこれ、あんまり言いません。中国語では「よろしくお願いします」という言葉自体を使う文化が元々なかったようで、逆に日本人の影響で言うようになったのではないか。私の勝手なイメージだが、「请多关照!」とか「はじめまして 初次见面」といったフレーズは中国語覚えたての日本人ビジネスマンとか日本好きの台湾人がよく言ってそうな感じ。

 中国語には「いただきます」も「ごちそうさま」もないし、中国人は日本人のように「不好意思 すみません」とか「对不起 ごめんなさい」、「谢谢 ありがとう」もそんなに連発しない。日本と中国は近い国でありながら文化的に異なる部分も多く、身の回りに中国人の方がいらしたらぜひ実際にどうやって使うのか聞いてみてほしい。


●有没有()


 「か」はとりあえずその文が疑問文であることを示す便利な助詞で大体どんな文にもつけられるが、中国語の「吗 ma」は実は似て非なるポイントがいくつかある。

 まず、中国語には去不去(行くか?)、看不看(見るか?)といった反復疑問文があるのだが、こうした文に吗をつけることはできない。表題の「有没有()?(あるか、ありますか?)」は誤りで「有没有?」または「有吗?」が正解になる。理由はただ単に冗長だからだろう。長野県民の皆さんも「するしない?」とは言っても「するしないか?」は言わないと思う、たぶん。

 また、「か」は日本語では「何」といった疑問詞を使った文の末尾にも使うことができるが、「吗」はそれができない。「何が食べたいですか?」は「你想吃什么?」になり、「你想吃什么()?」は()()食べたいですか? Do you want to eat something? という意味になる。What do you want to eat?と言いたい場合、呢 neという語気助詞は使うことができて、「你想吃什么呢?」と言うことはできるが、こうやっていうとさっきより多少丁寧な感じになる。


※ただの余談


 余談だが、中国語の吗は男女関係なく使えむしろ丁寧な印象を与えるので、よく日本語覚えたての中国人の女の子が「明日●●するか?」「これ、食べるか?」みたいな日本語を使っているのをよく聞く。「ですか」「ますか」は丁寧だが、用言の基本形にそのまま「か」をつけると男みたいに聞こえるので止めた方がいいけどかわいいから許す。


●日本人()朋友


 日本人は何でも「的」をつけすぎである。私の日本人の友達の一人、私の家の前、私の学校の先生の娘さん……。「の」を二個でも三個でもつけて名詞句をいくらでも伸ばせるが、中国語はこの辺逆で、我的一个日本朋友、我家前边、我们学校老师的女儿という具合でどんどん「的」を省略する。

 そもそも「日本人の友達」というとその友達が日本人なのか、ある日本人の誰かの友達なのかハッキリしない(通常前者だと思うが)。英語ならJapanese friend(s)と言えばJapaneseは形容詞でfriendを修飾しており「日本人である友達、友達は日本人」という感じで前者の意味になる。

 そして中国語は英語と似て「日本朋友」「中国学生」と言えば日本語でいう「日本人の友達」「中国人の学生」という意味になる。中国語で日本語のように日本人()朋友と言ってしまうと通じなくはないだろうが、おそらく「日本人の誰かの友達、(話し手)の日本人の友達の友達」という意味になってしまうんじゃないだろうか。自分でも何を言ってるのか分からなくなってきたぜ。

 ちなみに、私の家とか私のお父さんとかも「我家」「我爸」でOKである。日本語で「私の」になるものを何でもかんでも「我的」と言わなくなったら初級卒業かな。


※余談

 日本語では名詞句を作るときに「の」を使いがちで、「英語の勉強を始めた」というつもりで开始英语()学习とか言ってしまう方もいらっしゃるかもしれないが、これも中国語的には开始学习英语になって的は要らない。そもそも「学习英语」は「英語を勉強する」という文にもなれば「英語を勉強すること」という動名詞的な用法でも使える。


●「了」≠た


 以前も何度か紹介したが、了は中国語学習者の永遠の敵である。了はぱっと見意味もなくついたりつかなかったりしているようにしか見えず、完璧にマスターできる人はおそらくかなり少ないんじゃないかというぐらいの曲者だ。

 日本人を含め、多くの非母語話者は例えばこんな間違いをしがちである。


・昨天()()。 昨日は熱かった(?)

・我()()()北京。 私は北京には行かなかった(?)


 中国人がこの二つの文を読んだら、下の文に関しては「北京には行くのはやめたんだな」と思われてしまうだろう。

 説明するとさらに混乱しそうなのでとりあえず答えだけ言うと、「昨日は熱かった」は「昨天很热」、「北京には行ってない/北京には行ったことがない」「我没去北京/我还没去过北京」になる。


※文法的解説を読みたい奇特な輩へ


 まず「昨天很热」だが、中国語の形容詞には基本的に時制がなく過去でも現在でも全部同じ形で表せる。日本語でいう「た」は大体過去の時制を表すのに使われているが、中国語の「了」は過去ではなく「完了」を表すからだ。つまり「热了」は「熱かった」ではなく「()()()()()」という意味になってしまう。

 そもそも日本語の「た」にも二種類あって、「熱かった」のような単純に過去時制を現すものもあれば、「あ、開いた! 打开了!」のような今まさにそういう状態に変わったという現在完了的な「た」もある。中国語の了にも後者の意味があり、例えば「冷场 (場が)白ける」という言葉があるが、誰かがつまらないギャグを言ったときに「冷场了 あーあ、白けちゃった」と言うわけだ。「了」は過去というよりはそういう状況に変化するというニュアンスである。

(他にも「暑すぎィ! 太热了!/热死了!」のような感じで単に強調の意味でつく了もある)


 次に、誤解している人が多いので書くが「了」の否定は「没」で、「没……了」とか「不……了」()()()()()ここに整理しよう。


 不去 行かない

 没去 行かなかった

 没去过 行ったことがない、行かなかった


VS


 不去了 行かなくなった、行かないことになった


間違い


 没去了 ないです。たぶん言いません。


★まとめ

 

 「了」を否定文にすると「没」が()()()()につき、後ろにあった「了」は()()()


●日 ≠ 日


 ハイ、これは私が以前やってしまった痛恨のミスです。

 中国語で日本語の「()」にあたる言葉は「日子」で、「一日」にあたるのは「天」になるのだが、この「日」という字、なんと単独で単独で使うとフ●ックという意味になってしまう。

 私中原はそんなことは知らずに中国人と話しているときに「我(的)日」と言ってしまって笑われたのだが、よい子の中国語学習者の皆さんは絶対に使わないでね。約束だよ?


※余談


 現代中国語では様々な字の発音が同化したために同音異義の音節が増え、それにともなって名詞には「子」「的」などの接尾辞がつくことも多い。日本人中国語学習者の皆さんは例えば「男」という漢字を中国語でそのまま使えば通じるだろうと思って「我是男」みたいな間違いをしがちだが、こういう場合「男人」「男的」「男生おとこのこ」など二音節で言わないと通じないことが多いだろう。nan2というと男だけではなく难(難しい)も南もあるからである。

 同じような感じで「桌子 zhuo1zi0 机、テーブル」「筷子 kuai4zi0 お箸」「杯子 bei1zi0 コップ」「绳子 sheng2zi0 縄」も通常二字セットで用いられ、単独一字で使うことはあまりない。

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