Ep3.
「ユウ!今日こそテメェを殺す!」
「天国に送ってやんぜブレイカー!!」
私たちがいた崖の下、血生臭い戦場を着ぐるみに引かれ走る。
足で地面を蹴る度に、グチャリネチャリと粘着質な音が耳中を支配した。
後から追いかけてくる黒ずくめの敵に、着ぐるみはチッと舌打ちして、片手に持っていた銃を頭上に掲げる。
黒く光るその細身の棒が、いつだって人を殺すことな出来るものだと教えて。ゾッと、背中が冷える感じがした。
パンッ
高く、上空に放たれた銃声。
まるで徒競走のスタートのように鳴り響いたソレに、敵の視線がこちらを向く。
「ちょ、何やってるんだよ!!敵増やしてッ…!!」
「黙ってろ新入り」
「アレがありゃここら一帯の馬鹿共を蹴散らせるんだが…」と、しかめ面のまま私を引いて走る。
アレ、とはいったい何なのか、聞こうとしたが一瞬のうちに、突拍子もない声が、崖の上から届いた。
「このぉっ、武器のスペシャリストっ、エービーさーまーをおっ呼びかねーっ?」
ハイテンションな声にハイテンションな動きで崖下に広がる急斜面を降りてくる――――――
「着ぐるみ?」
「だから猫だっつってんだろ」
虎柄の、これまた着ぐるみ―――ユウと同じ程の背丈のエビは、体操選手張りの宙返りを決めた後、やりきった顔(俗にドヤ顔という)で両手を上に掲げ、
「Hey!!」
「ヘイじゃねーよ早くサブ渡せ阿呆」
ユウの鋭いツッコミにて昇天した。
「うぅ、酷いよユウ。僕のコトそんなに嫌い?」
「嫌いどころじゃない、消えて欲しいくらいには敵対視してる」
「酷っ!」
まるで夫婦漫才を見ているかのような気分になる。戦場で、しかも戦闘中に、だ。緊張感のかけらも感じられないぞ、お前ら。
「ほい、サブ」
「ん」
「ちょ、ユウ…何するんだよ」
「…エビ、コイツ持っとけ」
「ほいほいー」
「え!?私荷物なのか!?」
「こっちきてねー」とエビに手を引かれ、再び崖上へと戻る。下を見下ろすエビの横顔は、何故だか輝いて見えた。
「んっと、キミの名前は?」
「…清川、鈴奈」
「んおぅ、んじゃ、リーリーだね!!」
いや、ちょっと待て。どういう関係でそんなニックネームがついたというんだ。
「せめてほかの名前にしてくれ」と頼むと、「リナリー」というファンタジー要素満載な名前に落ち着いた。
「見てごらん、ユウのステージが始まる」
そういうとエビはくるりと回って見せて、ウインクを一つして下を指差す。
大勢の敵に囲まれるユウは不適に笑って、拳を顔の前で止めて。
「天国にイくのは、テメェらな方だ」
その一言が、合図になって。
真下に投げつけられた爆弾が地面とこすれあった瞬間に、雷のような光が放出された。