#1『MEET』出会い
恋愛もの書いている自分ですが、恋愛が苦手です。
恥ずかしいんですよね、なんか。まあ、葛城は少し僕自身をモデルにしてますね。実際にはどうなんでしょうかね。お楽しみください。
ポツポツポツポツと、白く小さい風船が音をたてながら屋根の上や、傘に人に、木々に、それらを
携わえる町に降りかかる。
「ーでは、次のニュースです。今日の天気は雨、
気温は16℃、低気圧につき、主に東日本では夕方
まで天気が悪くなる可能性があります。お出かけの
際は傘をお忘れにならぬようご注意ください。
続いては、朝の占いコーナーへ…」
朝のニュースの音で布団の中からガサゴサと体を
起こしながら男は静かに平然とゆっくりと目覚めた
「う~ん…あー…」
クシャクシャの頭を左手でさらにクシャクシャに
しながら口にする。
「雨か…」
カーテンを開くとすでに雨は大雨となっていた。
玄関の端を見ると一つの傘立てカゴがあった。
中身は、0 だ。
目をパチクリさせる男はもう一度よーくそれを見る
しかし、何もない。
「ん~…と、傘どこに置いたっけ?」
ダイニングに掛けているカレンダーには0印が付いていた。
8月1日、日曜、講座あり
「やっばいなぁ」
男は、Tシャツにパーカーを着け、ジーンズをはくと髪を整え、食パンにかぶりつくとリュックサック
を肩にかけながら家を出た。
閑静な住宅街にある男の住む築二年の比較的新しい
マンションから西へ200mの近場に男の通う大学
東京第一理学制大学はある。
男はそこの一年だった。
男の名は葛城永斗、今まさに遅刻しようとしているところだ。
階段をかけ上り、3階にある第三講座室の扉を開く
「お、遅れて申し訳ありません」
周りで、ざわつく音が聞こえる。
だがそれもすぐに止んだ。
「君ねぇ、今何時だと思って…」
メガネをかけた50 代ぐらいの講師は男の顔を見ると
口を閉じた。
「………」
「え~っと、失礼しまーす」
アハハと頭を下げながら形だけは謝りつつ空いている中列の席に座る。
「ふう~」バッグをおろして、左の席に座る人物の顔を見る。
ストレートのツヤリとした黒髪に『美人』という顔立ちが合う美しい女性がいた。
女は葛城の視線に気付き、横を振り返る。
「あの、何か?」
「ああ、いや」
葛城は少し照れながらノートを取りだし、メモを
取る。
女は首を少し傾げながらも自信もメモを取った。
「では、次にサイクロトロン運動の説明について。
サイクロトロン運動とは一様磁場の中で荷電粒子が運動する場合…」
葛城の耳には講師の声は入っていない。
ノートを取るのを止め、チラッと横の女性を見つめる。
(キレイだなぁ)
なんてことを考えていた。
キーンコーンカーンコーン
講座の終わりを告げる鐘が鳴り響き学生徒はそれぞれ午後の講座までに食事を取ろうと食堂に向かう。
葛城の横にいた女も席を立ち向かおうとする。
葛城は女を呼び止めた。
「あの…!」
「…はい?」
やはり二回目なので警戒しているようだ。
「良かったらですね、自分と、その……」
言葉に詰まる。
葛城はあまり女性に声をかけるのは苦手なのだ。
「いいですよ」
女は意外な言葉を口にした。
「えっ?」
「食事、ですよね?私も一人なんで」
葛城は心の中で(やった)と、声を上げる。
「ささっ、行きましょう行きましょう」
女性の前を歩きながらにこやかに歩みを進める。
女は自分のペースで葛城についていく。
(一人なんで)
〇〇〇〇〇
食堂で二人はランチを取っていた。
「あー、美味しいなぁこれ」
「……」
女の食事は進んでいない。まだ半分も食べていないくらいだ。
「具合でも、悪いんですか?」
葛城が心配して声をかける。
「いえ、別に」
「そう、ですか…ならいいんですけど」
けども、女は食べようとしない。
キーンコーンカーンコーン
午後のチャイムを知らせる鐘が鳴った。
「時間みたいですね、行きましょうか」
女はコクりと頷いた。
やがて時間がすぎ帰宅の時となった。
「え~っと、お願いがあるんですけど…」
葛城はケータイを手にしていた。
「何ですか?」
「連絡先なんか教えてくれたら嬉しいかな~って…
いや、ほらね、せっかく知り合ったわけですし」
「なぜ、そんなことをするんですか?」
「はっ?いや、だから知り合ったんだし…」
「別れが来るくらいなら、出会わない方が
マシです」
………………
葛城は呆然と立ちつくす。
「ごめんなさい、それじゃ」
女は走り去る。
「待っ、待ってください!名前だけでも教えてくれませんか?」
女は背を向けたまま呟いた。
「水篶、篠原水篶です」
雨の中、篠原は走り去った。
これが自分と彼女の人物語の始まり
ー出会いだった。
#1『MEET 』 出会いEND .
#2へ続く。
読んでくださりありがとうございました。続きは早めに書き込んで行きますので応援よろしくお願いします。それでは、また。