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修行という名のおっぱい攻防!

 そこは、今はもう使われていない道場だった。

 かつては剣道道場だったその場所は、今は無人の空間と化している。

 いや。無人ではない。

 今は二人の人間が使用している。

 二人の人間しか使用していないと言うべきか。

 道場の面積に対して使用人数が明らかに合っていない。

 板張りの床には靴を履いたままの火錬と恵が向かい合っている。

 向かい合ったまま、張り詰めた空気を醸し出している。

「どうした? 動かないならこっちから行くよ。ちなみに次で四回目だからペナルティね」

「っ!」

 言われた瞬間、火錬の身体がびくりと跳ね上がる。

「はい、隙アリ」

「ひゃっ!」

 五メートル以上離れていたのにあっさりと火錬の懐に入り込んだ恵は、攻撃の代わりに火錬の胸を揉む。

 もみもみ。

「きゃああぁぁぁぁっ!」

 慌てて恵を引き剥がそうと棒を振り回すが、恵は簡単に押さえこんでしまう。

「えっ!? ちょ、何!?」

「折角だから寝技の対策もやっとく?」

「やらなくていいぃぃぃぃぃ!!」

 そのままぱたんと床に押し倒された火錬は、攻撃を封じられたまま更に胸を揉まれてしまう。

「うあっ! ちょ、それ以上は不味いってば師匠! 駄目!」

「えい」

「ひゃん!」

 最後に軽くつついてから、恵は離れてくれた。

「うんうん。弾力はまずまずかな」

「ううううぅぅ。今日だけで十回は揉まれてるし! 一体どれだけセクハラすれば気が済むのよ師匠ってば!」

 自分の胸を腕で隠しながら恵を睨み上げる火錬。

 それなりに感じてしまっているらしい。

 しかし恵は心外そうに腕を組んで鼻を鳴らした。

「勘違いしないでもらいたいな。誰がそんな小さい胸を好きこのんで揉むものか。火錬ちゃんが弱いから仕方なくペナルティ加算として揉んでやってるんだ。むしろ感謝してもらいたいくらいだねっ!」

「出来るかぁぁぁっ! そんな感謝をするくらいなら死んだ方がマシよ! というか鼻息荒いから! 言ってることと顔が全然一致してないから!」

「ひどい言いがかりだな」

「そう思うならまずそのわきわきした手をなんとかして!」

 まだ揉みたがっている恵の手を指さして指摘する火錬。

 わきわきわきわき、とその手つきは非常に怪しい。

「いやいや。揉みたい訳じゃない。うん。決して揉みたい訳じゃない。火錬ちゃんの修行のために仕方なく、うん、仕方なくさ! 今日は後何回揉めるかな~」

「うわあああん! 師匠ってば目的がすり替わってるよぉぉぉ!」

「そんな事はない。火錬ちゃんが強くなればオレに揉まれることもなくなるんだ。本気で嫌なペナルティが待ち構えているんだから火錬ちゃんとしても必死になれるだろう?」

「確かに必死だけど!」

「それに全く効果がないわけじゃない。朝から四回ミスに至る時間が少しずつ長くなっているじゃないか。本当に少しずつだけど、オレの動きや攻撃に対応出来るようになってきたってことだぞ」

「うう。効果的なのは身に沁みて分かってるけどこのままじゃ精神的に保たないよう!」

「ん? 単調な揉み方は嫌か? なんならベッドイン並にバリエーションを増やしてやってもいいんだけど」

「増やさなくていいぃぃぃぃぃっ!!」

「今度は服の中に手を突っ込んで揉んでいい?」

「絶対いやああぁぁぁぁっ!!」

「じゃあ頑張らないとね」

「死ぬ気で頑張るぅぅぅ!!」

 ……と、まあこのようなぐだぐだ空気の中で、二人の修行は続く。

 これで本当に強くなっているのだから色々と恐ろしい二人だった。


「あう……あうう……もう、駄目……」

「はい、じゃあ休憩ね」

 それから二時間ほど二人で戦って、火錬の方がギブアップした。

 ……朝からずっと小休止しか挟まずに戦っていたのだから無理もない。火錬の方は体力的というよりは精神的なダメージの方が大きいかもしれないが。

 ぜえぜえと息を切らせている火錬に対して、恵の方は平然としている。無駄な動きが多い火錬に較べて、恵は体力の消費が少ない。

 しかしそれでも普通は疲れる。これだけ動けば疲れるはずだ。

 しかし恵は息切れどころかほとんど汗もかいていない。

 床で無様に倒れている火錬を見遣りながら、その横にごろんと寝転がるだけだ。

 疲れたからではなく、単純に寝転がりたい気分だったのだろう。

 二人の顔が結構近くなる。

 恵の整った顔を眺めながら、火錬が問いかけた。

「師匠って何でそんなに強いわけ? 学生時代に何かやってたの?」

 火錬は恵が直純流古武術の継承者であることを知らない。だから恵がどういう人生を歩んできたのかも知らないのだ。

「学生時代というよりは物心ついた頃から技を叩きこまれてるからな。まあ火錬ちゃんとは年季が違うんだよ」

「うわあ。もしかして跡取り息子とか、そういうの?」

「いや。跡取りは兄貴。オレは気楽な次男坊かな」

「跡取りになりたいとか思わなかったの? そんなに強いんだったら、お兄さんから奪い取っちゃうことも出来たと思うんだけど」

「まあ、出来たかもな」

 正直なところ、そう思う。

 小さい頃から尚と戦ってきたが、今本気で戦えば恵が勝つ。

 学生時代に尚の力量に対して恵はそういう判断を下してしまっている。

 尚が弱いわけではない。

 ただ、恵が強くなりすぎただけだ。

「でも跡取りなんて面倒臭いよ。オレはこうやって気軽に火錬ちゃんの胸でも揉んでる方が好きかな」

 もみっ。

「きゃあっ! ちょっと! 今はまだペナルティカウントじゃないんだから勝手に揉まないで!」

「堅いこと言うなって。減るどころか増えるんだし」

「増えない! それは男側の勝手な言い分にすぎないから! 揉まれて増える胸などこの世に存在してはならない!」

「ではオレが実例第一号を作ってあげよう」

「作るな!!」

 ……修行をしているんだか、おっぱい攻防をしているんだかよく分からない二人だった。


セクハラ師匠まっしぐら!

火錬ちゃんってばこれでマジに強くなってるんだから色々と始末に負えない二人ですにゃあ。

修行パートはセクハラパートでもありますにゃん。

負けるな火錬ちゃん!頑張れ火錬ちゃん!いつか仕返しに恵たんの尻でも揉んでやれ!


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