それぞれの事情 桐継の場合
草薙桐継のSG参加理由は、他の二人に較べてかなり弱い。
第一に、恵に誘われたから。
第二には、恵が心配だから。
理由はこの二つだけで、桐継自身は恵のように暴力に飢えている訳でも、火錬のように金に困っているわけでもない。
親の援助を受けながら大学に通っている桐継は、それなりに平穏な日常を送っている。
大学に通って、勉強して、たまに日雇いのバイトして小遣い稼ぎをして、休日には適当に遊ぶ。
そういう日常を送っている。
そんな毎日に不満などない。
刺激が欲しいとか物足りないとか、そんな風に考えたことはなかった。
SGの噂自体は桐継の耳にも届いていたが『ああ、なんだか恵が好きそうだなこういうの』などと考えていた程度だ。
恵ならば参加するかもしれない、とも考えた。
だから恵から誘われたときは少々びっくりしたものだ。
恵とは長い付き合いだから、誘われれば一緒に遊びに行ったりもする。
たまたま今回はそれがゲーム参加だったというだけの話だ。
だから恵に誘われなかったら参加しなかっただろうし、恵が他の誰かも誘っていたらやはり参加はしなかっただろう。
恵は桐継に断られたら一人で参加するつもりだった。
桐継にはそれが分かっていたからこそ、ちょっと心配になって付き合う気になったのだ。
暴力衝動に飢えている恵。
いっそ荒事担当の警察官にでもなればいいのに、と以前勧めたことがあるのだが、恵自身はその手の正義感とは無縁の性格なので首を横に振るだけだった。
確かに恵は正義というイメージではない。
日常から暴力に飢えている若者など、むしろ無法者の類だろう。
「それにしたって、足手まといの教育まで担当するなんて、恵も物好きというか、なんというか……」
大学で講義を終えての帰宅途中、桐継はため息混じりにぼやく。
本音を言えば火錬の存在は邪魔だ。
SGを勝ち進むつもりなら、恵と桐継の二人だけで十分なのだ。
それは恵も同意見だと確信している。
だからこそ、これは恵の娯楽なんだろう。
ハードルを敢えて引き上げることにより、ゲームをより楽しもうとしている。足手まといを守ることで、難易度を上げようとしている。
それだけならまだ許容できる。
恵の実力はその傲慢さが許されるレベルなのだから。
だが、それを実行するには恵の精神性に問題がある。
本人は絶対に言わないだろうし、表にも出さないだろうが、恵は火錬を本気で心配している。
命の危険が少ないSGであっても、取り返しのつかない怪我を負ってしまうことはあるのだ。
後を引き摺るダメージ受けることもあるだろう。
ちょっとした怪我ならまだいい。
だがちょっとした怪我では済まなかったときが問題なのだ。
火錬は自分からSGへ参加することを決めた。
だからどんな怪我を負ったとしても、それは火錬自身の責任なのだ。
だが、恵は違う。
足手まといを守ると決めている恵にとって、火錬の怪我は恵の責任だと考えてしまうだろう。
手の届く範囲で火錬が怪我をしてしまうような事態に陥った場合、恵は身を挺してでも火錬を守るだろう。
桐継はそれを心配している。
桐継にとって大事なのは、恵が無事であることなのだ。
もちろんチームを組んだ以上、火錬のこともそれなりに大事だが、それでも恵の方が優先してしまうのは仕方がない。
付き合いの長い友達なのだ。
だから、出来るだけ自分がサポートしてやろうと思う。
恵のことも、火錬のことも、出来るだけ守ってやりたいと。
だからこその二挺拳銃。
手の届かない位置からでも、なるべく守ることが出来る。
もちろん直純流で技を磨いてきた桐継は接近戦もそれなりにこなすことができる。
いざとなればどの間合いからでも攻撃を加えることが出来るのは、この戦いにおいてかなりの強みになるだろうと予想できる。
金の方は、まあもらえるモノはもらっておこうという程度だ。
落ち着いたら海外旅行に行ってみるのも悪くないかもしれない。
「俺に出来ることは、あんまり多くないな。まあ、セクハラはそれなりに楽しそうだし、今からでも恵達のところに顔を出しに行くかな」
本当はそのまま帰宅する予定だったが、気が変わって今も修行しているであろう恵と火錬のもとへ向かうことにした。
恵はショートレンジとミドルレンジ相手の対策をさせているところだろうが、この際ロングレンジ対策も加えておいた方が万全だ。
精々ペイント弾であの可愛らしい後輩をいたぶらせて貰うことにしよう。
もちろん、ペナルティとしてのセクハラも楽しませて貰うが。
などと考えながら、桐継は二人が居るであろう道場へ向かうのだった。
よく考えたらメインキャラの名前が全部「か」行だったわにゃ~。狙った訳じゃないけど今更気付いちゃったよ(^_^;)