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大ピンチ!

 皮肉なことに、ディスクの引渡場所として指定されたのは、SG本戦第一ゲームの戦闘領域である倉庫街だった。

 街の喧騒からある程度離れていて、なおかつ大勢の人間を隠れ潜ませることが出来る。狙撃に適したポイントも数多く存在するという、実に嫌な場所だった。

 恵と桐継は指定時間ギリギリに倉庫街へと足を踏み入れる。

 本心では一刻も早く駆けつけたかったのだが、悊人の為の時間稼ぎを考えるとギリギリまで行動を控えた方がいいという桐継の意見に賛同した結果だ。

 倉庫街という指定があっただけで正確な位置までは知らされていない。

 その状況を利用してもう少し時間を稼げればいいのだが、と桐継が考えていたのだが、

「そこで止まれ」

 黒いスーツを来た男が壁の向こうから現れた。サングラスをかけているので顔はよく分からない。

「ディスクは?」

「ここにある」

 恵は懐から取り出したディスクを男に見えるように掲げる。

「渡して貰おうか」

 男は手を差し出してくるが、恵はそのままディスクを引っ込めた。

「……なんのつもりだ?」

「人質の無事を確認するのが先だ」

「自分たちの立場が分かっていないようだな」

「そっちこそ、理解していないようだな。オレ達は人質を助けるためにここまで来たんだ。無事を確認できないんだったら今すぐこいつを叩き割る。バックアップはあるが、塔宮グループの厳重なセキュリティで管理されている。人質が通用するのはオレ達に対してだけだ。塔宮グループにはそんなもの関係ない。つまり、ここでディスクを破壊されたらお前たちがデータを手に入れるのは相当に難しいってことだ」

 悊人になら人質は通用するかもしれないが、その人格を知らない彼らにはそれなりの説得力があるだろう。

 恵はあえて自信満々に聞こえるように言う。

「……いいだろう。ついてこい」

 男は観念したのか、火錬たちの居る場所まで歩き出す。

 恵と桐継は黙って男についていった。

 背後から何人かついてくるのが分かったが、敢えて無視した。


 火錬と満月は車の中に乗せられていた。

 後部座席に二人、お互いに寄りかかるように眠っている。

 ……いや、眠らされているのだろう。

「……死んでいないだろうな?」

「安心しろ。二人とも眠っているだけだ」

 桐継が注意深く車の方を観察する。

 微かだが二人の肩が上下しているのを確認した。きちんと呼吸している証拠だ。

「大丈夫だ。二人とも生きている。呼吸が乱れているわけでもない。本当にただ眠らされているだけだろう」

 桐継がそう言うと、恵はほっとしたように息を吐いた。

「さあ。今度こそディスクを渡して貰うぞ」

「……分かった」

 恵は男にディスクを引き渡す。

「これでいいだろう。二人を解放してくれ」

「まだだ。中身を確認してからだ」

「………………」

 用心深いことだ、と舌打ちしながら恵は大人しく従った。

 男は近くに停めてあった別の車へと移動し、乗り込む。恐らく中にノートパソコンが積まれているのだろう。

 十分ほど待たされてから男は車から降りた。

「確かにこちらの要求した通りのデータが入っていた。ご苦労だったな」

「ならばさっさと人質を解放してくれ」

 恵は素っ気なく言うが、本当は掴みかかりたい気持ちをかなり抑えているのだろう。

「もちろんだ。すぐに解放してやるとも」

 男は車の側に控えていた部下に指示を出す。

 部下は車に乗り込んでエンジンをかける。

「……おい。何をするつもりだ!?」

 エンジンをかけた部下はすぐに車から降りた。

 車の方はギアが『D』になっているのか、ゆっくりと進み始める。

 ……海に向かって。

「これで君達は用済みだ。助けたければ勝手に助ければいい。ただし、出来るものならな」

 男は恵と桐継に銃口を向ける。

 最初から全員殺すつもりだったのだろう。

「くそっ!」

 恵と桐継は舌打ちしながら戦闘態勢に入る。

 車は、ゆっくりと海に向かって進み始めていた。


ヒロインらしく大ピンチ。

さあ恵たん桐継たん二人を助けるのだー!

いや、まあ君達もそれなりにピンチだけどね(^_^;)

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