ゲームの前に教育的指導!
豪華なマンションで心機一転。
嬉しそうな女性陣二人がほくほく顔で臨む中、SG第四戦がもうすぐ始まる。
「随分とご機嫌だなあ。あのマンション、そんなに気に入ったのか?」
にこにこしている火錬と満月を見て、不思議そうに問いかける恵。
「すっごく気に入った! 何が気に入ったってお風呂が気に入ったよ!」
「ふ、風呂ぉ?」
半ば興奮気味に、鼻息荒く主張する火錬に若干たじろぐ恵。
「そうそう! けいお兄ちゃん! きりつぐお兄ちゃん! あのね! お風呂がなんとね、温泉だったんだよ! 温泉を直接引いてるんだって! だから毎日温泉に入れちゃうの! これってすごいよね!」
満月さえも興奮しながら言う。
「温泉って、マジでか!?」
さすがにびっくりする恵。
別府のマンションなどではよく聞く話だが、まさかこんな都心でそんな豪華な風呂設備があるとは!
さすが塔宮グループ直営マンション!
「部屋にも温泉で入れるんだけど、屋上にいくと露天風呂になってるんだよ! 毎日露天風呂に入れるんだよ! これってかなりすごいよ! ああもう贅沢だって分かってるけどあのマンション一日でも長くいたいよぉぉ!」
「いいな~。今度俺も入ろうかな」
割と温泉好きな恵がそんな風に言うと、
「いいんじゃない? 屋上露天風呂はちゃんと男女別に分かれてるし」
「混浴じゃないのか……」
がっくりする恵。
「たとえ混浴だとしても師匠が入るときは絶対に入らないからね」
「火錬ちゃんには師匠を敬う気持ちが足りないな」
「けいお兄ちゃん。わたしはいっしょに入ってもいいよ~」
無邪気に言う満月に恵が笑いながら頭を撫でる。
「いいね。五年後に言ってくれるともっとうれしいな」
「五年後?」
「そうそう。もっとこう、おっぱいとかおしりとか育った時に……」
「教育的指導ーっ!」
すぱこーん! と手に持っていた棒で恵の後頭部を叩く火錬。
「痛い! 何をするんだ火錬ちゃん!」
「何をするんだじゃない! 小学生になんてことを吹き込んでんのよ!」
「小学生の性教育はそろそろ始まる頃だからちょうどいいじゃないか!」
「性教育とセクハラ発言は別物よ!」
「あ、性教育ならこの前やったよ。ええと子宮とぺに……もがもが!?」
「言わなくていいから!」
性教育の内容を素直に語ろうとする満月の口をすばやく塞ぐ火錬。
もがもがと暴れる満月は解放された後きょとんと首をかしげる。
「……そろそろ始まるぞ。コントはまた今度にしろ」
冷静にツッコミを入れる桐嗣。
「コントじゃない!」
反論する火錬。
しかしまもなくゲームが始まるのも事実なので火錬も頭を切り替える。
本戦第四ゲーム。『アウトロー・ヘヴン』VS『微乳同盟』、間もなく戦闘開始である。
戦闘領域は廃病院。中堅どころの五階建てである。敷地面積もそこまで広くないので今回射撃手はいないと見ていいだろう。
「……しかしこのチーム名、メンバーはロリコン集団か?」
恵が相手のチーム名に対して微妙な感想を漏らす。
「さあな。女性の洗濯板集団かもしれないぞ」
桐継が更に微妙な返答をする。
「びにゅうってなに?」
満月がきょとんと首を傾げる。
「満月ちゃん。この二人の発言は基本無視でいいから」
「?」
「微乳って言うのは……」
「言わんでいいっ!」
『微乳』について懇切丁寧に説明しようとした恵を再び火錬がどつく。
「火錬ちゃん。さっきから師匠に暴力を振るいすぎ」
といいつつ大人しく殴られているあたり、このやり取りを楽しんでいるらしい。
「師匠はもうちょっと発言に気を付けてよね。相手は小学生なんだから……」
「オレは小学生だからって差別したりしないぞ。いつだって大人の対応だ!」
えっへんと胸を張る恵。
「大人の対応と見境無しを同列に扱うなっ!」
「……これからしばらく行動を共にするんだ。恵の発言を飾らせても仕方ないだろう。いっそ今のうちに耐性を付けておけば将来大人な受け流しが出来るようになっていいんじゃないか?」
桐継が冷静に言う。
「そりゃあ耐性がつけばそれでいいかもしれないけど、逆に変な影響受けちゃったらどうするのよ。セクハラ下ネタ連発する中高生に育っちゃったら見るに耐えないんだけど?」
「それはそれで面白そうだから俺としては傍観したいところだな」
「……うちの男共は腐ってるわ」
がっくりと肩を落とす火錬。
これは満月が変な影響を受けないように自分がしっかり見張らなければ! と微妙な決意をするのだった。
「お、時間だ」
携帯を確認するとちょうど九時になったところだった。
ゲーム開始時間である。
「じゃ、気合い入れるか」
「おう」
「うん」
「がんばる」
それぞれに返事をしてから廃病院へと足を踏み入れた。
緊張感ないなーこいつら。
そして教育的指導。
小学生に変なこと吹き込むなよ~。でも楽しそうだな~。
きっと純真無垢な少女を微妙に汚していくのが快感なんだろうな~。
と、ますますアレな方向に進んでおりますが、最後までお付き合い下さると嬉しいです。




