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健気なロリ糸遣い!

「うぇっ……えぐっ……」

 女の子は未だに泣き続けている。

 両手を後ろに縛っているのでさすがに糸攻撃はしてこないだろうが、それでもこんな女の子が泣き続けているというのはかなりいたたまれない気持ちになる。

「しかしこんな女の子までSGに参加してるなんてね……」

「恐ろしい使い手だが、確かに年齢が低すぎるな。よっぽどな事情でもあるのか?」

「例えば両親が借金を抱えてるとか?」

 有り得そうなのだが、そんなことでこんな子供が非合法バトルに参加するというのも褒められた話ではない。

 女の子の見た目は明らかに小学校低学年なのだ。

「うぇっ……かたなきゃいけないのに……」

「………………」

 しゃくりあげながら泣き続ける女の子の言葉を、恵が根気よく聞き取ろうとする。

「お母さんの手術代……かせがないといけないのに……」

「………………」

「………………」

「………………」

 ひっくひっくとしゃくりあげる女の子。

 お母さんの手術代を稼ぐために危険な戦いに赴いているという、ちょー健気な事情らしい。

 なんだかいたたまれない気分になった桐継が、女の子の傍にしゃがみ込んで事情を聞こうとする。

「ええと、お嬢ちゃん? っと、名前だけ先に教えてもらえないか?」

「み、みつき……」

「みつきちゃんか。手術代を稼ぐって言ってたけど、みつきちゃんが稼がなくても大人の人たちが何とかしてくれると思うぞ。みつきちゃんのお母さんにお金がなくても、『高額療養費制度』とか『貸付制度』とか色々あって……」

「せんしんいりょーって言ってたの……こーがく……えっとなんとかが使えないんだって……」

「………………」

 先進医療でしか治療できない病気のため、保険適用外だと言いたいらしい。

「……それに、お母さん体弱いから。病気なおってもすぐにはたらけないし、お金払えないもん。だから、かせがないといけないのに……ひっく……」

「ふむふむ。治療拒否をされたわけではないが、治療費の支払いが後々困難になるからみつきちゃんが頑張って稼ごうとした、と。そう言いたいわけだな?」

「……うん」

 みつきは泣きながら頷く。

「なんだか、健気だね……」

「本当にな。どっかの金の亡者とは大違いだ」

「悪かったわね」

「悪くはないさ。ただ健気ではないなと言いたいだけだ」

「健気なだけじゃ生きていけないもん」

「そりゃそうだ」

 少し離れた位置でそんな会話をする恵と火錬。

 みつきの宥め役はすっかり桐継に押しつけてしまっている。

「ふむ……」

 みつきの頭を撫でながら、桐継が考え込む。

「恵。確かSGには引き抜きが可能なルールがあったよな?」

「え? ああ」

 引き抜き。

 チームが規定人数に満たない場合に限り、勝利チームは敗北チームから有望な人材を引き抜く権利がある。

 今回はそのルールを適用したいと桐継は言っている。

 つまり、みつきを『アウトロー・ヘヴン』に入れるということだろう。

「オレは構わないけど、火錬ちゃんは? 三人と四人だと分け前がかなり違ってくるぞ」

「……さすがにそこまでがめつくなるつもりはないわよ。あの子を見捨てるのも後味悪いし。それに、あの子は戦力としてかなり期待出来るんでしょ? だったら勝ち進める可能性が上がるってことでトントンじゃない?」

 と、火錬も了承した。

「というわけだ。オレ達は権利を行使すべく『宝』を探してくるから、宥め&説得は任せたぞ、桐継」

「だね。私達がいても仕方ないというか、やりづらいだろうし」

「そうさせてもらう」

 桐継は頷いてみつきの説得を引き受けた。



 恵と火錬が『宝』を見つけてきたのは十分後だった。

 今回はかなり早く見つかったらしい。

 その頃にはみつきの説得も終えて、桐継は彼女を拘束していた糸を外してやっていた。

 一体どんな説得をしたのか、みつきはすっかり桐継に懐いたらしく、しっかりと手を繋いでいる。

「けいお兄ちゃん、かれんお姉ちゃん。これからよろしくおねがいします。わたし、がんばるね!」

と、ぺこりと頭を下げるみつき。

「あ、ああ。よろしくな、みつき」

「ええと、うん、よろしくね。みつきちゃん」

 糸を駆使していたときの恐ろしさなど微塵もなく、ただひたすらに可愛くて健気なみつきに毒気を抜かれてしまう二人だった。


 SG本戦第三ゲーム。『アウトロー・ヘヴン』の勝利。

 賞金は一千万円。

 引き抜きルールを適用し、夜乃満月よるのみつきを新しくチームに迎えることになった。



お母さんのためにがんばる!

ううん、水月の小説にこんな健気なキャラが生まれるとはちょっと以外ですな~。

是非ともなごみ方面で頑張って貰いたいものです。

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