裏切り者!
そして二回戦当日。
『アウトロー・ヘヴン』VS『マッスルファイターズ』。
今度の戦闘領域は学校だった。
漣学園と書かれている。
私立高で、今はもう廃校になっているらしい。
戦闘領域は主催者の所有物件からローテーションで選ばれるらしい。今はもう使われていない物件を選ぶのはさぞかし大変だろう、と他人事ながらに呆れる。
倉庫街なら多少破壊しても修理が利くが、学校はそうもいかない。毎日登校してくる学生が不審を覚えては元も子もないのだから。
だからこその廃校なのだろうが。
しかし、今はそんなことどうでもいい。
直純恵にとって、主催者側の事情などどうでもいいのだ。
「う……裏切り者……」
ゲーム開始前だというのにこの上なくテンションを下げている『アウトロー・ヘヴン』のリーダー様。
ジト目で火錬を見詰めては、がっくりと肩を落としている。
「なんのことかな?」
一方、火錬の方はしれっとしたものである。
「………………」
桐継はそんな二人を呆れたように眺めるだけだ。
「火錬ちゃん! 君はミニスカートの素晴らしさというものを全く分かっていない! 君のその無粋な格好は全世界のミニスカ生足ファンを侮辱している!」
「そんなものは絶滅すればいいと思う」
無粋な格好。
前回、下からぱんつを眺められるという屈辱を味わった火錬は、今回ばっちり対策を講じてきた。
防護服はいつものミニスカート仕様なのだが、その下にスパッツを穿き込んでいるのだ。これではぱんつを見ることが出来ない。せっかくの生足も際どい部分が隠れてしまって台無しだ。
今回も生足とちらり見えるぱんつを楽しみにしていた、モチベーションアップの源としていた恵にとっては裏切り行為にも等しい。
「火錬ちゃん! スカートの下にスパッツというのはこの世で最悪の邪道の一つだぞ! 今すぐ脱ぎたまえ! そしてその生足とぱんつを偉大なるリーダーの前に晒したまえ!」
「……死ねばいいのに」
変態発言爆裂のリーダーに対して、ぼそりと死刑宣告。
かなり本気の発言のようだ。
「はいはい。そろそろ戦闘開始だぞ。二人とも馬鹿やってないでさっさと準備しろ」
開始時間をチェックしていた桐継が冷静に言い放つ。
「……うう、畜生。終わったら絶対脱がせてやるからな」
「師匠。それは変態を通り越して犯罪っていうのよ……」
「犯罪じゃない! 男の夢に対する断固とした抗議精神だ!」
「マジで死んで欲しいなぁ、この変態」
というワケで、SG本戦第二回、開始である。
「前回の火錬ちゃんを見て単独行動をさせるのは危険だって分かったから、今回はオレと組もう。『宝』探索は桐継に任せる」
「いいけど。総力で当たった方が効率よくない? 相手チーム潰してから探してもいいと思うんだけど」
「いや。『宝』はなるべく早く見つけた方がいい。このゲームは『宝』さえ見つければ逃げるが勝ちなんだ。このゲームの最優先ルールは戦うことじゃない。逃げられたらそれでお終いなんだぞ」
「あ、そっか。そうだね。逃げられたら不味いね」
「そういうこと」
暗くなった廃校舎を二人で歩きながら、会話を続ける。勿論、恵の方は気楽に会話をしながらも辺りの気配に気を配っている。
「と言ってもオレ達も探すのをさぼっていいわけじゃない。教室を虱潰しに探っていこう」
「りょーかい、師匠」
前回、倉庫街で火錬が見つけた隠し場所は職員ロッカーの中だった。職員ロッカーがある倉庫だけは鍵が開いていたので怪しいと踏んだらしい。
そう考えると、宝の隠し場所そのものは難しくないと考えていいだろう。
案外、教卓の中とか、掃除用具ロッカーの中とか、そういう安易な場所に隠されている可能性が高い。
なので恵と火錬は敵を警戒しつつ教室を一つ一つ探っていく。
「うえっ! 掃除用具ロッカー臭い! こんな場所に隠されてたら嫌だなぁ」
掃除用具ロッカーを開けた火錬がぼやく。
「……トイレの掃除用具室じゃないことを祈りたいものだな」
「あはは。確かに」
いや本気で。
トイレ臭い賞金とかかなり洒落にならない。
一階の教室を全て調べ終え、二階の教室に向かおうとしたときだった。
「あ……」
「おっ……」
エンカウント!
……もとい敵チームと遭遇!
四人の少年達はすかさず戦闘態勢に入る。
「火錬ちゃん! 二人任せる!」
「オッケー! 師匠もヘマしないでよ!」
「誰に言ってる!」
恵と火錬の方ももちろん戦闘準備万端だった。
四対二の戦い。
しかし恵は勿論、火錬にもまったく恐れはなかった。
獲物である棒を持って、躊躇いなく割り振られた二人へと向かう。
男の夢とはかくも険しいものなのだ!
なんてね~。
恵の発言もそろそろヤバい感じになってきています。
捕まらない程度にしておけよー(^_^;)




