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スクランブル・ゲーム

初めての青春小説です。

青春小説をまともに読んだことのない人間が書いています。

ジャンル的にかなりのチャレンジであります。

 それは、『スクランブル・ゲーム』と呼ばれていた。

 金の使い道に退屈した上流階級の人間達が企画立案した賭け遊戯ギャンブルゲーム

 古代ローマの剣闘士競技のように、人間同士の闘争こそがもっとも血湧き肉躍る娯楽なのだと、彼らは知っていた。

 もちろん法の拘束があるので、人の命を賭けたような賭け事は出来ないが、明確なルールを定め、素手もしくは非殺傷武器のみを用いてチーム戦を行わせる。

 勝者には賞金を。

 敗者は何も得られない。

 しかし命までは取られない分、物騒さは和らいでいると思う。

 細かいルールは色々とあるが、SGスクランブル・ゲームの勝利条件はたった一つ。

 戦闘領域バトルフィールドに隠された『宝』(賞金入り)を手に入れること。

 その際、相手チームの妨害が予想されるため、必然的にチーム戦闘へと突入する。

 スタンダードな戦術としては、まず相手チームを完全無力化してから『宝』を探し出す。

 もう少し高度になると、戦闘を行いながら隠された『宝』を探そうとするというのもある。この場合戦闘時の処理能力を分散させなければならないため、よほど実力のあるメンバーを揃えたチームでないと致命的になる。

 運よく戦闘に入る前に『宝』を発見した場合、『宝』を持ったまま戦闘領域の外へ出ればそのチームの勝利となる。

 もちろん外に出る前に『宝』を奪われた場合は敗北となる。

 領域内にはいくつもの監視カメラが設置されており、戦闘の様子は常に主催者側にチェックされている。

 そして主催者側はそれなりの掛け金を得るか、失うかのどちらかになる。

 もちろん娯楽なので立場が危うくなるほどの金額ではないが、それでも小さくない金額が動くことになる。

 娯楽という喩えで一番近い表現を使うならば、ゴルフ会員権程度の金額ということになるだろう。

 もちろん、一般人の感覚からすれば内臓が飛び出るほどの金額なのだが、そこは住む世界が違うということで。


 そして主催者、参加者共に血湧き肉躍る祭りイベント、SGは今日もとある場所で開催されていた。

 海に面した倉庫街。

 その一角で繰り広げられる戦闘行為。

 厳しい予選を潜り抜けてきたチームが臨む本戦。

 その第一回戦が本日のメインなのだ。

 本日の参加チームは『アウトロー・ヘヴン』と『紅月下くれないげっか』。

『アウトロー・ヘヴン』が三人チームなのに対して、『紅月下』は五人チーム。

 SGの人数制限は五人まで。少ない分はルール違反にならないが、五人を超えると参加できなくなる。もちろん補欠登録は可能。正規参加者がリタイアした場合に限り、補充要員を加えることが出来る。

 元々メンバーが足りない場合は、上限までいつでも追加することが出来る。


「はあっ!」

「っ!」

『紅月下』のリーダーらしき男がスタンロッドを振り下ろしてくる。

 それを『アウトロー・ヘヴン』のリーダーである直純恵なおずみけいが日本刀で受けとめていた。

 もちろん非殺傷武器指定ルールがあるので、この刀も刃引き仕様だ。

 しかし相手はスタンロッド。

 攻撃そのものは受けとめられても、附随して発生する電撃までは防げない。

 しかも鉄素材である刀で受けとめてしまっては尚更だ。

 しかし、

「なに!?」

 恵は感電のダメージなどまったく見せずに、ニヤリと笑った。

「馬鹿か君は。SGにおいて電撃装備はもっともありふれている。対策なんて済ませてあるに決まっているだろう」

「ま、まさかその服……」

 敵リーダーが恵の着ている黒いコートを視線を移し、対電仕様だと悟った瞬間、鋭い回し蹴りが決まる。

「……!」

 スタンロッドを取り落とした敵リーダーはそのまま昏倒した。後頭部に綺麗に一撃入れられれば、そうなるのも当然だろう。

笠置かさぎさん!」

 リーダーを倒されて逆上した敵その二が恵に向かってこようとするが、

「はい、そこまで」

 背後から銃撃が襲いかかる。

 恵の反対側に潜んでいたチームメイト、草薙桐継くさなぎきりつぐが二挺拳銃で攻撃を加えたのだ。……もちろん非殺傷指定のゴム弾仕様である。しかしゴム弾だからといって馬鹿に出来ない。その威力は殺さないまでも制圧戦力としては十分な威力を秘めている。

「ぐ……うっ……!」

 意識は失っておらず、這うように恵を睨み上げる敵その二。

 そこを恵の蹴りが容赦なく意識を刈り取ってしまう。

 ……ちなみに倒れている相手への蹴りなので、ひどくぞんざいな蹴り方になってしまっている。路上で空き缶を蹴飛ばすようなイメージ映像を連想してもらえれば分かり易いだろう。

「容赦ないな、恵。気絶までさせなくても当分動けないだろうに」

 拳銃を持ったままの桐継が呆れたように言う。

「ふふふ。油断は禁物だぞ。『宝』を見つけるまでにどれくらいかかるか分からないんだ。なるべく長い時間敵を無力化させておくのは基本だろう?」

「まあな。でも足蹴にはされたくない」

「そうかい? 人を足蹴にするのってすごく気分がいいぞ」

「………………」

 恵の性癖が垣間見える発言だった。

「……火錬かれんちゃんは?」

 恵は最後の仲間の行方を尋ねる。

 黒鋼火錬くろがねかれん

『アウトロー・ヘヴン』最後の一人だ。

「『宝』探索の方に行かせている。俺たちがメインで敵を引きつけているからな。火錬は隠密行動。先に見つければ全部倒す手間も省けるし、探索エリアも狭められる」

 今回は倉庫街丸ごと戦闘領域になっているので、探索エリアもかなり広い。初戦にしてついていないと思いながらも、取りあえず役割分担で対応することにしたのだ。

「敵はあと三人か。五人チームだし」

「一応な。火錬が途中で遭遇していれば一人二人は倒してるんじゃないか?」

「あの子、大丈夫かなぁ……」

 心配そうに唸る恵。

 チーム唯一の女の子として、というのもあるのだろうが、チーム内で唯一まともな戦闘教育を受けていないのが火錬なのだ。

 恵は直純流古武術の継承者として幼い頃から徹底的に武術を叩きこまれてきたし、桐継の方も直純流の道場に門下生として通っていた経験がある。二人とも素手での戦闘能力は相当なものだという自負がある。

 しかしチームを組む際に初めて引き合わされた黒鋼火錬は、真っ当な武道経験を持たない少女だったのだ。

 しかし棒を持たせたらかなり凶悪な強さを発揮する天才でもある。

 決まった型のない、獣のような強さなのだが、だからこそ素人の怖さというものをまだ分かっていない。

 正面から立ち向かえば勝てる相手はまず少ないだろうが、不意をつかれた場合、対応が万全だとは言い難いのだ。

 戦う相手に対しては鋭い判断力を見せるが、相手の気配を感じ取るなどという芸当はまだ火錬には出来ない。

 火錬の強さは敵を正面にしたとき限定で発揮される類のものなのだ。

 もちろんその辺りの矯正を恵が行おうとしているのだが、如何せん出会ってから日が浅いため時間が足りない。

 そもそもSGの開催期間はそこまで長くないので、どうしても付け焼き刃的な教育になってしまう。

 彼女は彼女なりに金銭を必要とする理由があるので真面目に訓練を受けているが、それでもモノになるかどうかは怪しいところだ。

 命の心配がないSGだからこそ効率重視で別行動をしているが、やはり心配になってしまう。

「残り三人か。火錬ちゃんのところに向かう前に片づけてしまおう」

「賛成だ。……いや、待て」

「ん?」

 桐継が倉庫の屋根を指さす。

 屋根上には火錬が立っていた。

 艶やかな黒髪をポニーテイルにまとめて風にたなびかせている美少女。身長はあまり高くないが、凜とした姿勢が彼女をわずかばかり長身に見せている。

「おーい! 師匠~、キリ先輩~。『宝』見つけたよ~」

 恐らくは『宝』である銀色のアタッシュケースを左手に持ち、彼女の専用武器である棒を右手に持ち、その棒をぶんぶんと振っている。

「火錬ちゃん……」

「あの、馬鹿……」

 二人ともがっくりと肩を落とす。

 まだ敵が三人も残っている状況で軽率にも『宝』を片手に意気揚々と、目立つ位置で手を振っているのだ。

 正に馬鹿としか言い様がない。

「火錬ちゃん! 後ろ……!」

 そして軽率な行動の報いをすぐに受けることになる。


ドジッ子ヒロイン初っぱなからやらかしてます!

火錬ちゃん。

お馬鹿な子ですが可愛がってもらえたら嬉しいですね(^_^;)

ちなみに残りの二人は鬼畜です。

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