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甲羅を背負った女

作者: ルーシー
掲載日:2026/05/02

恋の記憶はいつも自分の都合の良いように書き換えられる



 第一話【甲羅を背負った女】




 最近は四六時中、ずっとコタツに入っている。


 パソコン、コーヒー、ティッシュ、ノート、ペン。ぜんぶ手の届く範囲に置いて、ぬくぬく寝転がって。お腹すいたなぁ、て思っても外寒いし・・・。

 コピーいかなきゃ、でも外寒いし。掃除しなきゃ、明日にしよう。


 あたたかい足先は次第にラグと一体化し、なめくじみたいにべっちょりと溶け、赤いコタツ布団は身体にピッタリとはりつき、髪の毛の先まで真っ赤に染めていく。

 机は固くて頑丈な甲羅。もし雨が降っても首を引っ込めれば大丈夫。



 さぁ。



 べっちょりした身体を引きずり、のろのろと進む先は、あなたが収容されているケイサツショ。






 第二話【カレが捕まった】



「殴ったら、警察呼ぶわよ」


 思いのほか読みが 大当たり!


 110番を押し、カレが逮捕された。



「右ストレートの衝撃ってこんな感じなんだ」


 ボクサーでもない女は


 ここがリング上かと錯覚するぐらいに


 真っ直ぐにそのパンチを頬にうけた。


 少しの意識の中でタオルを掲げるかの如く


 冷静な判断で通報した。




 あの日から女はとてつもなく重いものを背負っている。

 留置所から届く手紙には謝罪の言葉が連なり、通報した自分が悪人になったようで、それはそれは後悔しかない。



 いや、でもDVしたカレが悪いんだけど・・・



 ノロノロと進める道中、春一番に追い抜かされ、

 ジメジメとした季節を過ぎれば、初夏の香りにカレが居なくなった夜を重ねる。


 コタツの中では、ダラダラと汗がしたたり。


 あの日の冷や汗、ケンカの原因。とにかく会いたい。




 檻から出してあげたい。



 だから




「面会にきました。」








 第三話【真実】




「面会にきました。」


「その方なら3年ほど前・・・すぐに釈放されましたよ」


 婦人警官が眉一つ動かさず、無愛想に答えた。



 3年前の夏・・確かカレに好きな人が出来たって。

 別れる?それなら、とカレにナイフをつきつけたんだっけ。私。



 やめろ!と殴りかかってきたカレ。


 右ストレートを受けて転がったナイフ。


 110するワタシ。



 警察に手を引かれたカレは


「これでおあいこな」って。


 ズルいなぁ。


 謝罪と共に「愛してるから取り下げてほしい」と綴られた手紙。



 やっぱりズルいなぁ。



 固く、がんじがらめに繋がれた鎖。



「いつになったらアナタから釈放されるの?」



 そう呟くと、女は自らコタツを背負い直し



 のろのろと、もと来た檻へと帰っていった。

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