第008話 ヴェルナー様の心拍数が上昇w
夕食が始まり、とっくに1時間は過ぎたと思う。
「……味方がピンチになり、誰かが殿にならないといけない場面がきた。俺はそこで言ったんだ。『隊長、ここは自分に任せてください。千の兵など蹴散らしてみせます』とな」
ワインをぐいー。
「すごいわね。戦ったの?」
「ああ。徐々に後退しながら魔法を使っていった。そうやって時間を稼いでいき、味方は見事に退却できたんだ。俺もその後に帰ったが、陛下から『お前は帝国の宝』だとお褒めの言葉をいただいたな」
「自慢話ばっかり……ヴェルナー様、少し、飲みすぎのようです。そろそろやめておきませんか?」
リーエが止めてくる。
「まだイエイレの戦いの活躍を話してないぞ?」
敵が放ってきた万を超える火の矢を一人で防いだ伝説の戦いだ。
「私は100回聞きました。もうこの辺にしておきましょう。迷惑になりますよ」
「そう? まだ聞きたかったんだけど」
ほれ見ろ。
「お嬢様、すでに夕食は終わっておりますし、お風呂に入りませんと」
オラースがセシリアを諫めた。
「じゃあ、またの機会にするわ。ヴェルナー、とても楽しい話を聞かせてくれて感謝するわ」
「いや……」
これからなのに……
「ヴェルナー様、部屋に戻りましょう」
「そうするか。セシリア、夕食をご馳走になった」
「美味しかったです」
「いえいえ。満足していただけたのなら良かったわ」
俺達は礼を言うと、食堂を出て、部屋に戻った。
そして、テーブルにつく。
「もう! ヴェルナー様はすぐに調子に乗っていけません。どれだけしゃべる気ですか」
「向こうが聞いてくるから答えたんだ」
「それにしても自慢オンリーだったじゃないですか。そうやって嫌われたんですから気を付けてください」
うーむ……
「気を付けていたんだが、向こうが聞き上手だったんだよ」
ワインもどんどん注いでくるし……
注いだのはオラースだけど。
「それでもです。少し謙虚になりましょう」
「わかったよ」
頷くと、ノックの音が聞こえてきた。
『ヴェルナー殿、リーエさん、お風呂を用意していますのでどうぞ。申し訳ございませんが、右の方のお風呂をお使いください』
オラースだ。
「わかった。ほら、風呂に行ってこい」
「ヴェルナー様からどうぞ」
「そうか? じゃあ、行ってくる」
部屋から出ると、オラースに案内され、昼と同じ風呂に入る。
ゆっくりと浸かって脱衣所に出ると、寝巻きが用意されていたので着替え、部屋に戻った。
「あれ? 寝巻きもあるんですか?」
「ああ。リーエの分もあったぞ」
「至れり尽くせりですね」
いや、ホントに。
「ありがたいことだ。お前も入ってこい」
「わかりました」
リーエが部屋から出ていったので空間魔法にある荷物をベッドに出し、確認する。
あの状況だったので持ってきたものはわずかしかない。
「研究成果もほとんどないか……」
まあ、一からやり直せばいいだろう。
それにしても金になりそうなのがほぼないな。
そうやって確認していくと、扉が開き、リーエが戻ってきた。
リーエも寝巻きであり、可愛らしかった。
「いやー、良いお湯でしたねー」
「そうだな」
「荷物の確認ですか?」
「ああ。リーエはどうだ?」
リーエも空間魔法が使える。
「掃除道具とか家事関係ですかね?」
あとククリナイフな。
まさか掃除ってそれじゃないよな?
「売れそうなものはないな」
「そうだと思います。やはり地道にいくしかないですね」
「そうするか」
荷物を収納すると、リーエと明日からのことを話していく。
すると、ノックの音が部屋に響いた。
「はい?」
『起きてるー? 私、私』
セシリアの声だ。
てっきりオラースかと思ったのだが。
「起きてるぞ」
そう答えると、扉が開き、セシリアが部屋に入ってきた。
しかも、セシリアも風呂に入ったようで寝巻きであり、ゆったりとしたネグリジェを着ている。
そして、両手にはボトルが2つにグラスが3つある。
「まだ飲み足りないでしょ。飲みましょうよ」
セシリアはそう言って、テーブルにつく。
俺とリーエはそんなセシリアを見て、顔を見合わせた。
「いいのか?」
「良くないような気がします」
な?
さすがにこれはマズくないだろうか?
貴族令嬢だろ。
「気にしない、気にしない」
その開いた胸元が気になるんだがな……じゃない!
「なあ、こっちの世界というか、この国の貴族ってそんなラフというか、軽い感じなのか?」
そう聞きながらリーエと共に席につく。
「全然。超固いわよ」
セシリアがグラスにワインとジュースを注いでくれた。
「もしかして、実はセシリアは貴族じゃないとか?」
「うーん、貴族ね。一応」
一応……それにしてもしゃべり方が随分と気安くなっているな。
酔ってるのか?
「どうしたんだ?」
「色々と話を聞きたいと思って。やっぱり気になるしね」
ふーん……
「そんなに魔法が気になるか?」
「それはもちろんよ。魔法って伝説かおとぎ話の世界にしかないもの。それなのにすんごい魔法使いが目の前にいるのよ? 気になるし、話を聞きたいって思うのは普通じゃないの。はい、乾杯」
「「かんぱーい」」
俺達はグラスを合わせると、一口飲んだ。
「魔法ねー……」
「あなた達は身近なものでしょうけど、私達は新鮮なのよ」
それはわかる。
俺だって元々は魔法なんかない世界の人間だったのだ。
「魔法が気になるか?」
「ええ。とっても」
「お前も魔法使いなのにか?」
最初から気付いていたが、言わなかったことを聞くことにした。
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