第044話 ( 。-_・。)zzZZ
俺達はひたすら平地を歩いていた。
「イレーネ、今、何時だ?」
そう聞くと、イレーネが懐中時計を取り出す。
「えーっと……ふっ、2時ね」
もうそんな時間か……
「幸いなのは眠くないことですね」
「まあねー。それに私は魔力障害のことがあるから歩いた方が良いわ」
俺は眠い。
ぐちぐち言いながらひたすら歩いていくと、整備された道にやってきた。
「街道か」
「やっとですか」
「南はあっちね。行きましょう」
俺達は街道を南に進んでいく。
「イレーネは南の方だとどこまで行ったことがあるんだ?」
「南は微妙……護衛の依頼でリーゼンって町まで行ったことあるけど、多分、そこは超えていると思う」
じゃあ、ここから先は全員、知らないわけだ。
「追手はもう考えないで良いか?」
「うーん……さっきの軍船が気になるけど……ただ、追手が来るにも時間はかかると思う。私達は間違いなく、あそこから飛んだわけだし、ヴェルナーが言うように死体の捜索が先だと思う」
イレーネの父親はイレーネを殺すつもりだっただろうし、それですんなり終わってくれるのが望ましい。
「どちらにせよ、さっさとこの国を出た方が良いと思いますよ。御二人はもはや逃避行をしている最中です」
お前もだけどな。
俺達は街道をひたすら歩いていった。
ちょっと疲れたこともあり、俯きながらイレーネと並んで歩く。
「今何時だ……?」
もう逆に眠くない。
「3時……眠くなってきた」
俺達、噛み合わないな。
「野宿はどうだ?」
「それもありね……」
「お待ちください。前方に何か見えます」
「「んー?」」
顔を上げ、よーく見てみると、確かに前方に何かが見える。
「町か?」
「じゃないかしら? もうちょっと行ってみましょう」
俺達は歩くペースを早めて、進んでいく。
すると、確かに町を囲む塀が見えているし、そこから塔みたいなのが見えていた。
「町だな」
「あれは……ヴェイアの町よ。あの塔みたいなのが有名な時計台だと思う」
ほうほう。
「どこだ?」
「目的地だった国境最寄りのベルクの町から近い町ね。私達、なんだかんだで相当、南に来ているわ」
それは朗報。
船が頑張ってくれたんだな。
「今の時間は閉まっているよな?」
「当然ね。ミスディレクションとフライでよろしく」
まあ、それが良いな。
朝まで待つのは面倒だ。
「行こう」
俺達はミスディレクションをかけると、町の門から離れたところに向かう。
そして、イレーネを抱えると、フライで塀を飛び越え、町の中に入った。
「暗いな」
住宅街のようだが、どこの家も灯りがついていない。
「それに静かですね」
「もう4時だもん。逆に朝早い人が起き出す時間よ」
下手をすると、朝だもんな。
「なあ、この時間から宿屋って泊まれるか?」
「宿屋は早いからもう店員も起きていると思う。あとは交渉次第ね。無理を言っているわけじゃないから泊まらせてくれると思うけど」
一泊分、取られるんだろうか?
いやまあ、取られるか。
「今日、それと明日も泊まろう」
「今日がいつなのか微妙なところだけど、ニュアンスは伝わったわ。そうしましょう」
昼まで寝て、そこからすぐに出発するのはさすがに強行軍すぎるからな。
出発はその翌日だ。
「宿屋はどこでしょう?」
住宅街だし、この辺りにはなさそうだ。
「こういう時は町の真ん中を目指せば良いのよ」
「任せた」
歩いていき、住宅街を抜ける。
すると、飲み屋街にやってきたのだが、さすがにこの時間はどこも閉まっており、灯りもついていなかった。
そのまま飲み屋街を抜けると、灯りがついている建物があった。
「あれ、宿屋じゃないか?」
「っぽいわね。行きましょう」
「イレーネ、俺達はどっかの宿屋に泊まっていたけど、隣のいびきがうるさすぎて、宿屋を変えた家族な」
設定を考えてないと、なんでこんな時間に来るのかと怪しまれてしまう。
「了解」
イレーネを先頭に宿屋に入る。
すると、受付で書き物をしているおばさんがいた。
「ん? どうしたんだい?」
おばさんが俺達に気付き、声をかけてくる。
「こんな時間にすみません。今から泊まれない?」
「今から? もう朝になるわよ?」
受付の奥に時計があるが、もう4時半を過ぎている。
「ええ。実はさっきまで別の宿屋に泊まってたんだけど、隣の部屋がうるさくて……」
「あー、それでウチに……部屋も空いているし、泊まるのは良いんだけど、どうしようかね? たかが数時間で満額をもらうのも悪いし」
「明日は部屋で書き物をしたいから部屋にいるわ。だから正規の料金で構わない」
まあ、昼くらいに起きてもそれから動く気はないな。
「そう? 3人部屋でいい?」
「ええ。それでお願い」
「じゃあ、1泊1万ソルになるわ。朝食は無料。夕食は言ってくれれば1000ソルだから」
「わかったわ」
イレーネが2万ソルを支払う。
多分、俺がマリティアで渡したやつだ。
「確かに。これが鍵だから。奥の6号室になるわ」
おばさんがイレーネに鍵を渡す。
「ありがとう。行きましょうか」
俺達は左側にある通路に向かい、6号室までやってきた。
そして、イレーネが鍵を開け、中に入ったので俺とリーエも続く。
部屋は10畳くらいあり、3つのベッドとテーブル、それにソファーまであった。
「良い部屋だな」
「これで1万ソルならかなり良いわね。お風呂はー……」
イレーネが風呂場を覗く。
「どうですか?」
「ラッキー! 湯船があるわよ!」
おー!
それは嬉しい!
「イレーネ、先に入れよ」
「ええ。入ってください」
「そう? じゃあ、お言葉に甘えて」
イレーネがそのまま中に入り、扉を閉めた。
「ふう……さすがに疲れたな」
「魔法も使いましたし、濃密な1日でしたね」
濃密すぎる。
朝早くに起きて、港に行き、そこからギルドに行った。
その後はイレーネ救出で逃亡。
すごい1日だった。
「この世界に来てから退屈しませんね」
「まったくだ」
その後、湯船があるとはいえ、早めにイレーネが上がってきたので次にリーエが入る。
すると、リーエもそんなに時間をかけずに上がってきた。
「じゃあ、俺も入ってくる。先に寝ていいからな」
そう言って、風呂場に行くと、服を脱ぎ、洗濯機に突っ込んだ。
そして、湯船に入り、1日の疲れを取る。
浴槽はイレーネの屋敷のような足を伸ばせるような広さではなかったが、それでも久しぶりの風呂だったので十分に満足だった。
風呂から上がり、寝巻きを着ると、脱衣所から出る。
すると、リーエはすでにベッドで横になっていたのだが、イレーネはソファーに腰かけていた。
「まだ起きてたのか? 寝ろよ」
「ちょっとね……」
んー?
「またドキドキで眠れない感じか?」
そう聞きつつ、隣に腰かける。
「そんな感じ。ねえ、本当に見捨てようとか思わなかったの?」
「そんな気は微塵もなかったな」
そう言うと、イレーネが近づいてきて、抱きしめてきた。
風呂上がりの良い匂いがする。
「ありがとう。助けに来てくれて嬉しかったわ。ちょうどやられる前に自害してしまおうかなって考えていた時だから」
だからあの時間のあんな真っ暗な部屋の中でも起きていたのか。
「誰かを助けるのに理由なんかいらない。それにお前には恩があるし、俺達はお前を必要としている。そして何よりも仲間じゃないか」
「そう……ヴェルナーは何でもできるし、リーエも万能。あなた達は仲間なんていらないって空気があるわよ」
そうかもな。
「心境の変化だ」
リーエが言うには変わったらしいし。
「ふーん……」
「あまり理由を聞くな。俺自身もよくわかっていないことだから」
それほどまでにこれまで他人と交流してこなかった。
「そう……キスでもする?」
「好きになっちゃうだろ」
「もう遅いわね」
そうか……
俺達は少しの間、そうしていたが、さすがに眠くなったので就寝した。
ここまでが第1章となります。
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