表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~  作者: 出雲大吉
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/42

第041話 キース、キース


「シェパード伯爵……」


 どうやらあれがここの領主らしい。


「セシリア嬢……いい加減、諦めてください」


 シェパード伯爵が勧告してくる。


「私は平民よ。それに父の言いなりになって、貴族に嫁いでも破滅しかない」

「くだらない知恵を付けましたな。そやつですか?」


 シェパード伯爵が俺を見てくる。


「関係ないわ。私は私の意思で動くし、自分の人生は自分で決める」

「貴族にそれは許されません」

「何度も言うわ。私は貴族じゃない。平民の冒険者よ」

「ハァ……では、平民よ。貴族に逆らうな。お前達は私達の言うことを聞いておけばいい」


 うん、小物の小悪党だ。


「父にいくらもらったか知らないけど、私は父のもとに戻らないわ」


 イレーネが剣を抜いた。


「チッ!」


 兵士達も構える。


「下がりなさい。私はBランク冒険者よ? それだけの兵では相手にならないわ」

「愚かなじゃじゃ馬が……」


 シェパード伯爵が苦々しい顔になった。


 ん? このまま逃げられるか?


 そう思ったのだが、シェパード伯爵がにやりと笑い、懐から黒い物体を取り出した。


「魔道具? そんなものを持ち出しても――」


 直後、バーンッという破裂音がした。

 そして、俺とイレーネの間に火花が散る。


「たかが冒険者が貴族を相手にできると思うな」


 シェパード伯爵が黒い物体を俺達に向けていた。


「え?」

「今のは……?」


 イレーネとリーエが驚いている。

 俺も驚いているが、2人とは意味合いが違った。


 この世界、銃まであるのかよ……

 これはちょっとマズい。


「イレーネ、リーエ、下がれ!」


 2人の腕を掴み、俺の後ろに下がらせる。


「イレーネ? ハァ……バカな男が騙されたか。おい、そいつはオクレール公爵のご令嬢であるセシリア嬢だ。こちらに渡せ」


 シェパード伯爵は何か勘違いしているようだ。


「渡すことはできないな」

「バカが……今ならお前とそのガキは見逃してやる。すべてを忘れてさっさとこの町を去れ」


 まったく信用できない言葉だ。

 この小悪党が屋敷に侵入した俺達を見逃すはずがない。


「ヴェ、ヴェルナー……」


 イレーネが不安そうな顔で見てくる。

 いい加減、わかってきたが、イレーネはちょっと抜けているところがある。

 名前を呼ぶな、バカ。


「ヴェルナー君、逃げ場はないし、さっさとその娘をこちらに渡せ」


 シェパード伯爵がそう言ってくるのは俺の後ろにイレーネがいるからだ。

 本来ならその銃で俺を撃ちたいのだろうが、ミスったらイレーネに当たる。

 イレーネを父親に渡されたらどうせ殺されるのだろうが、シェパード伯爵が殺すわけにはいかないのだ。


「伯爵、セシリア嬢はどこぞの貴族に嫁ぐのか?」

「そうだ。それがセシリア嬢の幸せだし、皆が望むことだ」


 バカが乗ってきたぞ。


「伯爵、セシリア嬢の父であるオクレール公爵に謝罪をしておいてくれ」

「は? 何を言ってるんだ?」


 シェパード伯爵が怪訝な顔になる。


「俺はセシリア嬢を愛してしまった。もう誰にも渡したくない」

「え? そうなの? そりゃ好きになっても良いって言ったけどさ……」


 お前は黙ってろ。


「バカが。叶わぬ夢など見るな。身の程を知れ」


 お前が知れ。

 誰に物を言っているんだ?

 目の前にいるのは叡智の魔勲章を持つ世界最高の魔法使いだぞ。


「セシリアを他人に渡すのは許容できない。それほどまでに愛しているんだ」

「そうか……ならば死ね」


 シェパード伯爵は話にならないといった感じで銃を向けてきた。


「ああ。そうさせてもらう」


 そう言うと、後ろを振り向き、イレーネをお姫様抱っこで抱える。


「え? え?」


 イレーネは無視しよう。


「……貴様、何をしている?」


 シェパード伯爵がますます怪訝な顔になった。


「この世で一緒になれないなら来世で一緒になる」

「バ、バカ! やめろ!」


 シェパード伯爵はわかったようだ。

 俺が今から何をするかを。


「ヴェルナー様、私もご一緒しましょう」


 リーエもわかったようだ。


「え? 何?」


 1人だけわかっていない。


「セシリア、すまない……」

「バ、バカか! やめろ! おい! あいつを捕えろ!」


 シェパード伯爵が命じると、兵士達がこちらに駆けてくる。


「セシリア、あの世で一緒になろう」

「や、やめろー!!」


 シェパード伯爵が叫んだが、踵を返すと、柵を飛び越える。

 そして、セシリアを抱えたまま、真っ暗な闇にダイブした。


「あっ!」

「な、なんということを!」


 兵士達の声が聞こえたが、それらもすぐに聞こえなくなる。


「ちょ、ちょ、ちょ! 飛ぶなら先に言ってよー!」


 代わりに耳元で叫び声が聞こえる。


「いや、言ってただろ」

「そうですよ。どう見ても無理心中を図るイカれた男を演じていたじゃないですか」


 リーエがすぐ隣に来る。


「え? そうだった?」


 ダメだ、こいつ……


「まあいい。それよりも鳥になったぞ」

「おっ? おー……おー!」


 俺達はゆっくり降下しているが、上から見るぼんやりとした灯りがちらつく町並みが綺麗だった。


「怖いか?」

「全然。すごいわね……あ、そういえば、今回は荷物扱いじゃないのね」

「捕らわれのお姫様を救うんだからそうなる」


 あんなことを言っておいて、肩に担ぐのは絵にならないだろ。


「ふーん……捕まって良かったって思えそうだわ」

「思うな。大変だったんだぞ」

「うん……ありがと」


 いいえ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~

【予約受付中】
~書籍~
~4/30発売予定~
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~(1)

~漫画~
~5/12発売予定~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)

【新刊】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(3)

覇王令嬢の野望 ~絶対平和主義の少女に転生した最強女帝の帝国再建譚~(1)
web版はこちら

【現在連載中の作品】
元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~

宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

【漫画連載中】
その子供、伝説の剣聖につき
コミックグロウル

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
結構格好いいシーンのはずなのに締まらないなぁw
過去に平民が無茶やりまくって貴族ボコボコにしたんで魔法禁止にしたのかな?
小悪党どもに名前がバレたヴェルナー様も偽名を名乗りましょう。 俺のネーミングセンスだと、日清製粉ウェルナー的な名前しか思いつかないけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ