第039話 私もですけどね
俺達は5階にやってくると、4階の時と同様に左右の廊下を確認する。
『左は4階と同じ構造で3部屋だ。兵士もいない』
『右は……領主がいそうですね』
ん?
リーエの方を見ると、右の廊下には3部屋ある。
左右に1つずつあり、奥の突き当たりにも部屋があるのだ。
しかし、その3部屋の扉が明らかに他の扉とは違い、装飾が施されており、豪華に見える。
『確かに領主やその家族の部屋っぽいな』
『間違いないと思います』
『じゃあ、左を見てみるか』
俺達は左の廊下を進み、一番手前の右側の部屋の前に立つ。
『魔力は感じません』
『ああ。でも、慎重にな。いつでもスリープを使えるようにしておけ』
『わかってます』
リーエが頷いたのでそーっと扉を開け、中を覗いた。
『脱衣所……お風呂ですね』
『よし、次だ』
俺達は扉を閉め、隣の扉を見る。
『ん? 奥に何かありませんか?』
リーエが言うように奥の突き当たりの右に通路が見えていた。
4階までにはなかった構造だ。
『行ってみよう』
俺達は奥まで歩いていき、右の通路を覗く。
すると、そこには上がる階段があった。
『ここ、5階だよな?』
『ええ。最上階です。おそらく、屋上では?』
眺めも良さそうだし、屋上にも上がれるか。
『逃げるならここからかな?』
『良いと思います』
俺達は逃げ道を確認したので風呂場の隣の部屋の中を覗いた。
しかし、トイレだったのでスルーする。
『ここのフロアの最後だな』
『ええ』
俺達は左側の一部屋の前に立ち、ドアノブを握った。
しかし、ドアノブが動かなかった。
『鍵?』
『そのようですね』
『今までに鍵のかかった部屋はあったか?』
『ありません。あのメイドさんの部屋ですら鍵がかかっていませんでした』
それはそれでどうかと思うが、初めて鍵がかかった部屋だ。
『ここか?』
『可能性は高いです』
他に鍵がかかってそうな部屋は領主やその家族の部屋だが、それは向こうだと思う。
その他にも宝物庫という線もあるが……
『開錠を』
『はい』
リーエはドアノブにある鍵穴を覗き込み、魔法を使う。
すると、かちゃりという音がした。
『開いたか』
『はい。開けます』
リーエはそーっと扉を開いたのでこっそりと中を覗く。
部屋の中は真っ暗だったが、奥に誰かがいるのだけはわかった。
そして、その人間は女性であり、椅子に座っていた。
「イレーネ」
うっすらだが、そいつがイレーネであることがわかったので声をかける。
シルエットがイレーネだったのだ。
「え? ヴェルナー!? リーエ!?」
「しっ!」
イレーネを黙らせると、中に入り、扉を閉じる。
そして、奥に向かうと、そこにいたのは間違いなく、イレーネだった。
「ヴェルナー、リーエ、なんでここに?」
イレーネが声量を落として聞いてくる。
「助けにきたに決まってるだろ」
「当然です」
リーエがうんうんと頷いた。
「いや、私が捕まったのはわかっているでしょ。だったら見捨てて逃げなさいよ。あなた達も犯罪者になるわよ?」
「俺は元々、逃げてきて、この世界にいるんだよ。それに前に言っただろ。誰かを助けるのに理由はいらない」
「おー、かっこいい……好きになりそう」
「なれ、なれ。好きなだけなれ。それは仕方がないことだ」
前にイレーネに言われたことを返す。
「キスでもしそうな雰囲気のところをすみません。イレーネさん、ケガは?」
しねーよ。
「ないわ。ただ、動けない」
ん?
「どうした?」
「これ」
イレーネが両腕を見せてくる。
すると、じゃらっという音が聞こえてきた。
「手錠か」
イレーネの両腕は無骨な鎖で繋がれた手錠で拘束されていた。
「令嬢を拘束するなんて過激ですね」
「逃げた私の方が過激なんだろうけどね。それに元Bランクであることを考えたらこれくらいはするでしょう。問題はこの手錠をされてから力が出ないこと」
力が出ない……いや、そうか。
イレーネほどの魔力なら強化魔法でこんな手錠くらいは壊せる。
「リーエ」
「はい……」
リーエがじーっと手錠を見る。
「魔力を感じるな」
「はい。魔導具でしょうね。それにこれは……ジャミングのようなものがかかっています」
ジャミング……魔力を妨害しているのか。
あー、だからイレーネの魔力が感じられないんだ。
今もイレーネからはほとんど魔力を感じ取れない。
「魔法封じ?」
「そのような気がします……魔法封じ?」
俺とリーエが顔を見合わせて、首を傾げる。
「どういうことだ? この世界には魔法がないんだろ?」
「厳密には強化魔法があります」
それはそうだが……
「この世界、歪すぎないか? 魔法がないのにこれだけ魔道具が発展しているのもおかしいと思っていたが、魔法がないのに魔法を妨害する魔道具を作れるか? いや、そもそもそういう発想に至るか?」
何故、存在しない魔法の対策をする?
強化魔法があることもわかっていないのに。
「わかりません。ただ、単純な魔法がない世界とは言えないと思います」
うーむ……あ、いや。
「すまん。今はそれどころじゃなかった」
「それもそうですね」
そういう考察は後だ。
今はイレーネ。
「ねえ、この手錠は何なの?」
イレーネが聞いてくる。
「その手錠は魔力操作や放出を妨害し、強化魔法を使えなくしているんです。だから力が入らないように感じるんですよ。実際は強化魔法が使えないだけであり、今のイレーネさんは本来の腕力しか使えていない状態なわけです」
その細腕ではな……
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