第038話 住みたくない家ですね
俺達は階段を上がり、2階までやってきた。
『このまま5階まで行けそうだな』
階段はさらに上まで続いている。
多分、一番上まで行けるんじゃないかって思う。
『貴族のお屋敷は敵の侵入を防ぐために階段がそれぞれ別のところにあるイメージなんですけどね』
何度か夜会に招かれたことがあるが、実際そうだった。
非常に住みづらい家だなって思ったことを覚えている。
『別世界だから文化が違うのかもしれない。もしくは、これだけ高いところにあるからそういうのが必要ないのかもしれんな』
ここまで来るのが一苦労だし。
『そうかもしれませんね。どうします? 2階を捜索しますか? それとも上に行きます?』
うーん、リーエ理論だと最上階だな。
『なあ、イレーネの魔力を感じるか?』
『まったく』
だよなー……
もし、最上階にいたとても、少しくらいは魔力を感じられてもおかしくないんだが……
『ここにいないとか?』
『もう一つ可能性がありますが、それは言いません』
死んでる、か……
『とりあえず、一番上まで行ってみよう』
『はい』
俺達はさらに階段を上がっていく。
3階、4階と来たのだが、上から魔力を感じた。
『兵士がいるな』
『微弱ですが、2人いますね』
階段を上ったところにいるのだ。
『イレーネの見張りか?』
『普通に考えたら領主やその家族の警備では?』
その可能性が一番高いか。
『どうする? イレーネの魔力をまったく感じないぞ』
『とりあえず、4階を捜索してみましょう。それでいなければ5階に突入です』
そうするか。
俺達は二手に分かれると、それぞれの左右の廊下を覗く。
『左は誰もいない。部屋は3つ』
廊下の左右に扉があるのだが、右に2つ、左に1つある。
『右もです。どうやら4階の廊下には誰もいないようですね』
『こっちに来い。左から捜索だ』
『了解です』
リーエがこちらに来たので一番手前にある右側の部屋の前に立つ。
『魔力は感じないが……』
さっきの例があるんだよな。
『いつでもスリープを使えるようにしておきます』
『頼む』
頷くと、扉をゆっくり開ける。
そして、中を覗いたのだが、長いテーブルが置いてあり、肖像画なんかが飾られていた。
『食堂だな』
『次に行ってみましょう』
俺達はその隣にある部屋も確認したのだが、そこは厨房だった。
残りの一つの部屋も確認したが、こちらは食材なんかを保管する倉庫だった。
『こっちは外れだ』
『じゃあ、向こうですね』
俺達は階段まで戻ると、逆方向の廊下にある部屋を調べる。
まず右側の部屋を調べたのだが、そこは娯楽室のようでダーツなんかが置いてあった。
次に左側の部屋を確認すると、そこも倉庫のようであり、めぼしいものはない。
最後に奥にある左側の部屋を開けたのだが、そこも倉庫だった。
『ハズレか……』
『やはり上ですかね……お待ちください!』
ん?
『どうした?』
『あのカバンに見覚えがあります』
リーエが右側の棚を指差す。
そこには白いカバンが置いてあり、確かに見覚えがあった。
『イレーネのカバンか』
『だと思います』
俺達は棚まで行き、カバンを取る。
中を見てみると、真っ暗で何も見えなかった。
『何だこれ?』
『魔法のカバンというやつでは? イレーネさんは着替えを持っていました』
確かにあのひらひらの寝巻きがあったな。
それに加えて、40万ソルを持っている。
カバンのサイズはそこまでなのにそこそこの数の荷物がある。
『そういや、弓を持っているのに矢を持ってなかったな』
『魔法のカバンは高価らしいですが、Bランクで二つ名まで持っているイレーネさんなら持っていても変じゃないです』
剣も150万ソルって言ってたしな。
『これがあいつのだとすると、ここにいるのは間違いないわけか』
そうなると、何故、魔力を感じないのか……いや、そこは考えないようにしよう。
『ヴェルナー様、剣と弓もありましたよ』
リーエが言うように違う棚にイレーネが持っていた武器が置いてある。
『持っていこう』
『わかりました』
リーエは剣と弓を取り、カバンに入れたふりをしながら空間魔法に収納する。
そして、白いカバンも同じようにしたのだが、動きが止まった。
『どうした?』
『入りませんね……』
んー……
『魔法のカバンは空間魔法に収納できないんだろう。異空間に異空間は入れられない』
『そのようですね』
『貸せ。俺が持とう』
『どうぞ』
リーエがカバンを渡してきたので肩にかける。
『さて、成果はあったが、4階にも肝心のイレーネはいなかったな』
『探してないのは2階、3階、そして、5階です。もっと言えば、1階の東側もですけど』
うーん……
『ここまで来たし、5階に行こう』
『兵士がいますよ?』
『最悪は領主から聞き出そうと思う』
兵士に聞いてもいいが、把握していない可能性もある。
そうなったら二度手間だ。
だが、領主は確実に知っている。
『なるほど……それが手っ取り早いですか。では、上の兵士は排除ですね』
排除といっても眠らせるだけだが。
『そうなるな』
『階段を上がるまでが勝負ですね。騒がれたらマズいです』
『大丈夫。ちゃんと考えがある。俺達は飛べるんだ。律儀に階段を上がる必要はない』
『なるほど。では、行きましょう』
俺達は部屋を出ると、階段のところまで戻る。
やはり上からは2つの微弱な魔力を感じるし、上にいるのは間違いない。
『行くぞ』
『はい』
俺達は階段を使わずにフライを使い、天井まで浮く。
そして、ちらっと覗くと、2人の兵士の姿が見えたのだが、1人は向こうを見ており、もう1人は階段の方を見ていた。
足元にいる俺達は視界に入っていない。
『奥は俺がやる』
『では、手前はわたしがやりましょう』
『よし、スリープ』
『スリープ』
俺達が同時に魔法を使うと、2人の兵士はその場で崩れ落ちる。
その際にどしゃっという音がちょっとしたのだが、それで誰かが来る気配はなかったので5階に上がった。
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