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魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~  作者: 出雲大吉
第1章

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第033話 帰ります


 大きな魔力がどんどんと近づいてくると、遠方に巨体が見えてきた。


「豚か?」

「オークですね」


 確かに俺達の世界にもいる二足歩行の豚のバケモノであるオークだ。


「ようやく知っている魔物だな」

「ええ。ですが、あちらの世界のオークってこんなにも魔力が高いんでしょうか? そんなに強くないイメージがあります」


 オークは山や森に出てくる魔物だ。

 農村や猟師を襲う魔物であり、確かに脅威ではある。

 だが、ハンターなら余裕で倒せるし、村に魔法使いでもいれば楽に倒せる魔物だ。

 俺も倒したことがあるが、ここまでの魔力じゃなかった。


「少しは良い魔石が期待できそうだな」

「そうですね。いかがします?」

「大魔導士の前には猫も虎も変わらん」


 そう言って、手を掲げると、オークが走ってきた。


「まっすぐ突っ込んできますね」


 バカだ。

 まさしく、猪突猛進。


「知能がないんだよ。スラッシュ」


 魔法を使うと、光の縦線がオークをすり抜けていった。

 すると、走っているオークが縦に分かれ、左右に転がっていく。


「さすご主ー」


 ふっ。


「この魔法は王国最高の鎧を着た敵将すらも討った素晴らしい魔法なんだ……聞けよ」


 リーエは無視して、魔石の採取を始めていた。


「そういう自慢は食いついて聞いてくれる美人さんにしてください」


 俺の話を聞いてくれるのはイレーネだけか。


「そうかい」


 リーエは解体を終えると、魔石を持って、戻ってくる。


「色は黒ですけど、大きさは結構なものです」


 テニスボールくらいの大きさだ。


「これはちょっと期待できるかもしれんな」

「ええ」


 リーエが頷き、魔石をしまう。


「よし。キリが良いし、屋敷の確認に行くか」

「そうしましょう」


 俺達は西の方に歩いていく。

 そして、ある程度進むと、立ち止まった。


「この辺か?」

「そうだと思います」

「よし、飛ぶぞ」

「はい」


 俺達はフライの魔法を使い、上昇する。

 木々の枝を躱しながら上がっていくと、木のてっぺんくらいから顔だけが出るくらいで止めた。


「屋敷だな」

「ええ。ちょうど横ですね」


 前方には崖が切り立っており、その上には屋敷の側面が見えた。


「崖はかなり急だな」

「海側と同じく、ほぼ直角ですね。まず人が登れる高さではないです」


 普通ならな。


「行くならこっちか」


 正面は警備が厳重だし、東側は海がある。


「この世界には魔法がありません。こちら側を見張る意味はないですし、警備も薄いかと思われます」

「逆は……平野だな」


 森は左右に広がっていたが、そこまで深い森ではないようで先には平野が広がっている。

 しかも、その先には山が見えている。


「私達は西にあるアルベンの町から来ました。しかし、町に入ったのは南の門です。おそらく、あの山を迂回したのだと思われます」


 そうだろうな。


「つまり西に逃げても山か」

「遠目に見ても標高が1000メートルを超えています。さすがにフライでも厳しいかと」


 それもそうだし、山まで距離がある。

 騎兵を出されたら追いつかれるな。


「やはり逃げるなら東か」

「西から侵入し、お姫様を救う。その後、東の海側から逃げ、船で逃亡するということでよろしいですか?」

「ああ。それでいこう」


 俺達は降下していき、地面に降り立つ。


「作戦は決まった。あとはいつにするかだな」

「やはり夜でしょう。フライを使っても目立ちません」


 そうなるな。

 船を奪うのも夜が良い。

 人が少なくなるし、何よりも昼は軍が演習をやっている。


「いつにする?」

「今日か明日ですね」


 それ以降はイレーネの父親が来てしまう可能性があるからな。


「今日で良いだろ。準備も缶詰なんかの食料を用意しておくくらいだし、時間はかからん。だったらイレーネの魔力障害のこともあるし、時間をかける必要もない」

「よろしいかと思います、さっさとイレーネさんを取り戻しましょう。彼女はもうセシリアさんじゃないのです。我々の仲間であるイレーネ・ランゲンバッハさんです」


 そうだな。


「よし、一度、町に戻るぞ」

「了解です」


 俺達は町に戻ることにし、引き返していく。

 道中で数匹のコボルトと小鬼が出たが、さくっと倒し、町まで戻った。


「ふう……戻ってきたな」

「ええ。今、何時ですかね?」


 うーん……


「太陽の位置的には昼過ぎだと思うが……時計を持っているのもイレーネなんだよな」


 おしゃれな懐中時計を持っていた。


「仕方がありませんね。ギルドに行きますか?」

「ああ。換金しよう。今を逃したらいつできるかわからないからな」


 この国にいる以上、もうギルドには行けない。

 イレーネから離れる気がないからだ。


 俺達は東門から町中を歩いていき、ギルドまでやってくる。

 中に入ると、冒険者らしき人間がまったくおらず、受付の職員達も暇そうにしていた。


「早いんですかね?」

「多分な。朝夕が多いんだろ」


 俺達は右の方にいる登録をしてもらったおっさんのもとに向かう。


「おや? 帰られましたか。どうでした?」


 おっさんは俺達に気付くと、声をかけてきた。


「魔物を倒してきた。案外、やれるもんだな」

「それは素晴らしいです。それと最初に登録して帰ってこないという方もいらっしゃいますので良かったです」

「やはり厳しいのか?」

「亡くなってしまう方もいますし、ケガをされる方もいます。ですが、大半は逃げ帰って心が折れ、諦めてしまう方ですね。まあ、そっちの方が良いと思います」


 無理なものは無理だからな。

 冒険者は儲かるだろうし、憧れもあるだろう。

 それで現実を知ったってところか。

 その気持ちはよくわかる。

 まさしく、前世の俺はそういうことの積み重ねの人生だったから。


お読み頂き、ありがとうございます。

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