第027話 こういうこともありますよ
俺達は港までやってくると、大型の船の近くにある建物の中に入る。
中には10人以上の人がおり、受付の上にある時刻表を見ていた。
見ているのだが……
「時間が書いてないな」
便がずらっと書いてあるのだが、すべて時間が書いてなかった。
「ええ。見事に欠航しているわ」
マジか……
「追手でしょうか?」
「そこまでやる? というか、できないと思う。さっきの屋敷を見た通り、ここにいるのは別の貴族よ?」
無理なような気がするな。
もし、俺がここの領主だったとして、庶子の娘が逃げたから港を封鎖してくれって頼まれても絶対に頷かない。
「違う理由か……聞いてみよう」
「そうね」
俺達は受付にいる若い女性のもとに向かった。
「おはよう」
やっぱりイレーネが声をかける。
「おはようございます。船に乗りたい方ですか?」
受付の女性はすでに苦笑いだ。
「ええ。リーンド大陸のメラニカ王国に行きたいのよ」
大陸も国名も初耳。
「すみません。掲示板をご覧のように今は全便が欠航しております」
やはり出ていないようだ。
「えーっと、何かあったの? 天気も良いし、出せるでしょ」
「実は2日前から明後日まで軍事演習をやっているんです。その関係で明後日までは海に船を出してはいけないことになっているんです。これは国王陛下からのお達しです。すみませんが、明後日まで待ってください。明後日からは通常通りの運航になります」
なんと間の悪い……
「そう……じゃあ、仕方がないわね。何時から?」
「メラニカ行きでしたね。メラニカのクレイナの町行きは午前10時になります。料金は1人25万ソルですね」
ん?
「……20万ソルじゃなかったかしら?」
「昨年、運賃の改定がありまして、25万ソルになりました」
えー……
「そう……明後日ね。また来るわ」
「ご迷惑をおかけします」
受付の女性が申し訳なさそうに頭を下げたので受付から離れた。
「ちょっとマズいわね……」
ちょっとね。
「とりあえず、出よう」
「そうね」
俺達は外に出ると、近くにあったベンチに並んで腰掛け、海を見る。
「出港は明後日で料金は1人25万ソルか」
「私をミスディレクションで誤魔化すとして、御二人で50万ソルです。現所持金は ヴェルナー様の2万5千ソル、イレーネさんの40万ソルです。ヴェルナー様のお金は宿代や飲食代に消えるとして、10万ソルくらいの不足ですね」
要約をありがとう。
「まさか値上げをしているとはね……まあ、確かに以前、ここに来たのは3年前だけど……」
結構、前だな。
「それに軍の演習か」
「よりにもよって、今とはね……」
運がない。
「前向きに考えませんか? 料金が足りないのなら今日出航できたとしても無理ですし、料金が足りていたとしても明後日までは無理です。結論としては明後日までに10万ソルを稼げば良いのです」
どちらにせよ、出航は明後日か。
「確かにそうだな」
「問題はどうやって稼ぐかです。あ、イレーネさんの剣を売るのは却下です」
うん。
「そう? 10万ソルくらいにはなると思うけど」
「それ、いくらで買ったんだ?」
「150万くらい?」
高い……想像以上に高い……
「イレーネさん、儲けていたんですね」
「まあ、Bランクだしね。それに武器はケチったらダメ」
「だったらなおさら売るのはダメですよ」
まったくもってその通り。
「まあ、それはわかるけど……どうする? 仕事といったらやっぱり冒険者になると思うけど」
「俺達が冒険者になり、今日明日で10万ソルを稼ぐことは可能か?」
「うーん……2人は強いし、できるかできないかで言えばできる。ただ、運次第かな? 要は儲かる魔物を見つけられるかどうか」
コボルトを倒しても1000ソルか2000ソルだもんな。
時間を考えると、もっと大物を狙わないといけない。
「やるしかない」
「そうですね。となると、まずは冒険者にならないといけません。イレーネさん、冒険者はギルドに行けばなれるんですよね?」
「ええ。ギルドの受付で登録ができる。それでこういうカードをもらえるのよ」
イレーネがカードを取り出し、俺達に見せてくれる。
カードは銀色に加工されており、セシリアの名前と共にBランクと書いてあった。
「銀色ですね」
「白銀だな」
イレーネの髪色であり、二つ名と同じだ。
「あ、わかる? Bランクになったらそう呼ばれるようになったのよ」
「ランクで色が変わるのか?」
「Dまでは全部一緒で白。Cが青色になって、Bが銀、Aが金ね」
Aランクになったら二つ名がまた変わったりして。
まあ、もう二つ名で呼ばれることもないが。
「なるほどな。じゃあ、ギルドに行くか。問題はイレーネをどうするか」
「そうですね。ミスディレクションを使っていますが……」
「私はやめた方が良いと思う。ギルドにいる冒険者やギルド職員にも知り合いがいる可能性がある。私も海が好きでたまに来てたからね」
やはりイレーネの再登録は国を出てからの方が良いな。
「じゃあ、俺が登録しよう。それで金を受け取れるんだろ?」
リーエは年齢的に冒険者になれないとオラースが言っていた。
「ええ。仕事自体は皆でやればいいわ。換金だけヴェルナーがやってくれればいい」
「それでいくか。ギルドの場所は?」
「案内するわ」
イレーネが立ち上がったので俺達も立ち上がり、港をあとにした。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




