第023話 すごいです……
トランプをして時間を潰していくと、日が落ち始め、馬車が止まった。
「今日はここまでだー!」
前方から声が聞こえてくると、後方の馬車から人々が降りていき、街道から外れた平地で焚火を作ったり、テントの設営を始めた。
すると、商人が顔を覗かせる。
「お客さんはどうする?」
「私達はここで寝るわ」
テントがないもんな。
「そうか。じゃあ、ついでに荷を見てくれよ」
「ええ。そのつもり」
「頼むわ」
商人は馬車から離れ、皆がいる平地の方に向かった。
「ここで寝るんですか?」
リーエがイレーネに聞く。
「ええ。布団も寝袋もないけどね。そういうのを買うお金もないし、だったら屋根のある馬車の中が良いでしょ。それに見て」
イレーネが馬車の外を覗いたので俺とリーエも顔を出す。
すると、平地の方では商人を始めとする多くの人がおり、それぞれ何かを話しているのが見えた。
「交流してますね」
「こういう場ってああやって情報交換をしたり、交流を深めたりするのよ。商人は商売の話、冒険者も稼ぎの話ね。たまに勧誘とかもある」
へー……
「俺、ああいうのが苦手だな」
「私もよ。良い思い出はないわ」
そんな感じはするな。
「美人だもんな」
「ヴェルナー、あなたはわかってるわね」
「似たもの夫婦……」
お前も自分で自分のことを可愛い可愛いって言うだろ。
「トラブルとは言わんが、国を出る俺達には関係ないな」
「ええ。そういうこと。私達は私達で過ごしましょう」
俺達は缶詰とパンを食べ始める。
「缶詰も美味いは美味いな。高いけど」
「このクォリティーのものを外で食べられるんだから仕方がないわよ。あー、温かくて美味しい」
缶詰も魔法で温かくしているし、パンも隠れて炙っている。
「美味しいですけど、明日は港町ですよね? 魚が食べたいです」
「良いわね。まあ、お金と相談だけど」
それになるな。
「明日も安宿か?」
「ええ。大陸を出た後のことも考えないといけないしね」
金がないなー。
数日前まではそんなことを気にしなくてもいい生活だったのに。
まあ、それはイレーネもだが。
「夕食が終わった後は?」
「暗いし、寝るだけね。明日は日が出たら出発だから。あ、クリアダストは使ってね」
「お任せを」
俺達は夕食を食べ終えると、少し話をしていたが、すぐに暗くなる。
「この前と一緒で真っ暗だな」
平地の方では焚火を焚いているグループがいくつか見えるが、暗いは暗い。
「外だからね。さすがに魔法も使えないし、トランプもできないわ。寝ましょう」
イレーネがそう言うのでクリアダストを使い、汚れを取ると、横になった。
「狭いですね……」
真ん中に挟まっているリーエが不満を漏らす。
「仕方がないわよ。今日だけの我慢。明日はベッドだから」
「背中が硬いです。枕がないです」
「俺もそうだよ」
「皆、そうよ。魔法でどうにかして」
そんな魔法はない。
「ハァ……寝ますか」
「ああ」
「おやすみ」
俺達は不満たらたらだったが、目を閉じ、就寝した。
ガタンという衝撃で目を覚ますと、目の前に横になっている美人さんがいた。
美人さんは眠そうな顔をしているが、少し驚いた様子で目を開けている。
「おはよう」
「おはよう……朝みたいね」
「だな」
俺達は身体を起こす。
「馬車の衝撃か」
「びっくりして目が覚めちゃったわ」
いや、ホントに。
「おはようございます。一緒に目が覚めるなんて仲良しさんですね」
リーエはすでに起きており、外を覗いていた。
「もう出たのか?」
「ええ。先程です。どうぞ、お水です」
リーエが水が入ったコップを俺達に渡してくれたので飲む。
「結構、眠れたな」
「意外にもね」
「御二人はすぐに寝息を立てておいででしたよ。羨ましい限りです」
リーエは寝るのにちょっと時間がかかったらしい。
「よく考えたらどこでも寝られるわ、俺。軍属の時は外で寝てたし」
「私も野宿の経験が多いわね」
冒険者をやっていたわけだしな。
「私は温室育ちですね……」
「それはしゃーない。飯にしようぜ」
「食べますか」
俺達はパンと缶詰の朝食を食べだす。
「今日もトランプか?」
「そうですね。最初にイレーネさんとスピードをやります」
「良いじゃないの。楽しいし、良い時間潰しよ。というか、ワインを飲みながら夜通しやりたいわ」
楽しそうではあるな。
「落ち着いたらそういうのも良いですね」
朝食を食べ終えると、言っていたようにトランプをして時間を潰していく。
昼もパンと缶詰を食べ、午後からもトランプで遊んでいくと、潮の香りがしだした。
「海か」
「ええ。もう近いわ」
「なんか匂いますね。海の匂いですか?」
魔導帝国は内陸にあるため、リーエは海を知識でしか知らない。
「ああ。潮の香りだな」
「へー……独特ですね」
俺は慣れているが、確かに独特と言えば独特だな。
「そういうもんだ。本当に一面が水なんだぞ。あと塩辛い」
「ちょっと見てみたいですね」
「港町だからいくらでも見られるわよ」
その後に船に乗り、飽きるパターンだな。
「イレーネ、泊まるところの目途とかはついているのか?」
「一応ね。アルベンの町と同じくらいの質になるわ」
「そろそろ風呂が欲しいが、ベッドがあるだけ十分って思うわ」
「貧乏だから仕方がないわよ。ウチには高く売れそうな調度品もなかったしね」
確かに質素だったな。
「早く稼ぎたいもんだ」
「ホントね。さて、そろそろ着くんじゃないかしら?」
イレーネがそう言って、荷台の後ろから身体を乗り出す。
「どうだー?」
「リーエ、おいで」
イレーネが手招きをすると、リーエが向かったので俺もついていく。
「何ですか?」
「ほら、海よ」
リーエと共に外を覗くと、左の方に一面に広がり、きらきらと光っている海が見えた。
「おー……本当に巨大な湖です」
「海だなー」
「いつ見ても良いわね」
俺達は海を見ながら到着を待っていると、馬車が停まった。
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