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魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~  作者: 出雲大吉
第1章

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第023話 すごいです……


 トランプをして時間を潰していくと、日が落ち始め、馬車が止まった。


「今日はここまでだー!」


 前方から声が聞こえてくると、後方の馬車から人々が降りていき、街道から外れた平地で焚火を作ったり、テントの設営を始めた。

 すると、商人が顔を覗かせる。


「お客さんはどうする?」

「私達はここで寝るわ」


 テントがないもんな。


「そうか。じゃあ、ついでに荷を見てくれよ」

「ええ。そのつもり」

「頼むわ」


 商人は馬車から離れ、皆がいる平地の方に向かった。


「ここで寝るんですか?」


 リーエがイレーネに聞く。


「ええ。布団も寝袋もないけどね。そういうのを買うお金もないし、だったら屋根のある馬車の中が良いでしょ。それに見て」


 イレーネが馬車の外を覗いたので俺とリーエも顔を出す。

 すると、平地の方では商人を始めとする多くの人がおり、それぞれ何かを話しているのが見えた。


「交流してますね」

「こういう場ってああやって情報交換をしたり、交流を深めたりするのよ。商人は商売の話、冒険者も稼ぎの話ね。たまに勧誘とかもある」


 へー……


「俺、ああいうのが苦手だな」

「私もよ。良い思い出はないわ」


 そんな感じはするな。


「美人だもんな」

「ヴェルナー、あなたはわかってるわね」

「似たもの夫婦……」


 お前も自分で自分のことを可愛い可愛いって言うだろ。


「トラブルとは言わんが、国を出る俺達には関係ないな」

「ええ。そういうこと。私達は私達で過ごしましょう」


 俺達は缶詰とパンを食べ始める。


「缶詰も美味いは美味いな。高いけど」

「このクォリティーのものを外で食べられるんだから仕方がないわよ。あー、温かくて美味しい」


 缶詰も魔法で温かくしているし、パンも隠れて炙っている。


「美味しいですけど、明日は港町ですよね? 魚が食べたいです」

「良いわね。まあ、お金と相談だけど」


 それになるな。


「明日も安宿か?」

「ええ。大陸を出た後のことも考えないといけないしね」


 金がないなー。

 数日前まではそんなことを気にしなくてもいい生活だったのに。

 まあ、それはイレーネもだが。


「夕食が終わった後は?」

「暗いし、寝るだけね。明日は日が出たら出発だから。あ、クリアダストは使ってね」

「お任せを」


 俺達は夕食を食べ終えると、少し話をしていたが、すぐに暗くなる。


「この前と一緒で真っ暗だな」


 平地の方では焚火を焚いているグループがいくつか見えるが、暗いは暗い。


「外だからね。さすがに魔法も使えないし、トランプもできないわ。寝ましょう」


 イレーネがそう言うのでクリアダストを使い、汚れを取ると、横になった。


「狭いですね……」


 真ん中に挟まっているリーエが不満を漏らす。


「仕方がないわよ。今日だけの我慢。明日はベッドだから」

「背中が硬いです。枕がないです」

「俺もそうだよ」

「皆、そうよ。魔法でどうにかして」


 そんな魔法はない。


「ハァ……寝ますか」

「ああ」

「おやすみ」


 俺達は不満たらたらだったが、目を閉じ、就寝した。


 ガタンという衝撃で目を覚ますと、目の前に横になっている美人さんがいた。

 美人さんは眠そうな顔をしているが、少し驚いた様子で目を開けている。


「おはよう」

「おはよう……朝みたいね」

「だな」


 俺達は身体を起こす。


「馬車の衝撃か」

「びっくりして目が覚めちゃったわ」


 いや、ホントに。


「おはようございます。一緒に目が覚めるなんて仲良しさんですね」


 リーエはすでに起きており、外を覗いていた。


「もう出たのか?」

「ええ。先程です。どうぞ、お水です」


 リーエが水が入ったコップを俺達に渡してくれたので飲む。


「結構、眠れたな」

「意外にもね」

「御二人はすぐに寝息を立てておいででしたよ。羨ましい限りです」


 リーエは寝るのにちょっと時間がかかったらしい。


「よく考えたらどこでも寝られるわ、俺。軍属の時は外で寝てたし」

「私も野宿の経験が多いわね」


 冒険者をやっていたわけだしな。


「私は温室育ちですね……」

「それはしゃーない。飯にしようぜ」

「食べますか」


 俺達はパンと缶詰の朝食を食べだす。


「今日もトランプか?」

「そうですね。最初にイレーネさんとスピードをやります」

「良いじゃないの。楽しいし、良い時間潰しよ。というか、ワインを飲みながら夜通しやりたいわ」


 楽しそうではあるな。


「落ち着いたらそういうのも良いですね」


 朝食を食べ終えると、言っていたようにトランプをして時間を潰していく。

 昼もパンと缶詰を食べ、午後からもトランプで遊んでいくと、潮の香りがしだした。


「海か」

「ええ。もう近いわ」

「なんか匂いますね。海の匂いですか?」


 魔導帝国は内陸にあるため、リーエは海を知識でしか知らない。


「ああ。潮の香りだな」

「へー……独特ですね」


 俺は慣れているが、確かに独特と言えば独特だな。


「そういうもんだ。本当に一面が水なんだぞ。あと塩辛い」

「ちょっと見てみたいですね」

「港町だからいくらでも見られるわよ」


 その後に船に乗り、飽きるパターンだな。


「イレーネ、泊まるところの目途とかはついているのか?」

「一応ね。アルベンの町と同じくらいの質になるわ」

「そろそろ風呂が欲しいが、ベッドがあるだけ十分って思うわ」

「貧乏だから仕方がないわよ。ウチには高く売れそうな調度品もなかったしね」


 確かに質素だったな。


「早く稼ぎたいもんだ」

「ホントね。さて、そろそろ着くんじゃないかしら?」


 イレーネがそう言って、荷台の後ろから身体を乗り出す。


「どうだー?」

「リーエ、おいで」


 イレーネが手招きをすると、リーエが向かったので俺もついていく。


「何ですか?」

「ほら、海よ」


 リーエと共に外を覗くと、左の方に一面に広がり、きらきらと光っている海が見えた。


「おー……本当に巨大な湖です」

「海だなー」

「いつ見ても良いわね」


 俺達は海を見ながら到着を待っていると、馬車が停まった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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