第017話 可愛いから仕方がないですよね
夕食を終えると、一息つく。
「美味しかったわね」
「ああ。空腹こそが最大の調味料だな」
「まったくよ」
「片付けます」
リーエが空いた皿なんかをワゴンに乗せていく。
「あ、手伝うわよ」
「ダメです。人の仕事を取らないでください」
リーエは断固拒否だ。
「そう?」
「私の仕事はヴェルナー様の補佐と家事なんです。存在意義を奪うのは敵です」
お手伝いさんホムンクルスのプライドかな?
「そ、そっかー……」
リーエは食器をワゴンに乗せると、外に持っていった。
「ふう……今日のお仕事は終了です」
リーエが汗をぬぐう。
汗なんてかいてないけど。
「お疲れ様……」
イレーネがちょっと呆れている。
「イレーネ、先にシャワーを浴びてこいよ」
ニヤつくな、ホムンクルス。
「そう? じゃあ、お先にもらうわ」
イレーネが風呂の方に向かう。
「リーエ、次はお前な」
「わかりました」
リーエが頷くと、風呂場の方からイレーネが顔を出し、手招きしてきた。
「ちょっと来て」
「んー?」
「何ですか?」
立ち上がって風呂場に行くと、狭い脱衣所に何かの箱型の機械があった。
「これが乾燥機付き洗濯機。これに服なんかを突っ込んでおくから最後の人はスイッチを押してね。そうしたら朝までには綺麗になって乾いてるから」
すごい魔道具もあるもんだ。
「こういうのって普及しているのか?」
イレーネの屋敷にもあったが、同じようなものがこのレベルの宿屋にあるのは意外だった。
「ええ。洗濯機自体はどこの家庭にもあるわ。こういう宿屋だったら必ずと言っていいくらいに乾燥機付きね」
「へー……」
「それはすごいですね」
便利なもんだわ。
「じゃあ、そういうわけだからよろしくね」
「わかった」
俺達は脱衣所から出ると、扉を閉め、テーブルにつく。
「これだけ魔道具が発展していて、魔法使いがいないってすごくないか?」
「ポーションまであるって話でしたよね? 錬金術かどうかまではわかりませんが、ちょっと変な気がします。なんというか、歪です」
俺もそう思う。
そういった魔道具よりも魔法の方が楽なような気がするんだが。
「図書館とかで歴史なんかを調べたいな」
「落ち着いたらそうしましょうか」
「ああ」
俺達が休んでいると、寝巻きに着替えたイレーネが出てきた。
「あー、シャワーだけでもやっぱり違うわ。お次、どうぞ」
「では、行ってきます」
リーエが立ち上がる。
「ああ。ゆっくりでいいぞ」
「1時間くらいですか?」
何の時間だ?
「しょうもないことを言ってないで早く入れ。俺も入りたいんだよ」
「はーい」
リーエが風呂場に向かうと、イレーネが席につく。
「楽しいホムンクルスちゃんね」
「おしゃべりなんだ」
「ふーん……魔法で作ったんだっけ?」
「そうだな。帝国では資格があればホムンクルスを作ることができる。俺は魔法の研究をしていたのだが、弟子も部下も仲間も家族もいなかったから補佐してくれる人間が欲しかったんだ。生活も荒れていたしな」
部屋とか書類だらけでめちゃくちゃ汚かった。
「結婚とかしなかったの? 話を聞いていると、かなりのエリートだし、収入もあったでしょ」
それは当然そうだな。
「かなりのエリートだったし、お前が住んでいた屋敷と同じくらいの屋敷を帝都の一等地に持つ高収入だった。でも、そういう縁はなかったな」
皆無と言って良い。
だーれもそういう縁談話を持ってこなかった。
「モテそうだし、女子は放っておかないんじゃない?」
「第一に嫌われていたというのがある。自慢話しかしないし、楽しい話なんかしない」
「そうかしら? 魔法の話は興味深かったし、あなたの活躍劇なんか物語みたいで楽しかったわよ」
良い奴。
「もう1つは家庭を顧みそうにないからだな。俺は子供の頃から魔法を極めるという夢があり、そのために暇さえあれば研究をしていた」
もちろん、仕事もしていた。
「夢、か……もう魔法を極めているんじゃないの? 並ぶ者がいないんでしょ?」
「俺はそんな次元を目指していない。本当に神にでもなる気でいる」
「それを言い切るのはすごいわね……」
「たいした話じゃない。死ぬまで魔法を学びたいだけでその学びに際限がないってだけだ。そして、そんな人間に付き合おうとする人間はいないんだろう」
あと俺がそんなに友達付き合いが得意じゃないっていうのもある……
昔からずっと陰キャだし……
「それでリーエね。なんで子供なの?」
「研究に集中したいからだな」
大人だとね?
「わかんないけど、男性のホムンクルスを作れば良いんじゃないの?」
「…………え?」
男性のホムンクルス?
「あー、はいはい。変なことを聞いてごめんね。まあ、可愛くて良いんじゃない?」
『可愛いでーす。有能でーす』
風呂場からリーエの声が聞こえてくる。
「はいはい。もう上がったー?」
『はい。服を着ますのでちょっと待ってください』
リーエも上がったようだ。
「俺も入るか」
「ええ。上がったら明日からのことを話しましょう」
「わかった」
頷くと、扉が開き、ホクホク顔のリーエが出てきた。
「良いお湯でした。ヴェルナー様もどうぞ。あ、スイッチを忘れないでくださいね」
「わかってるよ」
リーエと入れ替わるように風呂場に向かう。
「ヴェルナー」
イレーネが呼んできたので足を止めた。
「何だ?」
「またあなたの話が聞きたいわ」
「今度な」
脱衣所に入ると、服を脱ぎ、洗濯機に入れる。
そして、シャワーを浴びた。
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