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未開異世界ソロキャンプ ~旅とキャンプとのんびりスローライフ~  作者: 三毛猫みゃー


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第6話 異世界渡りの検証

 少し今の状況を整理してみましょうか。まず私が仕事を首に……辞めてから一ヶ月半ほど経っている。辞めてから一ヶ月の間にまずしたことは失業保険の申請だ。部長のお陰で申請は直ぐにできた。ただ失業保険がもらえるようになるまでに一ヶ月近く必要だということは申請してから知った。


 次に引っ越しの準備、いわゆる身辺整理というやつだ。まずは部長以外の会社関係者のアドレスの着拒設定をした。そもそも一ヶ月も入院していたので引き継ぎなども勝手にやっているだろうから問題ないとは思うけど、関わりたくないので着拒一択でいいだろう。


 続いて必要なものといらないものの仕分け、断捨離を決行した。これに関してはあまり捨てるものはなかった。捨てられなかったというわけではなく、捨てるほどものがなかったといえる。


 引っ越しの際に捨てたものは、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電が殆どだった。最終的に大型のテレビとその他は段ボール箱五個で収まった。引越し先は御存知の通り祖父母から生前に安く譲り受けた家屋敷。


 築百年ほどの物件だったのだけど、譲り受ける前に祖父母がトイレ、バス、キッチンのリフォームと、畳や障子の交換もしてくれたのでそれを考えると安い買い物だったと思う。


 祖父母が亡くなって相続関係であれこれ言われないようにと気を使ってもらったことになる。元々は老後にでも一人ひっそりと暮らすつもりで譲ってもらったものだけど、会社を辞めたのをきっかけに移り住むことにした。


 両親や親族についてのあれこれは、滅多なことがない限り会うことはないので詳しい事情はいいでしょう。祖父母のお墓は私が管理しているとだけ言っておく。


 失業保険がもらえるようになったのを確認して、アパートの契約が切れるタイミングで引っ越してきた。役所巡りや隣近所に挨拶をして、やっと落ち着いたところで異世界へ行ってみようとなったわけだ。


 さて異世界渡りの能力があるのを知ったのは実のところ入院中だった。きっかけはトイレから出ようとした所で扉を開けたらあの草原へでていた。最初は夢かと思ったけど、トイレに戻り気を落ち着かせて再び扉を開くと病院のトイレに戻っていた。


 その後は何度か検証した。その結果はこことは違う場所へ行きたいと願えばあの草原へたどり着けるというものだった。それ以降は好奇心を刺激されながらも先に病気を治すほうが先だと考え、たまに検証する程度で本格的に行くことはなかった。


 会社をやめバタバタと身辺整理と引っ越しの間はたまに様子を見るだけにしていた。そして引っ越しも終わり落ち着いたところでキャンプ用品を買い集めて、異世界へと繰り出したのが今回のことに繋がる。


 色々と検証をした結果、異世界渡りの条件は外が見えない扉を開く時に異世界へ渡りたいと思うことと、戻る場合は元の場所をイメージするだけで使えることがわかった。そして今日は新しい検証をしようと思う。


 それは、異界渡りで行く先が地球と異世界で同じ座標になるのかということだ。



「それじゃあシルフィーナ、私は一度戻るからその時テントがどうなったのか見ていてね」

「わかったわ」


 今回の検証は私が地球へ戻った時に、移動に使ったテントはどうなるかということだ。ちなみにトイレから転移したときは、トイレの個室が異世界に現れていた。その事からテントを使うことを思いついた。テントを使う理由は他にもあるが、それは次の検証なので後で説明することになるかな。


 私は一度テントへ入り入口を閉じて地球へと戻る。ファスナーを開けて外を確認するとそこが家の庭であることを確認する。再びテントへ戻り入り口を閉めて異世界へ行きたいとイメージしながら入口を開く。


「ただいま。それでどうだった?」

「消えたわ」

「そっかー。それじゃあ今度はシルフィーナにはあっちの世界へ行ってもらって、テントを見ていてもらえるかな」


 シルフィーナといっしょに地球へ戻り、シルフィーナを地球に残して異世界へ向かう。さて、ここからが次の検証になる。検証内容は三つ。こちらのテントは私が地球へ行った時点で消えたということだ。つまり私がこの世界へ来たことで地球にあるテントは消えたのかどうかが一つ。もう一つは……。


「よいしょっと。中に何もいれていなからか軽いね」


 テントの四隅を固定していたペグを引き抜きテントを持ち上げる。そしてテントを持ち上げたまま離れた場所へ移動する。その後は再びペグでテントを固定して地球へ異世界渡りをする。


 これで一つ目の検証は終わった。テントを移動させても戻れるかというものだ。最悪の場合、入口である扉を移動させた場合どうなるのかわからない。シルフィーナにはもしかするとこの世界に戻れなくなるかもしれないといって協力してもらった。


 こうして地球に戻ってこれたということで、転移に使った扉は移動させてもいいという事がわかった。今は検証できないが、そのうち転移に使った扉以外でも異界渡りを使い地球のテントへ戻れるかもそのうち検証をしたい。


「どうだった?」

「消えなかったわね」


 これで二つ目の検証も終わった。それは異界渡りで異世界に行った後、その扉は地球ではどうなるかというものだ。結果は同じ場所にそのまま残っているというものだった。この事により、どこからでも家の庭のテントに戻ってこれる事になり、異世界とこのテントの座標は関連がないということになる。


「それじゃあ今できそうな検証はあと一つね。出る場所を選べるかになるわ」


 この検証は、いつもはただ異世界に行きたいやここではない場所に行きたいという漠然としたイメージで異界渡りをしている。そういうわけで、今回は行きたい場所を明確にイメージしながら異界渡りを使うとどうなるかというものになる。


 シルフィーナと共にテントの中へ入る。私はいつもの場所から見えている森のそばをイメージしながらテントのファスナーを開いて外に出た。


「どうやら成功のようね」

「本当だー、場所が違うね」


 異界渡りで現れた場所は草原の中ではなく森のそばだった。続いて再びテントの中へ入り、地球へ戻りたいというイメージと異界渡りで戻る先をいつもと違う場所をイメージしてみた。


 結果は地球に戻る場合は別の場所へ移動はできなかったというものだった。続けて今度は行ったことのない場所や見たことのない場所を想像しながらテントをくぐってみた。その結果は、どうやら地球から転移できるのは私の知っている場所や見えている範囲にしか転移できないということだと思われた。


 つまりどうあがいても今いる大陸の裏側に転移できないということだった。これは写真や映像で見せられたとしても、そこへたどり着くルートがわからなければ異世界渡りできないというものなのだろう。


 なにはともあれ異世界に移動する時には一度行ったことのある場所を選んで転移できるのは便利だと思った。

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