第52話 実はうちの家系って呪われているのではないだろうか
「昨日はごめん」
朝食の準備をしていたら起きてきた鈴ねえに謝られた。
「酔っ払って帰ってきたこと? それとも潜戸の鍵を閉めていなかったこと?」
「りょ、両方かな」
「まあいいけど、酔って帰ってくるのはいいけど戸締まりだけはちゃんとしてね」
「うん」
「よりしい。それじゃあご飯にするからテレビの部屋に運んで」
昨日のポトフとご飯をお盆に乗せて鈴ねえに手渡す。もう一つ自分の分をお盆に乗せて、お茶を入れて急須と茶碗を持って台所から移動する。
こたつに入り「いただきます」をしてからとりあえずテレビを付ける。ちょうど天気予報が流れている。
「今日は寒そうだ」
「だねー、もしかしたら雪でも降るかもね」
天気予報では雪予報は出ていないけど、あまり当てにはしていないので振ってもおかしくない。
「それでなんで昨日は酔うほど飲んできたの? 鈴ねえってお酒に弱くはないよね?」
「あー、昨日は友人と飲んでいてね」
「そうなんだ」
「そうそう、私がこっちに戻ってきているのを知って連絡をくれてね。駅前の店で飲んでてんだよね」
駅前でということは、その友人は中学か高校時代の友人なのだろう。鈴ねえは小中高は駅前近くの学校に通っていたはずだから、その時の友達なのだろう。
「みんな結婚していて、気がついたら独り身は私だけだったわ」
「あ、はい」
反応に困る。私も独り身だしどう答えればいいのかわからないのだけど。
「あーそうそう、それで動画の話はどうなったの?」
「ん? ああ、あれは今解析待ちね。結果が出るまでは少し待ってほしいって言われたわ」
「そうなんだ」
よくわからないけど、色々と細かいところまで解析をするのに少し時間がかかるのだろうか。動画を撮った本人からすると、そこまで詳しく解析しても大したものは出ないんじゃないかなとは思っている。
最近の映像技術は発達しているらしいので、いくらでも本物に寄せたフェイク動画は作れるんじゃないかな? 仮に本物とわかったからといって場所の特定までは無理じゃないだろうか? とはいえ私もそっちの分野に詳しいわけではないので何とも言えないけど。
「じゃあその解析が出るまでは鈴ねえは家にいるの?」
「それね。一応仕事を持ってきているからそれを終わらせようと思ってる。だからしばらくは部屋にこもっているとおもう。なにか手伝うことがあったら気軽に声をかけてもらっていいからね」
「その時はお願いするよ。そろそろ年末年始の準備もしないとね」
「今年は久しぶりに日本で過ごすことになるのか。だれか戻って来る予定とか聞いてない?」
「ないかな。うちの親からは連絡すらないし」
「私の方もそうだけど、私たちの家系ってどうしてこうなのかしらね」
「ずっと海外にいた鈴ねえもだけどね」
いつから続いているのかはわからないけど、どうも家の家系は家から離れるのを良しとする家系らしい。なのでこの家を引き継いだ祖父や私のような例は逆に例外っぽい。この家が立っている土地はずっと我が一族が所有していたのだけど引き継ぐ人を貧乏くじ扱いしていたみたい。
そんな家系だけどなぜか一族の一人がこの土地を引き継ぐという不思議な家系になっている。特に何かがあるというわけではないらしいのだけど、最低一人は引き継いでいる。それは私の祖父もそうだし、私自身もそうなのだろう。
ここで仮に私が死んだとすると、私たちの一族の誰かが自然とこの家に収まることになるのだろう。まあ私がこの家や土地を処分した場合はどうなるかはわからないけどね。それでもどこかで血がつながっている人間が手に入れるような気がするけど。
何が言いたいのかというと、私の両親や鈴ねえ、そして鈴ねえの両親の他にそれ以外の親族は日本各地や海外に出ている。どうしてかこの土地周辺に留まらない人ばかりいる。
よくよく考えると、私も異世界への移住を考えていたり、自転車旅をしたりとあまりこの家に執着していないなと思わなくもない。これも私の家系が関係しているのかな?
このタイミングで何もかも投げ出して異世界で暮らすようになったら、私たちの血筋の誰かがこの家を引き継ぐのだろう。だからどうしたという話なのだけどね。なにもないとは聞いているけど実は何かあったりするのかもしれない。
実はなんか呪われてたりする? この土地に留まれない呪いとか、誰か一人はこの家を守らないといけないとか……。なんとなく私は一度心停止したからその呪縛が解けた? ないない、うん、そういったことはないよ。
「鈴ねえはここにいても問題ないの? なんか家の人間ってこの土地に長い間とどまらないけど」
「そうね、なんだか早く仕事場に帰りたい気はするけど昔ほどではないかな」
「そうなんだ。まあ無理はしないでね」
「ほんと何なんだろうね」
「私にはわからない感覚かな?」
私には鈴ねえや、他の親族が感じる感覚というのがわからない。今思えばこの家を祖父母から受け継ぐ形で購入しようと思ったのも、気がつけばそう思っていたとしか言えない。
そういう事も含めてやっぱりうちの家系にはなにかがあるのかもしれない。





