第47話 料理の得意な妖精っていないのだろうか?
「オトハ、やっときたのね」
鈴ねえが二日ほど家を空けるということで出かけていった。どこへ行くのか聞いた所、映像に詳しい知り合いのところへ行くと言っていた。もしかすると帰って来る日数も遅くなるかもしれないとも言っていた。
そんなわけで鈴ねえが家を出た事を確認してから異世界渡りを使って異世界へと来ている。今はテントから出たところで私を見つけたシルフィーナたちが飛んできたところだった。
「それでどうなったの?」
「しばらくこっちに来るのは大変かな。それとシルフィーナたちもしばらくはあっちへは行かないほうがいいかも」
「そうなんだ」
「詳しいことはご飯を食べてから話すわ」
「ご飯を作ってきてくれたのね」
シルフィーナがわーいというように嬉しそうに飛び回っている。よっぽどご飯が恋しかったのだろう。昨日は持ってくる余裕がなかったので、二日ぶりになるのかな。
この世界でシルフィーナと出会ってからシルフィーナたちのためにご飯を作らなかった日はなかったかもしれない。それを考えるとたった二日でも恋しいものなのかもしれない。
朝食を食べたあと鈴ねえを見送り、その後に昼ご飯として作った物を持ってきた。今後のことを話し合うためにシルフィーナにノム爺とミケさんを連れてきてもらうようにお願いして、その間にご飯の準備を始める。
しばらくするとグランディーネとウィンティーヌもやってきて、シルフィーナに呼ばれたノム爺が来た。ただミケさんは今ここにいないとのことだった。
「とりあえず、ご飯を食べたあとに今どうなっているかと今後どうしようと思っているか話すわね」
二つのクーラーボックスからプラスチックでできたどんぶりを人数分取り出してそれぞれの前に置く。ミケさんの分は余ったので、もし話に間に合わなければ分ければいいだろう。
どんぶりのフタを開ける。中身は親子丼になる。二センチほどに切った鶏肉と玉ねぎをほんだしを使って煮たあとに、溶き卵を入れるだけの簡単なものになる。ご飯の上にそれらを乗せて、最後に上に三つ葉を乗せただけのシンプルなものだ。
シルフィーナたちのとっては足りないかもしれないけど、出来たものを運ぶのもけっこう大変なので許してほしい。話を始める前に腹ごなしを済ませて、お茶を人数分用意する。
「それじゃあ今どうなっているか話すね。まずは鈴ねえのことから。鈴ねえは私の従姉妹でずっと海外で研究をしていたのだけど何の連絡もなしにやってきたのよ」
「連絡がないのは普通ではないの?」
「普通は電話かメールくらいはくれると思うのだけどね」
「スマホで連絡をするのね。こっちの世界とあっちの世界でもやり取りできたら便利なのにね」
「どうにかして電波が世界を超えられるのなら出来そうだけど」
話しながら思ったのだけど、こちらの世界だと電話やメールはないらしいので事前連絡なんて手紙がいいところなのだろう。そのために事前の連絡というのはこの世界では一般的ではないのだろう。
「それでね。鈴ねえは大体三ヶ月くらい私の家に滞在するようなのよ。だからその間は私がこっちに来るのも不定期になるし、シルフィーナ達をあちらに連れて行くのも控えることになるわ」
「ふむ、それじゃとわしらはどうすればいいのじゃ?」
「ノム爺に関してはこれまで通りにしてもらえると嬉しいかな。とりあえず種と苗は持ってくるようにするわ。それと出来た作物は自分たちの取り分以外はミケさんに売って、そこから報酬を引いてもらうとかでどうかな?」
「別に構わないのじゃ。オトハが持ってくる種や苗からはわしらの知るものよりもうまい物ができるからだ。問題は出来たもの種からは同じものが出来ないというところじゃな」
日本で手に入る種はだいたいがF一品種なので仕方がないことだろう。近い内に果物の苗なんかも持ってこようと思っていたけど、鈴ねえがいる間は延長せざる得ないかな。あとの問題は……。
「グランディーネとウィンティーヌに支払う報酬をどうするかだよね。今までみたいに三食提供が難しいのだけど」
「べつに構わないですわ~」
「私も構わないわ」
「いいの?」
グランディーネには土作りを頼んでいるし、ウィンティーヌには水やりをお願いしている。その報酬代わりとしてご飯を提供していたとも言えなくはない。ただ話を聞いてみると二人にとっては大した手間ではないので問題ないのだとか。
「それなら助かるよ。ご飯に関してはできるときには持ってくるようにするよ」
「無理はしなくてもいいですわ~」
「そうよ、元々の食事に戻るだけだから」
グランディーネもウィンティーヌもできたらいいといった感じだった。お酒はどうしようかと思ったけど、置いておくとノム爺たちと際限なく飲みそうなのでこっちに来られるときだけ持ってくるようにしようと思う。
「私は作れないけど、ノム爺たちが作った作物でシルフィーナたちが作ってもいいんだよ」
そう言ったら妖精三人組は目をそらした。
「ちなみにノム爺たちノームは料理をしたりは?」
「わしらノームも料理は得意ではないの。そもそも妖精とは自然とともに生きるものじゃ。そうじゃのあえていうならシルキーあたりなら料理はできそうじゃな」
「シルキーって確か家とか屋敷に関する妖精だよね。ノム爺の建てたあの家にきたりするの?」
「さすがに無理じゃろうな。新しい家にはいつかぬし、この大陸にはいないじゃろうからの」
「ノム爺みたいに呼ぶことは?」
「どうじゃろうな。仮に呼べたとしても先程言ったようにわしらの建てた家では居着いてもらえぬじゃろうな」
「そっか」
そういうことなので、シルフィーナたちには暫く料理は我慢してもらうしかない。





